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サッカーを楽しませるだけでなく、より良いプレーに導く/ドイツ人コーチが示す「良いコーチ」の定義とは?

公開:2021年4月10日

キーワード:ドイツ指導育成

COACH UNITED ACADEMYでは、ブンデスリーガの名門1.FCケルンで育成部長を務め、ケルン体育大学で指導者養成、ドイツサッカー協会のU9、U10、U11、U15育成プログラムを作成するクラウス・パブスト氏の講義を配信中。ここでは、その一部を紹介していきたい。
(取材・文 鈴木智之)
※COACH UNITED掲載記事より転載

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答えを「教える」のではなく答えに「導く」

クラウス氏は日本の指導者を前に、次のように語りかける。

「サッカーをプレーすることと、ピアノを弾くことは同じでしょうか? 違いますよね。サッカーはチームスポーツですが、ピアノは一人で弾くことができます。2006年のドイツW杯ではイタリアが優勝しましたが、このチームにはピアノを弾く人とピアノを運ぶ人がいました。ピアノを弾く選手はピルロ、ピアノを運ぶ選手はガットゥーゾです。育成年代の選手は、ピアノを弾く選手を育てて欲しい。そう思っています」

ピアノを弾く選手を育てるために、どのような哲学のもと、選手を指導して向上させていくのか。それを考えるに当たり、クラウス氏は「良い指導者とは、どのような人でしょうか?」と質問を投げかける。

「私が考える良い指導者は、選手をより向上させることのできる人です。サッカーを楽しませるだけでなく、修正して、より良いプレーができるように導くことができるのが、良い指導者だと思います。選手を良くするために、正しいトレーニングをして、プレーを修正していきます。選手たちに『どのようなプレーをしなければいけないか』を理解させることが大切で、それは非常に難しいことです」

サッカーは、ピッチ上で判断をし続けなければいけないスポーツだ。プレーの実行だけでなく、いつ、何を、どのように行うかという『判断』に働きかけることが重要で、クラウス氏は、頭と身体を同時にトレーニングするライフキネティックの要素を含んだトレーニングなどを通じて、選手に様々な刺激を与えている。

「サッカーは、判断が重要なスポーツです。選手は常に判断しなければいけません。そこには、良い判断と間違った判断があります。そのため、指導者は選手にいくつもの"判断材料"を与えてほしいと思います。それはテクニックであり戦術であり、フィジカルでありメンタルです。これらを高いレベルで擁することで、選手たちは良い判断、良い決断ができるようになるのです。そのためにトレーニングはテーマを持って行い、テクニックとゲームインテリジェンスの両方を高めることが大切です。選手はボールを持っているとき、そしてボールを持っていないときに、何をしなければいけないかを理解することが重要なのです」

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技術的トレーニングにおいて何にフォーカスするかが重要

さらにクラウス氏は、次のトピックスを用いて、トレーニングに必要な考え方を紹介する。

・技術トレーニングの前にウォーミングアップを行う
・疲労困憊の中で、新しい技術を獲得することは難しい
・選手が技術を習得するためには、観察こそが大切な要素
・反復練習は技術を習得する上で効果的
・技術を習得する上では、スピードよりも正確性から導入することが必要
・簡単なものから難しいもの、シンプルなものから複雑なもの、経験のあるものから未経験のものというように、系統を立ててトレーニングをする
・練習では、両足を使う状況を作るようにする

「練習中、コーチが『速くプレーしろ!』というと、選手たちは失敗してしまいます。選手たちは、最初から速く正確にプレーできるわけではありません。そのため、最初はスピードではなく、正確性を求めるようにします。そして、ある程度できるようになったところで、スピードを上げるように指導をしていきます」

さらにクラウス氏は、育成年代ではテクニック(ドリブル、パス、ボールコントロール)のトレーニングが重要と語り、ポイントを次のように挙げる。

「ドリブルでよく起こる判断のミスは、相手を見ずにドリブルを仕掛けることです。技術面で起こりやすいミスは、ボールを体の下に置いてドリブルをすることです。そうではなく、身体の前やひざの前にボールを置くとドリブルをしやすくなります。トレーニングの中では、身体の真下にボールを置くと、蹴りにくいといったことを、デモンストレーションを交えて教えていきます」

ここで紹介したのは、クラウス氏の講習会のほんの一部に過ぎない。ドイツの育成最前線で活躍するクラウス氏の、ディテールに踏み込んだ解説すべてを知りたい方は、ぜひCOACH UNITED ACADEMYの動画をチェックしてほしい。

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【講師】クラウス・パブスト/

ドイツの名門「1.FCケルン」でユースコーチや育成部長を務め、ポドルスキなど多くのブンデスリーガを輩出。ケルンで最初となるサッカースクール「1.Jugend-Fusball-Schule Koln」を創設し、サッカー指導者養成機関としても知られる国立ドイツ体育大学ケルンで講師を務めるなどドイツサッカー育成の第一人者である。
日本へは何度も訪れており、指導者講習会や選手へのクリニックを開催。日本サッカーの育成にも造詣が深い。
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取材・文 鈴木智之

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