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相手と味方を見て次のプレー選択を見極めるトレーニング/ドリブルとパスを判断よく使い分けるための指導法

公開:2021年9月24日

関西で技巧派のチームと知られる「西宮SS」をJFA全日本U-15フットサル大会と全日本U-15サッカー選手権大会への出場に導いたのが、谷元希監督だ。現在は、自身が代表を務める「西宮タイガース」で中学生の指導を行いながら、中学から大学までの複数チームで選手育成に携わっている。

「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、谷監督による「ドリブルとパスを判断よく使い分ける選手になるための指導」の模様を公開中だ。前編では、ドリブルとパスを判断するために必要な顔を上げるための基礎的なトレーニングを紹介したが、後編ではより実践的なトレーニングを紹介していく。(文・森田将義)

(※COACH UNITED 2021年6月7日掲載記事より転載)

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相手や味方を見て次のプレーをイメージしておけば、優位な状況が作れる

選手が顔を上げてプレーするためには、正しい姿勢でパス&コントロールを行うのが重要だと前編で紹介した。また、声掛けではなくメニュー設定によって自然と顔を上げる習慣がつくのも大事なポイントだ。より実践的なトレーニングに移行しても、自然と選手が顔を上げる習慣が身につく設定でトレーニングを行っているのは変わらない。「4vs4のミニゲーム」にも、選手の習慣を変える設定が隠されている。

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「4vs4」は上下のライン上にマーカーで4つのゲートを作り、中央のゲートはシュート、左右のゲートはドリブル通過すれば1点というのが与えられたルール。攻撃の選手は自分よりも前にパスを出したり、シュートを打つ際は必ずワンタッチで行われなければいけない。そのため、相手や味方をよく見て次のプレーを先にイメージしておく必要がある。プレーに制限がかかった難しい設定であるため、思い通りに前進できず自然とボールを保持する場面が増える。

前編で意識付けしたゴールを狙うと見せかけて、パスを出す動きなど相手の変化を見ながらプレーして攻撃が優位な状況を作りたい。相手に複数の選択肢を感じさせて対応に困らせるためには、ボールを持たない選手が囮としてスペースに走りこむのも効果的だ。

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また、ボールキープで相手を引き寄せ、近くにいる味方にパスを出して受けた2人目がワンタッチで縦パスを展開。最初にボールキープしていた選手が3 人目の選手として走りこむなど攻撃のイメージを共有するのも重要なポイントだ。

縦パスを入れられる際はワンタッチでなければいけないため、どのタイミングでどの位置から状態の良い前向きな選手にボールを入れるかも全員でイメージしながらプレーしたい。攻撃のリズムが一定では、相手の守備に変化を生めないため、ワンタッチでのパスやドリブルによる仕掛けを使い分けて、攻撃のリズムを変えるのも意識したいポイントだ。このように周りを見て判断しなければ攻撃が上手くいかない設定を作るのが、谷監督が行う指導の特徴だ。

サポートの動きで正しい判断がしやすい状況を作る

トレーニングの締めくくりとして行うのが、「7vs7のミニゲーム」。これまでの行ってきたトレーニングで学んだポイントをより実戦に近い状況で意識するのが狙いだ。

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ビルドアップはGKから行うが、どこから攻めるのか落ち着いて相手の状況を見ながら判断しなければいけない。ボールを持っていない選手も同様で相手を見た上で受ける位置を考えるのが理想だ。

また、足元へのパスだけでは相手が対応しやすいため、サイドに張った選手へのサイドチェンジや空いた中央に走り込む選手へのスルーパスなど受け手と出し手がスペースを使う意識を常に持っておきたい。

次の写真の場面が分かりやすい状況だ。

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ドリブルで前進する選手に対して、赤丸で囲んだ選手は後方のフォローに入っているが、この状況だと相手DFは、ドリブルか右サイドへのパスを警戒すれば対応できてしまう。だが、赤丸で囲んだ選手が左に空いたスペースに走り込めば、3対2の状況が生まれ、相手DFはドリブルと左右へのパスの3つの選択肢を警戒しなければいけない。前編で紹介した3対3に近いシチュエーションだ。

ドリブルを仕掛ける選手がそのまま前進すると見せかければ、DFは中央を絞るため、サイドが空いて、パスが通りやすくなる。サイドを警戒すれば、空いた中央をそのまま仕掛けてシュートへと持ち込める。ボールを持つ選手が相手よりも優位な状況となって、正しい判断をできるようにするためにも、周囲のフリーランによるお膳立てが重要ということが分かるだろう。

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DFの変化を生むアクションはビルドアップでも重要となる要素だ。相手の寄せが甘ければ自陣からドリブルで次のエリアへと持ち出して優位な状況を作れる。相手が寄せてくれば、パスを選択するなど、どのエリアであっても、相手に複数の選択肢を感じさせて足を止めた上でドリブルとパスを判断よく使い分ければ、狙い通りに攻撃が前進できる。

一連のトレーニングを通じて、DFに変化を起こさせるアクションと、DFの動きに応じたドリブルとパスの使い分けを意識させたい。

このような判断を求めるトレーニングでは選手のアイデアが出やすい空気を指導者が作ることが重要だと谷監督は口にする。ミスを恐れないチャレンジしやすい空気が大事といえるが、試合からかけ離れた強度では実際の試合では通用しないため、守備の強度を求めることも重要だ。

ただ、判断やアイデアを向上させたいトレーニングの際に強度を上げると、プレーが制限されるケースが増えるため、徐々に強度を高めるなど工夫も必要だ。

選手の良いプレーを褒めつつ、改善点を指摘する谷監督のコーチングやトレーニングの進め方は、COACH UNITED ACADEMYで配信しているので、ぜひ参考にして自チームのトレーニングに活かしてみてほしい。

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【講師】谷元希/
1986年9月5日生まれ、兵庫県出身。市立西宮高校卒業後すぐに出身クラブである西宮サッカースクール(4種)で指導者としてのキャリアをスタート。翌年に西宮サッカースクール(3種)の監督に就任した。2008年には全日本U-15フットサル選手権大会で3位、2019年には高円宮杯 JFA 全日本U-15サッカー選手権大会初出場を果たした。今年から自身が代表を務める西宮タイガースの活動がスタート。同時に、芦屋学園大学、報徳学園高校、仁川学院高校、レオSCでも指導を行っている。

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