テクニック
お団子サッカーの解消に繋がる!「幅と高さの調整」によりフリーでボールを受けるポジショニングの練習法
公開:2021年12月16日 更新:2022年10月17日
「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、蹴和サッカースクール代表の上田原剛コーチによる、指導経験の浅いコーチに向けた「U8から取り組める、ポジショニングとパス交換の基準を学ぶトレーニング」を配信中だ。
サッカーを始めたばかりの子どもを指導する際の課題となる「お団子サッカーの解消」に向けたトレーニング。最終回は「幅と高さを調整してボールを受ける」「空いているサイドからボールを前進させる」の2本を紹介したい。(文・鈴木智之)
(※COACH UNITEDからの転載記事になります)
相手と勝負せずシュートまで行く為のパスの出し方とボールの受け方
この記事、1つ目の動画は「2対1のシュート」。攻撃方向がある中で、いかに幅と高さのあるポジションをとり、守備を突破していくかというトレーニングだ。
設定としては攻撃2人、守備1人の状況でスタート。攻撃はゴールを目指し、守備はボールを奪ったら、両サイドに設置されているゴールを狙うか、コーチにパスを返す。
「最後にボールを触っていない人が、次のプレーの守備役になる」というルールにすることで、攻撃から守備への切り替えもでき、攻撃時にボールに関わることができなくても、次のアクションでプレー機会が確保できるのもポイントだ。
上田原コーチは、子どもたちのプレーを見ながら「相手を引きつけてパスを出したね」「練習でやった、離れてもらう動きができていたよ」「パスコースがなかったから、ドリブルに変えた。いいね!」などと具体的に褒めながら、ポイントを解説していく。
さらには「みんながうまかったのが、守備の選手の背中側でボールを受けていたこと」と強調。「そうすると、簡単に前に行けるよね。誰とも勝負しないでシュートまで行けるのが良いプレー。守備が寄せてきたら、ドリブルに切り替える。それも良い判断だよ」とアドバイスを送っていた。
加えて、「相手を引きつけてパスをするのと、引きつけずにパスをするのかどちらがいい?」と質問。「ドリブルをして、相手をひきつけてパスを出すと、もらった選手がフリーになれる」とデモンストレーションをすることで、わかりやすく伝えていた。
続いて、「攻撃側のシュートを打った選手が、次のターンでGKに入る。シュートを打ってってない、もうひとりの選手がDFになる」というルールにチェンジ。GKを入れた2対1+GKの設定でゴールを目指していった。
相手の状況に応じて幅と高さのポジショニングを調整する
最後の動画は「4ゴールゲーム」。ゴールを四隅に設置し、3対3を実施。攻撃時は相手ゴールのどちらかのゴールを狙い、守備時は自陣の2つのゴールを守る。ゴール前にシュートラインが設置してあり、そのラインを越えなければシュートを打ってはいけないというルールだ。
ここでのポイントは、これまでトレーニングで取り組んできたことを、ゲーム形式で発揮すること。コーチングとしては、片方のゴール前に選手が密集しているときに、「どこが空いている?」「広い方が行きやすいよね」などの声をかけていく。
上田原コーチは途中で選手たちを集め、「片方に人が寄っているということは、車で言う空いている車線があることになる。人がいない車線に行こう。混んでいる道じゃなくて、空いている道の方が前に行きやすいよ」と、ボードを使ってアドバイス。
その後のプレー時には「どっちが空いている?」「空いている道を探そう」と声をかけ、スペースに移動した選手に「よく気がついた、ナイス」などと褒めていた。
広がり(幅)を意識するようになったところで、高さにも言及。「みんな、幅と高さの調整ができたときに、いい形で攻撃ができていたよ。DFが来ていなかったら、高さの調整をすることでフリーになれるし、マークを外す作業がいらなくなる。幅をとって、次に高さとる順番でやってみよう」とわかりやすく伝えていた。
ほかにも、ミスをした選手に対して「狙いはわかるよ」「ミスをしても大丈夫」などのポジティブな声をかける様子も、動画を通じて見ることができる。技術や戦術の指導に加えて、子どもたちに対するスタンスも参考になるだろう。
最後に上田原コーチから、COACH UNITED ACADEMY会員に向けたメッセージを紹介して、このシリーズを締めくくりたい。
「東京オリンピック後に、田中碧選手が『サッカーを知らなすぎる。試合中、僕たちはずっと1対1をし続けていた』とコメントしていました。この言葉に日本の育成のヒントが隠れていると思います」
「日本では何歳から戦術が必要かという議論になりますが、何をしようかなと考えることが、すでに戦術的な行為です。そのように考えると、サッカーを始めた幼稚園児から戦術的な行為を行っています。サッカーは技術、戦術、フィジカル、メンタルを切り離してトレーニングすることはできません。U-8であっても、このようなことを考えてトレーニングすることが大切です」
「17年間指導してみて、技術的なことで困っている選手より、戦術的なことで困っている選手の方が多いと感じています。特にポジショニングやスペースの感覚、プレーするときの原則などです。指導者の大切な役目として、現象で見るのではなく、原因は何かという視点で見ることがとても大切です」
「ここまで戦術的な話を多くしてきましたが、育成とは何ですか?と聞かれたら、まずは『やる気にさせること』だと答えています。選手の心のコップが上を向いていないと、何を言っても入らないからです。今回の動画が少しでも皆様の参考になれば嬉しいです」
【講師】上田原剛/
15歳の時にジーコサッカーキャンプに参加、ジーコにスカウトされアントラーズユースへ入団、その後大学を経て指導者の道へ。CFZ(ブラジル)で指導者をスタート。2005年〜2021年までの15年間は鹿島アントラーズのアカデミーにて指導。茨城県トレセンU12、ナショナルトレセン(関東)U12担当。2021年4月に蹴和サッカースクールを立ち上げ現在は小中学生の指導にあたる。スクールのほか指導者育成活動(練習会や講義)を行い、2021年6月からスタートした「お父さんコーチ向け練習会」には既に150名以上の指導者が参加している。