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創設5年でU-12全国大会王者に。トリアネーロ町田が実践する個とグループを使い分けるオフェンストレーニング

公開:2023年7月 9日 更新:2023年8月 1日

注目を集めるクラブが東京にある。それがFCトリアネーロ町田だ。2016年創設ながら、2020年の「第44回全日本U-12サッカー選手権大会」で優勝し、日本一に輝くなど、凄まじいスピードで結果を残している。

トリアネーロ町田は個とグループの融合を目指し、個で打開するドリブルやコンビネーションで相手を崩すことを重点的に指導。個人技術の高い選手を育成している。

そこで今回は、川崎フロンターレU-15、U-18でプレーした経験を持つ吉田武史コーチに「個とグループを使い分けて優位性を保つ、オフェンストレーニング」を実践してもらった。日本一に輝いた実績を持つチームのトレーニングは必見だ。(文・鈴木智之)

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攻撃方向を意識しながら、パスとドリブルを使い分けて優位性を作る

トレーニング前編のテーマは「優位性を作るポジショニングとパスを出す・受けるタイミングの習得」。

吉田コーチは「このトレーニングのポイントは、ボールを受ける側の身体の向き、立ち位置、タイミング、ボール保持者のパスの質、パスとドリブルの使い分けです。常に攻撃方向を意識しながらコーチングしていきます」と話し、指導に入っていった。

最初のトレーニングは「ひし形のパス&コントロール」。8m四方のグリッドに選手をひし形に配置して実施。パスを出したら、次の角へ移動するというルールだ。

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「意識してほしいのは、パスにメッセージを込めること。『前を向いてね』と、メッセージを込めた強いパスを、遠い方の足に当てよう。パスの受け手は、出し手がトラップした瞬間に動き出すこと。止めて蹴るを意識してやりましょう」(吉田コーチ)

トレーニング中、吉田コーチは選手のプレーにシンクロし、絶え間なく声をかけていく。

「パススピードを上げてボールを滑らし、受け手の遠い方の足にぶつけよう」「受け手はボールを足元に入れすぎないこと」「速いボールをつけて、パスで相手をはがせるようにしよう」

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さらにはプレーを止めて、「パスが緩いと、どういうことが起きる?」と質問。選手たちから「相手のプレッシャーがかかる」と答えが返ってきたので、「強いパスを出せば、受け手のプレーする時間が増えるよ」とアドバイスを送っていく。

キックのフォームにも言及し「ボールを蹴るときに、体重が後ろに残るとよくない。蹴った足でそのまま前に出られるように。パススピードと移動のスピードを上げて、正確にやろう」と声をかけると、グラウンダーの速いパスがリズムよく回るようになっていった。

テンポを変える一つの方法が「ボール蹴りに行くときの走るスピード」

右回りの後は左回りにチェンジ。右回りでは、右足でボールを止めて、右足で蹴る動きを繰り返したが、左回りでは、左足でボールを止めることを徹底していた。(キックはどちらの足でもOK)。

吉田コーチは「ボールは利き足の前に1回で置こう」「足元にボールを入れて止めると、強いボールが蹴れなくなる。進みたい方向にボールを運んで蹴ることを意識しよう」などの声掛けをし、選手の意識を高めていく。

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左回りの後は右回りに戻し、「味方にパスを当てて、落としのボールを受けてパス」という動きを追加。リターンパスを受ける直前にスピードアップし、相手の背後をとるイメージだ。

ここでは「パススピード以外で、何でテンポが変えられる?」と質問し、「味方に当てて落としたボールを蹴りに行くときに、ランニングのスピードを上げよう」と指摘。さらに、動きが複雑になることで、コントロールミスが頻出することに気づいた吉田コーチは「ミスが増えているけどなんでだと思う?」と投げかけ、こう続ける。

「プレースピードを上げると、ミスが出やすくなる。正確にプレーすることが、もっとも速くプレーする方法だよ。正確にプレーすることを忘れないように。ボールを扱うときは丁寧にやろう。ただスピードだけを上げないこと。そうすればリズムは上がってくるよ」

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プレーがうまくいかなくなったときに、どのようなコーチングで修正するのか。吉田コーチの言葉は非常に参考になる。

数的優位な状況でもパスばかりにならず、仕掛けることも意識する

2つ目のトレーニングは「4対2のボールポゼッション」。縦15m×横10mのグリッド内でボールポゼッションを実施。タッチ制限はなく、対辺へのパス2往復か12本連続でパスを回す、もしくはオニの間をドリブルで突破すれば勝ちとなる。

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吉田コーチは「パスだけにならず、自分で相手をはがすことも忘れないように」と話した後、パスの質に言及していく。

パスの出し手には「攻撃方向が決まっているのに、近い方の足にパスを出すと、受け手は相手の動きが見にくくなるよね」と指摘し、パスの受け手には「隙があるなら前を向こう。近い足にボールが来たとしても、ステップを踏んで前を向くこと」と修正していった。

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ほかにも、動画では「相手をどうやって食いつかせてはがすのか」などの説明もしているので、ぜひ詳細を確認してほしい。

トリアネーロの選手たちは技術が高く、吉田コーチの指示もテンポが良く的確なので、「何にフォーカスして、コーチングするのか」がわかりやすい。

また、トレーニングの設定自体はシンプルなので、取り入れやすいものになっている。ぜひ繰り返し見て、言葉がけの内容などを理解し、活用していただければと思う。

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【講師】吉田武史/
1995年6月11日生まれ。川崎フロンターレU-15、U-18でプレーし、2020年からトリアネーロ町田で指導者としてのキャリアをスタート。現在は、U-11、U-12カテゴリの担当コーチを務める。2020年に行われた「第44回全日本U-12サッカー選手権大会」では、クラブ初となる大会優勝に貢献した。

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