テクニック
土のグラウンドでも実践できる!狭い局面で止める・蹴るの質を高めながらボールを前に運ぶトレーニング
公開:2023年7月14日 更新:2023年8月 1日
パス、トラップの質にこだわり、クリエィティブな選手を育成するシーガル広島。野津田岳人選手(サンフレッチェ広島)や2022シーズンよりサンフレッチェ広島のトップチームに昇格した棚田遼選手が在籍していたクラブとしても知られている。
2021年末に行われた「全日本U-12サッカー選手権大会」では、狭い局面でも丁寧にパスを繋ぐスタイルでベスト8に進出し、今年度のチビリンピック全国大会にも出場した。
今回はシーガル広島で17年、指導に携わる福田知樹監督に「狭い局面でパス&コントロールの質を高めて前進するトレーニング」を実施してもらった。
スペースのない中で、前進するにはどのようなトレーニングが有効なのか。パス&コントロールの質を高めるトレーニングを紹介したい。(文・鈴木智之)
パス&コントロールはパターンにならないように次の動作も考えておく
前編のテーマは「動きながらの質を高めて、観るものを増やすトレーニング」。最初のトレーニングは「パス&コントロール(ダブルスクエア)」。12~15mほどの間隔を空けたコーンの間で、5人組×2チーム(計10人)でパス&コントロールを行う。
赤の選手は赤のコーン、緑の選手は青のコーンを使い、他の選手にぶつからないようにプレーすることがポイントだ。
福田監督はプレーにシンクロしながら、絶えず声をかけていく。
「他の選手と重ならないように工夫しよう」「みんなで協力しながらボールを動かすイメージ」「観るものを増やそう」「相手の背後に隠れない、重ならない」「しっかりボールを走らせよう。蹴るときは、きちんと踏み込んでボールを押し出そう」
トレーニングは右回り、左回りとパターンにならず、選手の判断で回る方向を変えていく。福田監督は「10人でボールを大事にしよう」「ボールに合わせて動こう」と話し、徐々にプレースピードを上げていくように働きかけていった。
良いプレーを見逃さず、褒める姿も印象的で「他の選手と重なっていたらずらそう。しっかり観て、プレーを変えたのは良かった」と声をかけていた。
さらには、プレーを止めて「観るものなにがある?」と質問。子どもたちから「もう1つのボール」「人」などの答えが返ってくる。
すると「観るものを増やそうと思ったら?」と投げかけ、「体の向きを作る」という答えを引き出すと「いつ観る?」とさらに質問。ここでは「常に」「ボールが来る前」「ボールを持ったとき」「ボールの移動中」などの答えが返ってきたので、どれも肯定しながら「ボールが来てから考えない。常に観察しよう」とアドバイスを送っていた。
途中から「コーンを1つ飛ばしてリターンパス(後ろの選手に戻す)」など、「パターンにならないように。自由にやろう」とアイデアを出すことに言及。型にはめず、選手の判断を尊重していることがうかがえる。
前進するためには必ず遠くを観て、ダイレクトで縦パスを入れる
2つ目のトレーニングは「7対4(4対4+2サーバー+1フリーマン)」。グリッドの中央で選手を分け、各2対2の状況を作る。中央のフリーマンはセンターライン上のみ動くことができ、ボールがサーバーからサーバーへと往復すれば1点。ボールを奪われたチームは守備になり、途切れずにプレーを行う。
福田監督は「(ボールから)遠い人はどんな準備をする?」「いまどこを観てる?」と声をかけ、縦パスやダイレクトパスが入ったときに「ナイス!」と称賛していた。
さらに「前に進むために大事なことは?」と質問をし、「ダイレクトプレーができる準備をして、縦パスを入れるのが一番いい。それをみんなでやっていこう」「必ず遠くを観ておこう。前を見る準備をしよう」と、プレーの優先順位を考えることにも言及していった。
今回のトレーニングは土のグラウンドで実施しているので、同じ環境のチームはとくに参考になるだろう。時間が経つにつれてボールの動きが速くなり、プレーの精度が高まっていく様子を、ぜひ動画で確認してほしい。
また、プレーから片時も目を離さず、常に名前を読んでアドバイスしたり、褒めるといった、ポジティブなコーチングをする様子も収録されている。
福田監督は「このトレーニングは形やパターンではなく、選手自身が観て考えて工夫し、やり直して成功することができるように、気づきや発見をうながすコーチングが大切です」と語っている。声かけの内容や子どもたちへの接し方も、参考にしていただければと思う。
後編では5対5対5から、ゴール前の攻防を含む、より実践に近いトレーニングを行っていく。
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【講師】福田知樹/
2005年からシーガル広島で指導者としての活動をスタートし、現在はU-12の監督を務める。2021年にはチームを「全日本U-12サッカー選手権大会」出場に導き、ベスト8進出に貢献した。また、同大会で「Most Impressive Team」(GKも含めた8人全員でゲームを組み立て、日本のサッカーが目指す理想像に近いプレーをしているチームをJFA技術委員会が選考し表彰) を受賞している。