テクニック
神奈川のU-12チャンピオンが実践!引いた相手を崩すサイド攻撃、中央突破に必要な基礎を習得するトレーニング
公開:2023年8月13日
2022年度の「第46回全日本U-12サッカー選手権大会」で、ベスト8に進出したSCHフットボールクラブ。同大会ではサイド攻撃、中央突破に高いクオリティを見せ、多彩な攻撃で観客を魅了した。
強豪Jクラブ、街クラブがひしめく神奈川で存在感を放つSCHは、どのようなトレーニングを通じて、攻撃の質を向上させているのだろうか? 長く育成年代で指導を務める樋口智哉監督に「グループで引いた相手を崩すサイド、中央突破のトレーニング 」をテーマに実施してもらった。
前編のテーマは「ゴール前の連動性とアイデアの共有を高める練習法」。効果的な形でフィニッシュに持ち込むためのトレーニングを紹介したい。(文・鈴木智之)
(※COACH UNITED 2023年4月24日掲載記事より転載)
味方の状況を見て、いつ前進するかをチームとして合わせる
トレーニング前、樋口監督は「中央突破を意識し、連動してゴールに向かう中でのサポートの質、アイデアの共有をテーマに行っていきます」と話し、最初のパストレーニングに取り掛かった。
このトレーニングは、36m×18mのグリッド内に9人が入って実施。ボール保持側が5人になり、必ず5人が1回ボールに関わった後、反対側のエリアの選手にパスをする。
パスを受けた反対側の選手は、黄色のコーンよりも後ろでボールを受け、パスをまた反対側のエリアに展開する。このとき、黄色のコーンより前でパスを出すことがルールだ。
反対側のエリアにパスを出した後は、パスを出した選手がいるエリアから選手が1名移動して、反対側のエリアに入り、5人になって黄色のコーンよりも内側でボールを回し、反対側へパスを出す動きを繰り返す。
樋口監督は「どうボールを展開するかのイメージを持とう」「お互いが顔合わせをしながらやろう」と声をかけ、「止まってボールを受けるのではなく、ボール保持者に寄りながら受ける」「パスを出した後に、空いているスペースにランニングをする」といった動きを提示。
フリーランのときに、お互いの位置を確認することや、深さ、高さ、幅、中間位置などを意識しながら動くことをコーチング。
ここでのポイントは、互いに顔を合わせてアイデアを共有し、サポートの距離や角度を意識しながら動くこと。「ランダムで動いているので、お互いのイメージを共有して、要求しながらやろう」と声をかけ、具体的な体の向きやボールを受ける位置をデモンストレーションしていく。
「試合中も同じで、いつ前進するかをチームとして合わせていきたい。そのために、ボールを持っていない間に人の状況を見ておこう」とアドバイスすることで、ボールがリズミカルに回り始める。
最後に「その場にボールを止めて、スイッチのアクションを1回以上入れる」というルールを追加。ボールの移動中にお互いが顔合わせをし、位置関係を確認することに注力していった。
人数を徐々に増やし、シュートに必要な要素を確認していく
2つ目のトレーニングは「シュートトレーニング」。シューターが前方にいる選手にパスを出し、リターンを受けてシュートに持ち込むのだが、リターンパス(落としのパス)を出す選手はチェックの動き入れ、フリックでボールを流してシュートを打つ。
GKがいないので、シュートはなるべくワンタッチで打つことを心がける。また、リターンパスを出す選手は、実際の試合を想定し、ゴール前にボールをコントロールするアクションを起こして、フリックでボールを落とすことがポイントだ。
樋口監督はリターンパスを出す選手に対し、「予備動作を入れてから、ボールに触りたいタイミングで近寄っていこう」と話し、「センターバックを釣り出すイメージでやろう」と声をかけていく。
次は3人1組で実施。ここでは「斜めに走ってDFを釣り出し、そのスペースを使う意識でシュートを打つ」といったプレーを強調。ボールを味方に落とす選手は、斜めに降りるようなコースに動き、最初にパスを出す選手に近寄っていく。マーカーに対して角度をつけて動くことで、相手を釣り出し、そのスペースを使うことを実演していった。
次は4人1組になり、サイド攻撃からクロス、シュートの形を実施。「距離感とタイミング、連動性を意識しながらやろう」と話し、味方と目線を合わせることや、声で合わせる、要求することの重要性伝えていった。
最後は、縦パスを受けた選手が外側へ展開し、待機している選手がポケットへランニングする動きを加えていく。ゴール前への入り方や、予備動作を入れて、使うスペースを開けておいてフィニッシュに持ち込むといった動きを繰り返していった。
動画全体を通じて「シュートに持ち込むために、何が大切か」が理解できるトレーニングとなっている。また、樋口監督のていねいなコーチングから、多くの学びが得られるはずだ。
後編では、実践形式を通じて、効果的な中央突破、サイド攻撃をトレーニングしていく。
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【講師】樋口智哉/
2009年からSCHフットボールクラブで指導者を始め、現在はSCHフットボールクラブのジュニア統括兼U-12の監督を務める。横浜市泉区サッカー連盟の技術部長や、神奈川県トレセンU-12、横浜市トレセンU-11・12、泉区トレセンU-11・12統括などの指導歴を持つ。