優秀な指導者からは、指導の極意や哲学を学ぶことができます。ここでは、そんな監督たちの言葉を見ていきながら、「子どもたちの指導」について考えていきます。
第二回目もサンフレッチェ広島ユースの森山監督に学んでいきます。
■子どもが変わる土台を作るのも大人の仕事
2010年10月、日本の高校生年代の頂点を決める、高円宮杯全日本ユースの決勝戦が行われました。全国の高校、クラブチームの頂点に立ったのはサンフレッチェ広島ユースです。
広島ユースは高円宮杯全日本ユースの準決勝、決勝と先制点を許しながらも、逆転勝ちで勝利をおさめました。選手たちは口々に「絶対に逆転できると思ってプレーしています。あきらめる選手はだれもいません」と胸を張ります。
広島ユースの選手たちが体現した「あきらめない気持ち」について、森山監督は試合後の記者会見でこう言っていました。
「育成年代の試合を見ていると、点差がつく試合が増えているように感じます。いくらいいゲームをしていても、相手に2点入れられたらあきらめて終わってしまう。でも、うちの選手は絶対にそれはないんです。なぜかというと、子供らはできるんですよ。大人は(すぐにあきらめてしまうのは)『今の子はそうだから、仕方ないよ』と言うけど、毎日、毎日、毎日、毎日、選手たちに働きかければ、『絶対に負けたくない』とか、『どんなことがあっても勝ってやる』とか、子どもが本来持っているものを出すようになるんです。大人が、『最近の子は勝利に対する執念がないよね』とか、『おとなしいよね』とか言うけど、そうしているのは大人であって、大人がそういう事を言っているから、いつまでたっても子供は変わらないんんじゃないかと思うんです」
指導者が求め続ければ、選手は変わる。森山監督はそう考えています。
「普段の環境から厳しい状況を設定して、上手な子に運動量を要求したり、がんばらせたり、勝負にこだわらせる。それはシステムや戦術ではない部分の話ですよね」
森山監督は常々「うまいだけじゃ勝てない。強いだけじゃ勝てない」と言っています。うまさ、強さを発揮するための土台となるもの。それを築くのも、指導者そして大人の大切な仕事なのかもしれません。
Photo//Kenzaburo Matsuoka