考える力
2011年1月 4日
【第3回】監督の言葉から学ぶ「指導の極意」--チャレンジさせる
優秀な指導者からは、指導の極意や哲学を学ぶことができます。ここでは、そんな監督たちの言葉を見ていきながら、「子どもたちの指導」について考えていきます。
第三回目は東京ヴェルディユースの場合です。
■チャレンジした結果は、指導者が責任を取ればいい
楠瀬監督はヴェルディでプレーした経験を持ち、ラモス瑠偉氏や岸野靖之氏(現・横浜FC監督)らと共にピッチに立っています。楠瀬監督はクラブユース選手権後に、次のような指導方針を教えてくれました。
「僕らは第二のカズ、ラモスを作らないといけない。本番に強い奴、本番に点を取れる奴というのは、怖いからと言ってボールをすぐ蹴るんじゃなくて、堂々と受けます。僕は最初の頃、選手たちに『パスを受けたらターンしなさい』と言っていました。高校時代でサッカーが完結するわけではなく、彼らはまだまだうまくなると思うので、どんどんチャレンジをしていく。積極的にトライすることで、自分のプレーやチーム自体がよくなることを実感してもらいたいんです。時にはボールを持ち過ぎたり、幼稚なプレーも出ますけど、チャレンジしないといけない。メッシやイニエスタみたいになってもらいたいから、どんどんチャレンジさせて、あとは指導者が責任をとればいいと思っています」
シンプルにボールを離せば、それだけミスの回数は減ります。しかし、そこですぐにボールを渡すことを良しとせず、積極的にチャレンジすることを奨励する。勝負にこだわった場合、一見、リスクがあるように見えますが、「そうしないと、うまくはならない」と楠瀬監督は言います。
「うちはボールを持つことを良しとしているので、『そんなところで持つのかよ』と言うことはまずないですね。たとえパスを受ける味方が相手にマークをされていても、パスを出します。そうしないとうまくならないですよね。それによって負ける試合はもちろんありますけど、真剣に、その精度を上げていくことが大事なんじゃないかと思うんです」
ヴェルディは代々、個人のスキルを重視し、テクニックに優れた選手を輩出してきました。その裏には、ボールを持つことを良しとする、ヴェルディの流儀があるのかもしれません。
Photo//Kenzaburo Matsuoka