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考える力

「言語技術が日本のサッカーを変える!」いま求められる自己決定力を育む指導とは

公開:2012年11月 5日 更新:2021年1月15日

キーワード:なでしこコミュニケーション判断力女子チーム指導者育成自主性

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前回は望月聡さんの指導方から、なぜ“自分で判断できる選手”が必要かということを紹介しました。今回はそれを踏まえて、“日本のサッカーが世界と戦うために必要な要素とは?”また、そのために“指導者がすべきことは?”というテーマでお話をお聞きしました。
 
 
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■自己決定力を育む。自分の意見をしっかり言える選手を!

現在、日本サッカー協会副会長及びアジアサッカー連盟理事を務める田嶋幸三さんの「言語技術が日本のサッカーを変える」という著書があります。簡潔にまとめると、自己決定力のある選手を育てようという話です。JFAのインストラクターも務める望月さんはこの本を手にとり、「今まで日本のサッカー界は強くなるために、欧米の物まねでやってきました。日本人は勉強熱心なので、色んな国の良い所を取り入れて成長してきました。それでもトップ10入りするためには何が足りないかということを考えた時に、日本に足りない部分が分かった」と話します。足りない部分とは何か・・・
 
それは自分で物事を考えて行動に移せる能力でした。サッカーというスポーツには“観る、考える、判断する、分析する、実行する、プレーに対して責任が持てる、反省する、修正する”と考えなければいけない部分が非常に多くあり、その繰り返しが出来ないといけません。それをするためには物事を論理的に考える能力が必要になります。
 
「なぜシュートを打ったのか?を誰かに説明できる選手が必要なんです。コーチが打てと言ったからではなく、『あの状況ではシュートが一番良いと思うんです。サッカーはゴールを奪うスポーツですし』とか『あの時は自分は見えていなかったから、もっと見えてる奴に渡した方が良いと思った』などと物事を論理的に話せて、皆が納得できるような能力がないといけない。そういう力がないと、日本のサッカーは変わらないと僕たちは捉えました」
 
望月さんの言葉のように、現在、日本サッカー協会でもキッズからプロのS級まで、今はコミュニケーションスキルを身につけるための指導が行われています。
 
 

■選手を変える前にまずは指導者が変わらないといけない

選手たちを変えるためには、“指導者が変わることが必要”と望月さんは説きます。
「指導者は頭ごなしに言い聞かせるのではなく、“なぜ、それをやらないといけないのか”ということを子どもたちに納得してもらって、しっかり伝わる教え方、言い方をしていかないといけません。
ピッチで試合をするのは選手たちだからこそ、自分をプレーや言葉で表現していけるようにならないといけない。そのためにも自分の言葉を言えないといけないのに、指導者が論理的に選手たちに納得してもらえるように言えないとダメですよね」
 
選手たちを納得させる方法にも望月さんなりのアプローチがありました。
 
「皆、『俺こんなこと知っているよ!』みたいに披露もしたいから、勉強した事を伝えたくなります。そんなちょっとした自慢とともに、やっぱり早く上手くなって欲しいという気持ちもありますし、『コーチも一生懸命勉強しているな』って事が伝わるので、それも良いことだと思います。ただ、それをしてしまうと言われないと出来ないとか、押し付けになってしまいますよね。僕はそうじゃなく、サラっと言ってみたり、うまく自分たちで気づかせる方法をとってあげたいです。僕が学んできたことを誘導尋問じゃないですけど、『コーチと喋っていると、色んな戦術に気づけるな』みたいなに思わせてあげられるんが一番ですよね。一生懸命に伝える喜びもあるけど、選手に気づかせてあげられる喜びみたいなものを僕はあるのかなと思います」
 
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■同じ目線だからできるアプローチもある。

望月さんのびわこ成蹊スポーツ大学での練習を見学していると、一つ気づく点がありました。それはボール回しやミニゲームの場面で頻繁に参加していくことです。
 
「コーチだから言えることもあるけど、選手としてスーっと練習に入って、同じ選手の立場で言うこともあります。選手たちだからこそ、見えること、言えることもありますよね。僕の現役時代は『何であんなことするんだ』とか周りに良くやって欲しいことを口うるさくコーチングする選手でした。僕は選手として言っているつもりでも、選手からすれば圧力はあるでしょうから、終わった時に『色々言ったと思うけど、一選手として言っているんだ。僕が何を言ったか、合っているか間違っているかじゃない。だから、お前も自分がどう思うか、あれは出来ないこれは出きるということを言って欲しい』と伝えています。
 
そうやって意見をぶつけることで、互いのサッカー観や望んでいることが分かり、プレーが合っていくのだと思うんです。何を考えているか分からないままじゃうまく行きません。そういった作業が2人から11人へと増えていくことで、チームになって、一丸となって戦うということに繋がっていく。
そのためにも意見をぶつけないといけないし、相手を説得させないといけない。意見を通すためにも言語技術を持てる選手が必要となっていくのです」
 
 

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望月聡(もちづき・さとる)//
1964年5月18日生まれ 
守山高校、大阪商業大学を経て、1987年にJSL1部の日本鋼管サッカー部に入部。日本代表として国際Aマッチにも7試合に出場する。Jリーグ発足後は浦和レッズへと移籍。1995年からは京都パープルサンガへ移籍し、Jリーグ昇格に貢献した。引退後は京都パープルサンガでのコーチなどを経て、2008年の北京オリンピックサッカー女子日本代表コーチに就任し、ベスト4入りに貢献。翌2009年度からは、びわこ成蹊スポーツ大学の監督を務めるだけでなく、競技スポーツ学科の准教授として教壇にも立っている。
 
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取材・文・写真/森田将義

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