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考える力

サッカーの判断力に効く「自分で考えるトレーニング」

公開:2013年5月15日 更新:2013年5月16日

キーワード:コミュニケーション

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「考えるサッカー」を実践するための論理的思考を身につけるために。JFAアカデミーで行われている「コミュニケーション・スキル」の授業を担当されている、つくば言語技術教育研究所の三森ゆりか先生にお話を伺っています。 前回は、論理的思考、言語技術、コミュニケーション・スキルの重要性を中心にお伝えしましたが、二回目の今日は「じゃあどうしたらいいの?」具体的なトレーニング方法をお聞きします。
 
 
<<香川真司も実践している?世界で輝くためのコミュニケーション・スキル
 
 

■コミュニケーションの基本づくり 問答ゲーム

 コミュニケーション・スキルにもいくつかの段階があります。やることは同じでも、年齢に応じてその深度は深まっていきます。まず最初に取り組むのが簡単な質問に答える問答ゲームです。
 
「はじめはなんでもいいんです。いきなりサッカーの話をするのではなく天気や、好きなもの、嫌いなものなど身の回りの簡単なことからはじめるといいでしょう」
 
はじめは「りんごが好きですか?」「好きです」「嫌いです」のような簡単なものからはじめて、「どんなりんごが好きですか? なぜりんごが好きですか?」
 
 と、徐々に単語から文になるように、さらに文章、理由を含んだ意見になるように問答を繰り返します。
 
 これを繰り返していくと「好き」「きらい」と単語でしか意思表示できなかった子どもが、質問に導かれるようにして考えを整理でき、理由を自分の言葉で言えるようになるのです。「このときに意識して欲しいのが、文の中に必ず主語入れることです。『好き』ではなく『私はりんごが好きです』と言うようにします。『私は』と口にすることで、そのあとに『なぜなら』が続けやすくなります。主語を明確にすることで『私』の考えに責任を持つという意味もありますね」
 
 サッカーキッズたちと親御さんの日常会話でも「今日の練習どうだった?」「別に」で終わってしまうことが少なくないと聞きます。これでは会話にはなっていません。問答ゲームを取り入れることで、普段の会話も、そしてサッカーのプレーも変わってくると言います。
 
「コーチに注意を受けたとき、ヨーロッパの子どもたちは「なぜ?」と聞き返したりします。ところが、日本の子どもたちは指摘されると、怒られた気がして、自分が責められていると感じる子が多いようです。それが問答ゲームに取り組んでいると萎縮することもなくなり、納得がいかなければ聞き返すこともできるようになります」
 
 コーチがプレーを止めて、プレーの選択理由を聞いても、戸惑って答えられない子ども、よくいますよね。よくよく聞いてみればきちんと考えてプレーしているのに声に出して説明できない。こんなところに違いがあったようです。
 
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■書いて検証、自分の意見を筋道立てて伝える方法

 JFAアカデミーで特に重視しているのが「書く」ことだそうです。
 
「話した言葉は消えてしまいます」
 
 三森先生は言います。
 
「話す言葉は後から修正ができず、言いっぱなしで終わってしまいます。サッカーの練習でもプレーをビデオにとって分析や検証をしたりすると思いますが、書いて残すことにも同じような意味があります」
 
 自分の考えをひたすら書く。書いて後から見返して修正する。
 
「アカデミーの生徒たちもはじめは鉛筆を持ったまま固まる子もいました。でも、最終的にはすらすら書けるようになります」
 
 文章で自分の考えを組み立てられる選手たちは、それだけですでに論理的思考が身に付いているといえるのではないでしょうか。
 
 現在、三森先生に代わってアカデミーでコミスキの授業を担当している田中澄枝先生が見せてくれたアカデミー生のアンケートは、文字でいっぱい。「実生活でも役立っている」「コミュニケーション・スキルの大切さがサッカーでも生きている」など、自分で感じたことを学ぶ大切さがびっしり書かれていました。
 
 コミュニケーション・スキルでは、問答ゲームから議論、ディベートに発展していく『対話』、物事を説明したり描写したりする『説明』、この後に紹介する絵の分析などに代表される『分析・読解』、小論文や意見を表明する『論証』、作文や物語の基本構造を学ぶ『物語』の要素を体系づけて学び、論理的思考や批判的思考を身につけます。
 
 難しく聞こえるかもしれませんが、1対1の対話ができない子どもは大勢での議論もできませんし、自分の意見を伝えるディベートもできません。問答ゲームからスタートして子どもたちの「なぜ?」を育て、自分の中にある答えを外に出す訓練を普段からすることが、自分で考えるトレーニングにつながります。
 
 次回は絵の分析を中心に、子どもたちの考えを引き出す方法をさらに見て行きましょう。
 
 
頭を鍛えればまだまだ伸びる!違いを生み出すコミュニケーション・スキル>>
 
 
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今回お話をお伺いした三森ゆりか先生(右)と田中澄枝先生(左)
 
つくば言語技術教育研究所//
 2002年より日本サッカー協会のコーチングスタッフ、選手などに言語技術の講習を行う。世界のトップ10を目指し、ロジングによるエリート教育を志すJFAアカデミー開校と同時にコミュニケーション・スキルの授業を担当。現在はJFAアカデミー福島、JFAアカデミー宇城、JFAアカデミー堺のコミュニケーション・スキル講座に専任講師を派遣している。
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取材・文/大塚一樹 写真/新井賢一(ダノンネーションズカップ2013より)

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