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小さくても奪える! 本田泰人が教えるボールの奪い方

公開:2014年3月 3日 更新:2020年3月24日

キーワード:コントロールディフェンスボールを奪う本田泰人相手の隙をつくタイミング身体が小さい間合い鹿島アントラーズ

ディフェンスをするとき、いつも足が速い選手にドリブルで抜かれて、悔しい思いをしていませんか? 体の大きな相手からボールを奪うのを、あきらめていませんか?

現役時代には鹿島アントラーズのボランチとしてプレーした本田泰人さん。166センチと小柄ながら、ビスマルクやストイコビッチといった世界的な名選手から、たくさんのボールを奪い続けました。
小さくてもボールは奪える。足が速くなくても、ボールは奪える。現在はサッカー指導者として活躍する本田さんに、『ボールを奪う技術』を伝授してもらいましょう。

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奪う技術その1:間合いのコントロール

1対1のディフェンスに自信を持つ本田さんは、相手チームの攻撃的な選手から嫌がられる存在でした。たとえばヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)に所属していたビスマルクは、1997年に鹿島へ移籍しましたが、その理由の一つとして、「本田とチームメートになれば対戦しなくて済む」と考えたそうです。それほど相手を困らせる選手でした。

その本田さんが、重要なディフェンスのポイントとして挙げるのが『間合い』です。

「間合いのコントロールは重要だと思う。僕がなぜ、相手に嫌がられていたかといえば、普通のディフェンスの選手より、距離が近いから。間合いを詰めて、接近戦を仕掛けるからです」

1対1の間合いが近くなれば、相手はいつボールを突っつかれるかと焦り、目線も下がって広い視野を確保しづらくなります。接近戦により、相手にプレッシャーを与えることができるというわけです。

「"よくそんな間合いでいられるな"と、ジーコやコーチにも言われました。自信がなければここまで間合いを近くにはできない、と。相手は嫌がって、僕をかわそうとして遠くにボールを持って行こうとしますね」

【間合いが遠いと足を伸ばしてもボールに届かない】1対1の間合い

【本田泰人の間合い】

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もちろん、1対1の間合いを近くにすれば、ポーンとスペースへ蹴って、1人スルーパスのような形で置き去りにされるリスクが高くなります。普通の選手は、それを恐れて、間合いを広くするところですが...

「僕はスピードのある選手に対しても、間合いを広く取るという対応をしませんでした。すべての選手に同じように接近戦。それはつまり、最終的にはファールでもしょうがないという考えです。スピードのある選手には、ボールを奪おうとしてドリブルした方向に体を入れた結果、ぶつかって倒れてファールになってもしょうがない、と考えます。ファールせずに奪うことがベストだけど、僕はあえてボールを奪うチャレンジをした。基本的には間合いを寄せられるだけ寄せたほうがいいけど、裏を突かれるリスクをどこまで抑えられるかです」

常に接近戦を仕掛けて、裏を取られそうになったら、最終的にはファールでもしょうがない。とはいえ、そればかりになってしっかり対応できなければ、イエローカードを受けたり、失敗して入れ替わられる恐れもあります。

そこで本田さんのディフェンス術、2つ目のキーワードが『ステップ』です。

技術その2:ステップの切り替え

本田さんの1対1の接近戦は、なぜ可能だったのか? そのポイントは、アジリティー(俊敏性)です。

「"重心が低い"と、いつも周りに言われていた。僕はドリブルでかわされても、すぐに対応できる体勢を取っているつもり。"そんなに低い体勢から動けるの?"ってよく言われたけど、自分の感覚としては自然な構えで、それがいちばん奪いやすくて、ボールに直線的に素早く行けた。僕は瞬発力に自信があったので、それも良かったのかもしれないですね。サイドステップとかは、小学校や中学校のころから毎日やっていたし、反復横跳びは誰にも負けなかった」

低い体勢

低い重心から、鋭く寄せる能力。そのときに重要になるのはステップの技術だそうです。

「1対1の対応のときに、ボールなしで、サイドステップとバックステップをやるときに、使い分けないといけないステップがある。相手がゆっくりドリブルしているときは、サイドステップで、ゴールから遠いサイドへ追い込んでいく。ただ、相手にスピードを上げられたときにどうするか? サイドステップのままでは相手のスピードについていけないから、ラン(走り)に切り替えないといけない。だけど、顔と体が走る方へそのまま向いてしまったら、相手とボールが見えなくなる。そういうときの走り方は、顔と体を相手に向けて、体の正面で相手をとらえながら、横方向へ走る。そういう走り方のトレーニングも必要ですね」

このサイドステップとランの切り替えをマスターすることで、相手の切り返しにも対応しやすくなるそうです。

「相手がスピードアップしたら、サイドステップから走りに切り替えたり、相手が切り返したら逆方向へ反転したり、スムーズな動きが必要になります。常に体の正面でしっかりと相手をとらえていないと、フェイントや切り返しをされたときにクルクルと回って、自分がどこに行っているかわからなくなり、相手の思うままにやらせてしまう。どこでボールを奪うチャンスが訪れるかわからないから、そこに反応できるようにしたいですね」

このようなステップの切り替えは、相手の横方向への動きに対応するサイドステップだけでなく、相手の前進に対して、下がりながらバックステップを踏むときも同様です。

「サイドステップは相手の正面を向いてやるけど、バックステップは相手に対して斜めに向きながら、下がる。それをバックステップからランに変える動作がスムーズじゃないと、1人スルーパスとかで置き去りにされてしまう。大人でも難しいし、プロでもぎこちない選手はたくさんいるけど、ディフェンスには必要な技術ですね」

『間合い』と『ステップ』は、1対1の重要な要素です。
もし、自分が1対1に弱いと感じているのなら、間合いの取り方、ステップの踏み方などを見直してみてはいかがでしょうか?

次回はボールを奪う『タイミング』について、本田さんに解説してもらいます。

足から離れる隙を突く! 小さいからこそ考えてボールを奪う>>

清水英斗(しみず・ひでと)//
フリーのサッカークリエイター。ドイツやオランダ、スペインなどでの取材活動豊富でライターのほか、ラジオパーソナリティー、サッカー指導、イベントプロデュース・運営も手がける。プレーヤー目線で試合を切り取ることを得意とし、著書は、『あなたのサッカー「観戦力」がグンと高まる本』『イタリアに学ぶ ストライカー練習メニュー100 』『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』『サッカー守備DF&GK練習メニュー100』『サイドアタッカー』 『セットプレー戦術120』など多数。
●twitterID:@kaizokuhide

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