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これからの日本では「スポーツマンシップ」こそ武器になる

公開:2014年8月12日 更新:2020年3月24日

キーワード:メッセージルール

 
「スポーツマンシップに則り、正々堂々と戦うことを誓います!」
 
この選手宣誓は多くの人にとって耳慣れたもの。しかし、「どういう意味ですか?」と聞かれて、説明できる人は少ないでしょう。ここには問題がふたつ存在します。第一に、「知っておくべき事柄を知らない」という知識の欠如。「則る」という言葉によっても明らかなように、「スポーツマンシップ」は重要です。第二に、「重要であるにも関わらず、知らないまま放置してしまっている状態」です。筆者は、後者の問題がより深刻だと考えています。
 
ダノンネーションズカップ開会式
文/広瀬一郎 写真/田川秀之
 

■東北大震災でも顕著だった日本人の弱点

「重要な問題だと判明しているのに、放置してしまっている」という点について、ある事を思い出します。
 
2011年3月11日の東北大震災は、千年に一度という大きな天災でしたが、被害を甚大にしたのは「天災」ではなく、「人災」でした。
 
たとえば、菅総理が「迅速に対応するため」に、対策本部を東京電力本社に移した際のこと。東京電力の関係部署の部長に集合がかかりました。すると、臨時対策本部に来た各部署の部長達は、なんとお互いに名刺交換をしたのです。それを目撃した官房のスタッフは、「災害に対応すべき部署間には連携した実績どころか、連絡さえもなかった」という事実に驚愕したのです。実際、東京電力の中で、リスクに対応する部署は「品質管理部」という部署なのですが、そこへの配属は、キャリアの終焉、つまり窓際を意味していたそうです。
 
また、震災が起き、原子力発電所に異常が起き、放射能が漏洩した際、風向きや地球の自転などから放射能が流れる方向が分かっていたのにも関わらず、危険な方向に避難を誘導してしまったのです。その予測は『スピーディー』というシュミレーション・ソフトで分かっていたことが判明した後、そのソフトを所有していた文部科学省は、「原発の担当の経済産業省には報告していた」と言いました。報告を受けていた経済産業省は、「災害対策本部及び、内閣に報告する義務は文部科学省にあった」と言い訳をしました。これらの「当事者意識」の無さが露になったケースは枚挙に暇がありません。
 
ところが、その後の対処には、目の前の現象(事故)への対応に終止し、より本質的な「人災」問題への対応がなされていません。「人災」への対処は、「人材教育」以外にはありえませんが、あれだけ広く認識された「人災」について、その後何らかの手だてがなされたという事実はありません。それにも関わらず、いつのまにか「人災」という言葉は消滅してしまっています。繰り返しますが、現在の日本に「人災」が起きるリスクは、東北大震災の前と後では何の変化、進歩もないのです。
 
 

■自己が確立しない日本人

重要な事項に対処せずに安穏と暮らしている姿に、「スポーツマンシップを理解させないまま、平気でスポーツをさせている」これまでの日本の現状を重ね合わせるのは、無理矢理なこじつけだと思われるでしょうか?
両者に共通するのは「教育問題」です。現代の教育は、余りにも「スキル」に偏り過ぎています。算数や国語や理科などは、スキルの問題です。しかし、事の軽重を判断する能力は、スキル以前の問題であり、先行して身につける問題なのです。
 
「事の軽重」を判断することは、「自己」が確立していなければできません。「人災」の中核にあるのは、「当事者意識」であり、自己が確立していないことが全ての問題の発生源です。
 
「自己」は他者との関わりにより形成されるものです。他者とのかかわり合い方の基本が「尊重」ですが、これは自然に身に付くことではありません。なぜなら、「尊重」は本能的な事柄ではないからです。
 
人間には他の動物にはない「前頭葉」という3つ目の脳が存在します。そして「他者への配慮」という機能は、この前頭葉に存在していることが近年明らかになっています。前頭葉の細胞数は、10歳くらいで決まります。また、その機能は22歳前後で発達が止まります。(つまりリーダーシップなどは、20歳前後までに身につける事柄なのです。社会人になって、リーダーシップ研修などで学べるが、所詮「スキル」でしかありません。)
 

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文/広瀬一郎 写真/田川秀之

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