■冬季移行とリーグ戦導入がもたらすメリット
冬季への移行について米原代表は「われわれは移行に大賛成なんです」と言います。その理由は「土地柄もあると思うのですが、いまの渋谷の子どもたちは夏を過ぎると“受験モード”に切り替わってしまうんです。その弊害はあると思います。『全少が終わったので受験のためにサッカーからしばらく離れます』という。それが全少を冬にすることで、子どもたちを次のカテゴリーへ繋げやすくなるというサッカーでのメリットはあると思います」ということでした。
これは非常に難しい問題で、中学受験のためにサッカーから離れることを一概に「悪い」と断じることはできないでしょう。ただ、サッカー界として言えば、伸び盛りの時期に半年以上もサッカーから離れてしまう選手が多数出ている現状に、必ずしもポジティブではありません。サッカー自体を辞めるきっかけにもなってしまっていますから(そもそも、サッカーを続けることと勉強をしないことが「イコール」になってほしくないという気持ちもあるのですが……)。もちろん、個々の家庭の事情・方針はサッカー界がどうこうできるものではありませんが、「全少」というシンボルが冬にあることで、ある種の効果は見込めるかもしれません。
アーセナルSS市川の幸野健一代表は「全少に出る48チームはすごく良い経験を積むことができると思いますが、他のチームはどうでしょうか。すぐに負けてしまったチームはこの年代で積むべき経験を積めているでしょうか。日本が世界のサッカーに迫っていくためにも、毎週末にリーグ戦の試合があるという状況をまず作ることが第一歩だと思います」と言います。
確かに全少の予選は、今年で言うともっとも早い地域で4月5日に始まっていました。新学期早々に敗れてしまったチームは、シーズンの最大目標をシーズンのまさに最初の段階で失ってしまうわけです。全少が「シンボル」として厳然たる影響力を持っているからこそ、その効果が及ぶ時期を秋から冬にかけてまで「引き延ばす」効果は小さくないように思います。
小学生年代でのリーグ戦の実施は、運営面や枠組みを含めて大小の課題を残しているとは思いますが、知恵を出し合ってこのリーグ戦を子どもたちが「サッカーをする幸せ」を感じられるものにしていくことが肝心ではないでしょうか。
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取材・文/川端暁彦 写真/サカイク編集部