■大切なのはドリブル後の判断
筆者は、昨年から今年の春先に掛けて彼のプレーを見てきた。ドリブルである程度は突破ができても“その先”が非常に弱かった。簡単に言うと、ドリブルをしてから先のシナリオが、彼の中で描けていなかった。あくまでドリブルもパスも、ゴールを奪うための“手段”であり“目的”ではない。しかし、これらに固執したり自信を持ちすぎると、ドリブルやパスが“目的”となってしまい、ゴールを奪うという本当の“目的”をぼかしてしまう。
それはサッカープレーヤーであれば誰もが通る道であり、大事なのはそのことに気付くことができるか。奥川はここでも気づくことができた。
「じつは突破に“浸っている”部分がありました。でも、ドリブルして周囲から『うまい』と言われていても、最終的に結果(ゴールやアシスト)が残っていなかった。それではいけないと考えるようになりました。点を取るためにはドリブルしてからのプレーが重要。意識が変わりました」
ドリブルをすることに自己満足してしまっていた自分に気づくことができた。この気づきから彼はまた一段と成長をした。今年の春を過ぎると、彼はよりゴールに近い位置で存在感を発揮するようになる。バイタルエリアでは、味方とのワンツーからシュートを放つころもあれば、パスと見せかけてドリブル突破を仕掛けることもある。プレーの選択肢が増えることで点を取るという目的を達成しやすくなった。
「いまはドリブルは最低限の手段であって、そこから何ができるかを考えています」
2度の気づきで、自分の武器を見つけ出し、それを磨き続ける奥川雅也。中国戦では左サイドを活性化させることはできたが、バイタルエリアでの仕掛けは、まだまだ足りなかった。成長し続けている彼だからこそ、もっと高い要求をしていきたい。サイドを突破するだけが自分の仕事ではない。目的はドリブルではなく、ゴールやアシストという結果を残し、チームが勝つこと。それを理解しているであろう彼が、後半14分に途中出場した第2戦で有言実行してくれた。第3戦以降の活躍にも期待したい。
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取材・文・写真 安藤隆人