考える力
「なにも教えないことで子どもは育つ」順天堂大学蹴球部の教育
公開:2015年4月20日 更新:2021年1月27日
■多くの選択肢を子どもに与えること
読者のみなさんは、親が子どものプレーに口を出すということをどう考えますか?
意見はさまざまですが、"コーチが言っていることと"と"親が言っていること"が違ったときに子どもが困惑するから、親がプレーに口出しすることは良くないこと、というのが一般的な認識です。
そんななか、吉村さんはこんな見解を示します。
「小学生のころは、選択肢を与えてあげることが大切です。子どもが、"お父さんはそう言うけど、コーチはこう言ってたよ"と感じた時に、そのどちらがいいかということを(子どもは)選択できます。その“選択ができる”ということは“考えられる”ということです。選択することに慣れていないから混乱するのです。わたしが一時期暮らしていたオランダはサッカー先進国ですが、親が子どものプレーに口を出すことはあります。でもオランダの子どもは、自分がピッチでどうプレーするかを自分で決めます。コーチの発言が100%正解というわけではないですし、中学生になったときに、あたらしいコーチが違うことを言う可能性は多分にあります。年齢が変わればやり方も変わります。『そこで決断する、判断するのはキミ自身だよ』だということを、ぼくら大人は伝えてあげないといけません」
考える力。
一言でいえば簡単ですが、これを育むことはなかなか簡単ではありません。吉村さんが語るように、ときには"何も教えない"ことで、ゼロの状態からどういう行動をとるべきかを考えさせることも必要であり、多くの選択肢を与えることで"何が適切か"を選択することも必要です。100%の正解がない状況で、ひとつの方法や考えを押し付ける教育を取り続けるのではなく、子どもが"答え"を求めても、それを与えずに自分で考えさせる。
そういう状況を親が提供してあげることが、子どもを人間として、そしてサッカー選手としても大きく成長させることは間違いないでしょう。
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取材・文 竹中玲央奈 写真 サカイク編集部