■正しい認知と判断の引き出しを身につけよう
サッカーサービスチームの選手たちは、大会後「相手チームの選手はプレーの判断スピードが速かった」と言っていました。スペインの選手たちはピッチの中で何が起きているかを理解し、それを解決するためにはどうすればいいかという“判断の引き出し”を持っていたので、結果としてプレーの判断スピードが速いように感じたのではないでしょうか。ポールコーチが具体的な例をあげて説明します。
「たとえば、相手のFWが前線からプレスをかけてきた場合。中盤の選手を経由せず、最終ラインから一気に前線の選手に長いボールを当てて落とし、中盤の選手が前を向いた状態でボールをつなぐといった、チームとしての共通理解が必要です。ピッチの中で何が起きていて、どうすれば解決することができるか。それはU-12年代から積み上げていきたい、サッカーに対する理解の一部です」
サッカーサービスのスクールでは、年間を通して『ピッチの中で何が起きているか』を認知するためのトレーニングを行っています。ポールコーチがトレーニングのコンセプトを説明します。
「たとえば『有利な状況でパスを受ける』というアイデアのもと、サポートのトレーニングを行っています。ボールコントロールも自分がプレーしやすくなるためだけでなく、その状況を活かして、より有利な状態でプレーするために、どうコントロールすればいいかを伝えています。パスにしてもボールを受けた選手が、次にプレーしやすい状況を作るためのパスを出すこと。プラス、チームとしてどうパスを回して、どうアドバンテージを作り出すかをトレーニングします。たとえば、サイドにパスを出すことで相手選手が寄せられて、反対サイドにスペースができます。このように、ただボールを動かすのではなく『目的のあるパスとは何か』を学んでいきます」
サッカーサービスの指導のポイントは「たくさんの質問をして、考えてもらうこと」だと言います。
「たとえばサポートのコンセプトを身に付けるトレーニングのとき。『なぜいまパスがもらえなかったと思う?』『なぜボールを失ったんだろう?』『パスコースは見えていた?』などプレーを止めず、シンクロしながら質問を投げかけていきます。そこで大切なのは、答えを教えるのではなく、考え方を教えること。コーチが選手に『この状況になったときはここに動こう』と教えるのは簡単ですが、それをすると、状況が変わったときにどこへ動けばいいかわからなくなってしまいます。重要なのは、選手がコンセプトを理解することです」
スペインでの経験を通じて、多くのことを体験したサッカーサービススクールの選手たち。さらなる成長に向けて、今後も『賢い選手』になるためのトレーニングは続いていきます。
Jリーグの試合映像を使って「正しい認知」「正しい判断」を身に付ける
FCバルセロナの選手や世界のトッププロをサポートしてきたスペインの世界的プロ育成集団「サッカーサービス社」が、認知やサポートなど13歳までに身に付けておくべき戦術をプロの試合映像を使って解説。サッカーインテリジェンスを高めたい子ども達が見て学べる映像トレーニング。
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取材・文 鈴木智之