現在の日本における子どものサッカー育成環境を考える時、例えるなら開国後の明治維新に近いように感じることがある。欧米からの文化や舶来品がたくさん上陸した明治。平成となった現代では、サッカーという文化が複数の国から押し寄せている。『FCバルセロナ』がスペインサッカーを教え、『ボカ・ジャパン』がアルゼンチンサッカーを教えるなど、海外の名門クラブがこぞって日本国内にスクールを開校している。そして今回ご紹介するのは『クルゼイロ・ジャポン』が伝えるブラジルサッカー。技術だけではない、文化から感じる“何か”を見つけてほしい。(取材・文 隈崎大樹 写真提供:クルゼイロ・ジャパン)
■ここが違う! ブラジル人と日本人のメンタリティ
筆者が南米・パラグアイでプレーをしていた時にも感じたことだが、ブラジル人はとにかく陽気だ。それも"底抜けに"明るいのだ。これは、以前に寄稿した記事『ジーコも称賛!ブラジルNo'1育成クラブの子どもの育て方』にも書いたエピソードだが、クラブのトライアウトの際、ガチガチに緊張していた私のもとにやってきた3人のブラジル人が「オイ、そこの日本人! もっと楽にしろよ、リラックスだ! 」と私の緊張をほぐしてくれた。お互い合否を分け合うライバル同士であるのに、だ。私が「なぜライバル同士であるわたしにそんなことを言うんだ」と率直に質問してみると「そんなガチガチじゃお前の実力が出ないだろ。ただのアドバイスだ」と言う。この余裕は、彼だけの持ち味ではなく「彼ら=ブラジル」の文化が成せるものだ。それだけサッカーというものに向き合い、突き詰めているからこそできる言動。そこにブラジル気質とサッカー文化を見た気がした。その体験を踏まえ、日本でブラジルサッカーを教える『クルゼイロ・ジャポン』のキャンプのため来日している、アドリアーノ氏とカレカ氏に話を伺った。
■日本とブラジル。サッカーに対する捉え方が違う
サッカーとは、丸く転がるものであればスポーツになることから、アフリカなど開発途上国ではオレンジの実をボールに見立てサッカーをしていた時代があったという。つまり、ボールさえあればスターにもなれるという、夢のスポーツでもあるのだ。そうした点も大きく左右しているのだろうか──ブラジルでサッカーをはじめる子どもたちの背景には「生活」がかかっているという。「ブラジルの子どもたちは、サッカーを職業であると捉えています。少しでも上手になってお父さんお母さんの暮らしに貢献したい。医療も十分受けられるような生活水準にしたいと考えているんです。だから簡単には『スター選手になりたい』などと夢見がちなことは口にしません。サッカーで生計を立てていく、ということの厳しさがよくわかっているからです。陽気でハッピーなブラジル人ですが、一方でサッカーに対する考え方は、生活を背負うほど重みを感じてその職業に就いているといえるかもしれませんね」とはアドリアーノ氏。この言葉からも"文化"や"環境"の違いは歴然だ。
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取材・文 隈崎大樹 写真提供:クルゼイロ・ジャパン