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なぜ、海外の子どもたちは8歳で自立できるのか? 皆本晃×片山堅仁対談1

公開:2015年5月15日 更新:2021年1月27日

キーワード:Fリーグアルゼンチンスペイン自立

「ぼくは将来、サッカー選手になって親を助けたい」
 
今年1月までFリーグのシュライカー大阪に所属していた片山堅仁さんは、過去に3年半サッカー留学したアルゼンチンで、8~9歳の子どもがそのように語る姿をみて衝撃を受けたそうです。みなさんのお子さんは、「どうしてサッカーをしてるの?」と聞いてなんと答えますか?
 
海外と日本の子どもたちの自立するスピードには大きな差があると言われています。その差は、どういったところにあるのでしょうか。今回は片山さんと、スペインで2年間のプレー経験を持つフットサル日本代表の皆本晃選手(現・府中アスレティックFC所属)に話をうかがってきました。(取材・構成/澤山大輔 写真/田丸由美子)
 
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むかって左が片山堅仁さん、右が皆本晃選手
 

■20mずれたパスも人のせい! 海外の常識と日本の常識は違う

片山 スペインの小学生年代の子はYES/NOがはっきりしています。日本って「好き嫌いしないほうがいい」って言われると思うんですけど、あちらはYES/NOがハッキリしていて、僕としてはわかりやすいというか。わがままって言ったらわがままになってしまうかもしれないですけど、自分の意志を相手に伝えるというコミュニケーション能力は、日本の多くの子どもたちより秀でているのかなと改めて感じました。
 
――アルゼンチンにいた時は、子どもたちとどのように触れ合っていたのですか?
 
片山 ぼくが直接話したのは9歳ぐらいの子で、それぞれ家庭環境が違いました。生まれた場所が貧しい地域の子もいれば、一般家庭の子もいます。どちらにも共通していたのは、自分の将来を具体的に答える姿。衝撃を受けました。9歳の子が「なんでサッカーしてるんだ?」って聞かれたら「サッカー選手になって親を助けたい。だから、ぼくはサッカーをやっている」と言うんですよ。
 
もちろん、その子が日本で生まれていたらサッカーに対しての考え方は違ったと思いますし、「サッカーで親を救う」とは言わなかったと思うんです。けど、そういう人間力というか、子どもとしてではなく1人の人間として見た時に、日本の子とアルゼンチンの子には、すごく大きな差があるなと感じました。
 
――スペインに2年間滞在されていた皆本選手は、どう感じましたか?
 
皆本 現地で指導はしていなかったですけど、イベントなんかで子どもたちに会う機会はあって。選手の息子であったり、応援に来てくれる子であったり。例えば、講演会に行くと日本人の子どもたちってなかなか手を挙げないんです。だけど、スペインの子どもはほぼ全員が挙げます。「おれに言わせろ!」「言いたい!」みたいな(笑)。そういう違いはすごく感じたし、彼らはそれが普通だから別に自分たちがすごいとは思ってない。僕は日本人の感覚を知っているから、「うわ、みんな挙げるんだ」と思ったけど、スペインの選手はそれに対して何も疑問に思わないんですよね。
 
逆に、スペインの選手が来日して、日本の子どもを教える機会があったときは、日本の子どもたちはピッと綺麗に並んでるんですよね。僕らからしたら、元スペイン代表の選手と日本代表の選手が来たと言ったら、キチンと並ばせて「さあ、お願いします!」というような姿勢を見せるのが普通ですよね。だけど、スペインの選手にとってはすごく新鮮だったみたいです。「日本人はすごく教育されているな」と言ってました。スペイン人は無秩序というか、「おれがおれが」という感じですから。「集まれ」って言っても集まらない、「並べ」って言っても並ばない。
 
――スペインの子たちって、どういうことを聞いてくるんですか?
 
皆本 もう何でも聞いてきます。それこそすごく些細なしょうもないことでも(笑)。「サッカーのチームはどこが好きか?」って聞かれて、「バルセロナだよ」って答えたら「ああ、もうお前とは仲間じゃない」みたいなやりとりもありました(笑)。子どもですらそんな感じなんです。自分のような大人に対しても、「おれはレアルマドリードが好きだ。お前とは仲間じゃない」って言う。
 
――日本だと「ちょっと、しつけがなってないんじゃない?」と言われてしまう態度ですね(笑)。
 
皆本 そうですね。良いか悪いかは別として、それがスペインの普通なんですよ。
 
――意見を言うことが良いとされているから、つまらない質問をしたところで誰も何も言わない。「つまらないこと言っちゃった」と気にすることもない。
 
片山 大人相手でも変わらないですね。子どもと話すときも大人と話すときも、自分の意見をきっちり言う。
 
皆本 一緒にサッカーやフットサルをやっていても違いを感じます。日本の子どもは、例えばぼくが子どもたちのゲームにひとり交じると子どもたちよりは上手いぼくに「頼む!」とばかりにパスを回してくれます。だけど、スペインで子どもたちに交じるとぼくなんかまったく関係なくて、「ヘイヘイ、パスパス!」と呼んでも全然パスが来ない(笑)。そこら辺のメンタリティというか、"普通"が違い過ぎますね。
 
ただ、良いか悪いかは別問題です。日本の教育にもいいところがたくさんあるし、海外の教育にもいいところがある。両方とも知っている人がうまく組み合わせて、両方の視点が持てるような人が増えてくるといいと思います。
 
――日本は、海外から取り入れる姿勢は積極的ですけど、二極論になりがちですね。どちらかといえば、「日本はダメだ」というメンタリティに流れやすい。
 
片山 外国人に対するコンプレックスが半端じゃないですから。外国人監督が来て何か言ったら、それが全部正解、全部OKってなる。でも、サッカーやフットサルは、選択したプレーが同じでも、状況によって正解の時もあれば不正解の時もある。そこの選別もできないように日本人は育ってきてしまっている。
 
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取材・構成/澤山大輔 写真/田丸由美子

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