考える力
3年連続でCLを制したスペインサッカーの強さの秘密!小学生から"考える力とスピード"を育てる理由とは
公開:2016年5月31日 更新:2020年3月24日
5月29日に行われた欧州チャンピオンズリーグ決勝、レアル・マドリー対アトレティコ・マドリー。試合はPK戦の末、レアルが11度目の欧州王者に輝きました。スペイン勢同士の対決となった決勝戦を、スペイン・バルセロナに拠点を構え、世界中で選手の指導、コンサルティングを行っているサッカーサービスのフリアンコーチはどう見たのでしょうか? 今大会でドイツやイタリア、イングランドなどの強豪チームを軒並み退けたスペイン勢の強さの秘密とは? サッカー少年のお父さんお母さんも必見の内容です。(取材・構成 鈴木智之)
■C・ロナウドとベイルを自由にさせなかったアトレティコの守備
試合の話をする前に、PK戦まで死力を尽くして戦った両チームの選手たちを讃えたいと思います。決勝戦というのは、非常に難しい試合になります。この試合においても、両チームのコンセプトを見出すことが困難な試合でした。というのも120分を通して、両チームともプレーが安定していなかったからです。レアルの攻撃は個人の突破に頼る場面が多く、アトレティコの得意のカウンター攻撃も鳴りを潜めたままでした。
レアルの攻撃が単発に終わったのは、選手個々のコンディションに依るところも大きいと思いますが、アトレティコの守備が光ったからでもあります。おそらくシメオネ監督は、C・ロナウドとベイルにボールを入れさせない、あるいはボールが入ったときに自由にプレーさせないために、激しくプレスをかけるように指示をしていたのでしょう。彼らの突破を阻止するために、アトレティコの選手はファウルも辞さない構えで対応していました。
レアルの先制ゴールの場面に、それは現れています。クロースが蹴ったフリーキックは、ベイルに対するファウルで得たものでした。ベイルがゴールから遠い位置で背中を向けているにも関わらず、ファンフランは激しく寄せてファウルをしています。これは「C・ロナウドとベイルには、激しくプレスをかける」という意図のもとに行われたプレーだと思います。
■どこまで相手をマークし、どのタイミングでマークを離せばいいか
セットプレーで失点したアトレティコでしたが、それ以外の守備はよく機能していたと思います。こと守備に関しては、レアルよりもアトレティコの方がクオリティは上でした。たとえば、アトレティコが持つ守備のコンセプトに『背後のスペースを守る』というものがあります。C・ロナウドもベイルも、アトレティコの最終ラインの裏に抜けてボールを受けた場面は、ほとんどありませんでした。
それはチームとしての戦術だけでなく、選手個々の守備戦術が高いレベルにあるからとも言えます。たとえば、右サイドバックのファンフラン。彼は「どこまで相手をマークし、どのタイミングでマークを離せばいいか」という判断に長けています。たとえば、C・ロナウドが左サイドからゴール前へ、斜めに抜けてパスを受けようとします。そのときに、最終ラインの手前まではついて行くのですが、「C・ロナウドへのパスは出てこない」と判断すると、マークを外して最終ラインに戻ります。一見、地味なプレーに見えますが、DFとしては非常に重要なコンセプトです。
なぜかというと、パスが出てこないのにマークを続けてしまうと、最終ラインを下げることになるからです。オフサイドトラップをかけることもできません。結果、ゴール前に相手チームの選手(ベンゼマやベイル)がつかうスペースを与えることになります。これは非常に重要なコンセプトで、われわれサッカーサービスでは13歳までに身に付けるべき守備戦術として、スクールやキャンプで日本の選手たちに指導しています。
さらにもうひとつ、守備の重要なコンセプトがあります。それは「ゴール前ではボールだけを見るのではなく、スペースと人も見る」というものです。それが現れていたのが、カラスコの同点ゴールの場面です。
ファンフランが右サイドの高い位置でクロスを入れたとき、ファーサイドでカラスコのマークについていたのは、L・バスケスでした。彼はクロスが入る前はカラスコの位置を見ていましたが、クロスが入った瞬間にボールだけを見てしまい、カラスコに背後をとられ見失い、シュートを決められてしまいました。
この場面でL・バスケスはボールだけを見るのではなく、カラスコの進行方向を塞ぐ位置をとるか、身体を近づけてシュートを打たせないようにすることが必要でした。これも守備の個人戦術で、我々は13歳までに身につけるべき重要なプレーだと考えています。
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取材・構成 鈴木智之