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考える力

あなたの「子どものために」は、本当に子どものためになっていますか?

公開:2016年8月16日 更新:2021年1月27日

「なんでうちの子は、こんなこともできないのだろう……」
 
お子さんのサッカーのプレーや、日常生活の様子をみていて、そのように感じたことはありませんか?
 
そこで一度、立ち止まって考えてみてください。
 
わたしたち大人にとっての“こんなこと”は、子どもにとっては“難しいこと”なのかもしれません。(取材・文 中野吉之伴)
 
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■子どもの“年代別特性”を知らなければ「子どものために」なることはできない

「子どもののために」という思いは、彼らと向き合ううえで欠かせない大切なものですが、同時に「こどものために」という言葉はとても便利であり、この言葉をつけてさえしゃべれば、すべてが美談のように聞こえる危険なものでもあります。
 
一時代前にどの業界でも常識だった「練習中は水を飲んではいけない」「どんなに暑くてもトレーニングを続ける」「負けたら罰走」という暗黙の了解も、元をたどれば「厳しい状況に身を置くことで、苦難に耐え抜く心を鍛える」という訓練術の一つであり、それをやり遂げることが「こどものため」だと信じて疑われなかったからこそ行われてきたわけだし、浸透しきっていました。辛抱強く物事に取り組み、難関を乗り越える術を身に着けることは、生きていく上で非常に有用なことです。思い通りにいかないことと直面したときに、どのように気持ちをコントロールするかもとても大事なスキルとなります。
 
ただ、そうしたしごきをすることだけが練習の目的になってしまうと、子どもたちは耐え抜き方、しのぎ方だけを考えるようになり、それぞれの競技に必要な技術や戦術を最適な形で身につけることはできません。以前、『「気合が足らないから走れ」は間違い!~』というコラムを寄稿しましたが、“作り出された極限状態”でしか子どもたちを鍛えることができないというのは、残念ながら誤った認識と知識不足でしかありません。そのために可能性のかたまりだったはずの子どもたちがどれだけ多くつぶされてきたことでしょうか。
 
本当に「こどものために」なることをしたいのであれば、どんな性質と特性があり、どのように対処するべきかをしっかりと知らなければならないのです。
 

■言ったことがわからないのは“どうすればいいか”がわからないから

自分からミスをしようとする子どもなんて一人もいません。誰だっていいプレーがしたいし、なんとかしたいと思っています。でも、その“どうすればいいか”がわからないからミスを犯す。いわれた通りの動きができない選手を見るとつい言葉が口から出てきてしまうことがあります。
 
「さっき言ったばかりじゃないか!!」
「何回言ったらわかるんだ!!」
 
同じことを何度も言うのは確かに骨の折れる作業です。私にしてもガクッと来ることは何度もあります。だけどそこで大人は踏みとどまらなければなりません。
 
私は一時期フライブルク大学に籍を置いていたことがあります。最終的に単位がまったく足らずに卒業はできませんでしたが、当時はサッカーの指導に直接関係あることではなく、幅広い見地を身につけたいと哲学や心理学の授業に数多く顔を出していました。
 
ある日、認知心理学の授業で次のような一節を聞いたことがあります。
 
「言った」というのは、相手が「聞いた」ということにはならない。
「聞いた」というのは、「理解した」ことにならない。
「理解した」というのは、「納得した」ということにならない。
「納得した」というのは、「把握した」ということにならない。
「把握した」といいうのは、「動ける」ということにはならない。
 
人は主観的に物事をとらえてしまうものです。自分がなにかを言えば、それは必然的に相手に聞いてもらったとイコールに考えがちです。だけど、そう簡単にコミュニケーションが成立するわけではない。「言った」ことは相手に「聞いて」もらわないと届かないし、「聞いて」もらっても「理解して」もらえなければ伝わらない。伝わってもこちらのイメージ通りに伝わったかはまた次元のちがう話。これは大人同士の会話でも普通に起こることではありませんか?そう考えると、言った通りのことをそのイメージ通りにやるのは非常に高度なことなのだというのがわかると思います。様々なところで経験を積む段階のこどもたちが他から考えを聞き、理解し、そのことを踏襲して、自分の動きに反映させるには相当の時間が必要だと知らなければなりません。
 
では、こどもたちはどのように段階を経て成長していくのか。そうした年代別の特徴と性質を把握することはこどもたちと接するうえで大きな助けとなるはずです。例えば小学校低学年のこどもたちには常に動き回っていたい衝動があります。もちろん、彼らにしてもいつどこでどのようにふるまうかを学んでいかなければなりませんが、だからと言っていつも頭ごなしに口を閉ざし、動きを抑えることを強制すると、不必要に大きなストレスがかかり、その負担は知らず知らずのうちに心身の成長に良からぬ影響を及ぼすことがあります。
 
次ページ:年代ごとに習得すべきサッカーのスキル要素
 

 
 
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取材・文 中野吉之伴

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