■10歳になると大人のサッカーに近づく
もう少し大きくなって小学3、4年生になると、子どもたちは「スポーツとしてのサッカー」として、できる限り憧れのプロと近い環境でのプレーを望むようになってきます。ドイツであればこの年代からリーグ戦を戦い、ホーム&アウェーを体験し、少しずつ大人のサッカーに近づくように環境を整えていきます。トレーニングでも試合に向けて少しずつ考えるようになり、正確さに加えスピードを求めたり、1対1での激しさを要求します。彼らも競争への強い関心を示すので、それだけに「怖がることなく勇敢に勝負を仕掛け、相手との駆け引きで優位に立つ」という攻守における1対1でのベースづくりに最適な年代です。
ただし、やりすぎは禁物。あくまでもこの年代の子どもたちにふさわしいオーガナイズでなければなりません。練習でも試合でも、ピッチにいる子どもたちが頻繁にボールにかかわれないサイズや人数はNG。また大人からの「ダメだ!こうじゃなきゃいけない」という強制や追い込みはプレーを縮こませる危険性もはらんでいる点には気を付けなければなりません。失敗を恐れる理由はどこにもない。皆さんもご存知かもしれませんが、伝説のNBAプレーヤーであるマイケル・ジョーダンの有名なセリフがあります。
「私はこれまで9000回以上シュートを外し、300回以上試合に敗れた。決勝シュートを任されて、26回も外してきた。何度も、何度も失敗してきた。だから私はここまでたどり着けたんだ」
失敗を何度も繰り返し、悔しさややりきれなさでつぶれそうになっても、そこから立ち上がり、意思を持って挑戦すればするほど、人は成長をすることができるのであり、そのためのサポートをするのが大人の役割なのです。
■12歳になるとグループ戦術も徐々に理解
小学5、6年生になると、思考力も高まり、ある程度は集中力の持続も可能となることで、より戦術的なアプローチができるようになります。理想としては攻守における個人戦術をしっかりと抑えた上で、グループ戦術にも少しずつ力を入れていきたい。攻撃であればワンツーパス、オーバーラップ、ポストプレーといった基礎的なところから、幅と深みのあるポジショニングを意図的にとれるようにようになって欲しいし、また守備では2対2や3対3という数的同数から、3対2や2対3のような数て裕理・数的不利の局面でのそれぞれの動き方を知るところまではやっておくべき。そして「個人戦術=1対1の局面」 とだけで結ばずに、複数の選択肢がある中で「いつ」「どこで」「どのように」「どんなプレー」を選択すべきかを深めたい年代です。
そして育成年代を語るうえで絶対に忘れてはならないのは、子どもの成長には個人差があるということです。今回ご紹介した年代別特徴や性質はあくまでもスタンダードなガイドラインであり、その枠にはめ込むこともまた愚かというものです。皆さんもご存じのように、早熟の選手と遅咲きの選手がいます。すでにできることを「まだこの年代だから」という理由だけでやらなければならないのはやはり退屈だし、逆に「この年代だからもうこのくらいはできるでしょ」という決めつけもよくないわけです。それに誰もが小学1年生からサッカーを始めるわけではないし、途中から入ってくる子だってたくさんいるわけです。
子どもたち一人ひとりが今どの段階にいて、何ができて、何が欠けているのか。それを把握することができるのは一番身近にいるチームの指導者であり、両親のはず。その子自身を見てあげてください。「あの子と比べてうちの子は」ではなく、「3か月前と比べてここがよくなった」という視点こそが、子どもの成長に欠かせないものなのです。
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取材・文 中野吉之伴