■「伸びる選手の保護者」の傾向
日常的にビッグクラブの下部組織でプレーする選手の保護者を目にする機会がある坪井さんだからこそ、経験則で「伸びる選手の保護者」の傾向が見えると言います。
「私の見解、指導者目線でいうと、家庭ではそこまで選手にプレッシャーをかけない保護者、ある程度選手へのリスペクトを持って家庭ではサッカーと生活を切り離した環境を作っている親の方が選手は伸びていきます。その中でもいい選手の親は『応援すること』と『介入すること』の違いがわかっています」
スペインでは街クラブであっても監督を評価する立場のコーディネーターのポストが存在し、通常シーズン開幕時にどのクラブも保護者に対して「相談やクレームは監督ではなく、コーディネーターにするように」というアナウンスを行います。
事前にそうしたアナウンスがあった中でもスペインでは自分の子どもの起用法に不満を持つ親が監督やコーチに直談判するようなケースが発生したり、坪井さんが経験したように観客であるはずの親が試合に介入する事態がよく起こります。そういう時に監督やクラブが厳格な対処ができるかどうかというのも、選手を預かるクラブ、監督の仕事であり、「そのマネージメントの仕方はスペインで監督をする上ではとても大切です」と坪井さんは話します。
■過度なプレッシャーは成長を止めかねない
応援と介入の違いを頭ではわかっていても、つい試合中に感情的な言葉を発したり、帰宅する車の中で子どもに対して監督が行うようなサッカー的指示を与えてしまう保護者はスペインのみならず日本にも存在することでしょう。そうした保護者に対して坪井さんはこのようなアドバイスを送ります。
「親として子どもにいい選手になってもらうためにいろいろなサポートをしよう、というのはもちろんあると思います。その気持ちがないと、お子さんの十分な成長はありませんから、それは大切です。ただ、私の中で一番大切だと思うことは、保護者が選手、指導者に対してリスペクトを持つことです。『リスペクトすること』とは現場のことは選手とクラブに一任するということです。実際、リスペクトを持って子どもを応援できる保護者の子どもは総じていいパフォーマンスを発揮していると思います。特に日本の子供たちは自分の意見を述べることが苦手ですから、親が家庭で過度なプレッシャーをかけてしまえば子供の成長を止めてしまいかねません」
坪井さんが冒頭で話したように日本の保護者は総じてスペインよりも我慢が効き、しっかりと子どものプレーや成長を見守ることができています。ただ、子どもとの会話や接し方を振り返った時、些細な介入があるとお感じになる保護者も少なくないのではないでしょうか。今回の坪井さんの話しを機に、改めて応援と介入の違いを考えてもらい、国に限らず「伸びる選手の保護者」には同じ傾向があることを理解してもらいたいと思います。
サッカー少年の子育てに役立つ最新記事が届く!サカイクメルマガに登録しよう!
文:小澤一郎