■どんな大人になってほしいかを考え、クラブを選ぶ
石川代表は、「子どもたちが将来、最終的に行き着くのがサッカーでなくてもいいんです」と言います。
「サッカーが上手い子は、もしかしたらただサッカーが上手いだけの子になってしまうかもしれません。でも地域で力を付けて、大人になって広い分野で活躍する人間に育ってくれたら、それはクラブとして本当に嬉しいことです」
「クラブづくり=地域づくり」と考えるつくばFCから、京都サンガF.C.でプレーする湯澤聖人選手を始め、2016年に3人のJリーガーが誕生しました。彼らは、あの2006年の“芝生整備”を経験したメンバーです。
そうしたトップ選手を輩出した一方で、プロ選手の夢に届かなかった選手がその後、指導者としてクラブに携わっているケースもあります。
「クラブが選手を選ぶのではなく、クラブはあくまでも、選んでもらう立場です」
つくばFCはこれまで、各年代でセレクションを行ってきませんでした。
「人がたくさん集まったら、みんながプレーできるように場所を増やしてあげればいいし、上手い子やそうではない子がいても、一緒にプレーできるように工夫してあげたらいいんです」
“人財育成”に主眼を置き、「帰って来れるクラブ」を目指して続けてきた活動は、着実に実を結んでいると言えます。
つくばFCの事例は、あくまでも街クラブの一つの形です。皆さんの街にも、それぞれの思いを持ったクラブがあることでしょう。子どもを持つお父さんやお母さんは、子どもをどんなクラブに預けたいのか、子どもにどんなクラブでプレーしてほしいのか。そして、子どもにどんな大人になってほしいのか。子どもがサッカーばかにならないために、親は、きちんと吟味した上で、クラブを選ぶべきではないでしょうか。
次回は、育成年代で、実際につくばFCに通い、大人になってから指導者として戻って来た現役コーチ2人にお話を伺いながら、子どもがサッカーばかにならないための育成哲学について考えていきます。
石川 慎之助(いしかわ・しんのすけ)
1979年1月1日生。東京都出身。私立暁星高校から筑波大学へ進学。大学院進学を控えた2001年3月、蹴球部の部長からつくばFCの活動を託され、院生活動と並行してクラブ運営の道へ。2003年9月のNPO法人化、2005年3月の株式会社設立を経て、クラブに携わって16年目を迎えた2017年現在、総合型スポーツクラブとして1000名を超す会員の代表として、地域に根ざし、子どもたちの未来を考えたクラブづくりを続けている。
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文・写真:本田好伸