■全力で試合をしないと練習の効果も薄まる
効果的にリーグ戦を運営するには、グラウンド確保、移籍ルールの徹底など、様々な事柄が絡み合ってきます。その中でも幸野さんはベーシックなレギュレーションを、次のように提案します。
「理想的なのは1部、2部、3部と実力に合わせてチームをカテゴリー分けし、1ブロックあたり16チームで戦う通年リーグを行うこと。ホーム&アウェイで年間30試合を戦い、練習試合やトーナメント方式のカップ戦を10~14試合程度。1年のうち10ヶ月はリーグ戦、1ヶ月はその他の試合、そして1ヶ月はオフにします」
「現状、育成年代のスケジュールは『この試合に勝てば来週も試合がある、一方で負ければ終わり』といったように、トーナメント形式が主体だと、スケジュールが立てづらいんです。子ども達も家族と過ごす時間は必要ですし、指導者も勉強やリフレッシュのためにオフは必要。1年通したリーグ戦を整備すれば、それらの問題も解決することができます」
幸野さんはプレミアリーグU-11の運営責任者もしていますが「できれば試合は1日1試合にして、その試合にすべての力を出し尽くす環境を作りたい」と言います。
「1日に3試合もあると、子どもたちは余力を残して試合をします。当然のことですよね。でも、サッカーは瞬間的なパワーやスピードが求められるスポーツなので、常に100%の力で臨まないと、トレーニングの効果も薄まってしまうんです」
■現在の育成が本当に強化になるのか考えなければならない
さらに、こう続けます。
「グラウンド確保の都合や多数の選手を抱えているチームは、1日1試合だと都合が悪いこともありますが、その場合はチームの複数登録を認めるなどして、すべての選手たちがレベルの合った相手と、毎週末試合をする。そこでできたこと、できなかったことを振り返り、次の試合に向けてトレーニングをしていく。そのサイクルができれば、極端な話、僕ら指導者がいなくても、子どもたちは自ら学ぼうとし、真剣に取り組むんですよ」
(幸野さんは育成、強化について真剣に考えなければいけないと語った)
2回に渡って取り上げた、幸野さんの提言はいかがだったでしょうか。
「ここで私が言っていることは、私が考えたすごい意見ではなく、ヨーロッパの人たちが100年の歴史から作り上げて、最適だと導き出した答えです。ヨーロッパでは当たり前のように、この考えでリーグ戦が行われています」
「日本の育成年代は、日程やグラウンドの都合でトーナメント形式や短期決戦の試合ばかりでいいのか。現状のような、いきあたりばったりの試合形式が子どもたちの育成、強化になるのか。それを我々運営側の大人が、真剣に考えなければいけない時期に来ていると思います」
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文:鈴木智之