■「なぜそこにボールが行くか」ドイツの理論的な指導
「もっと試合の流れを読め!」
こんな言葉を聞いたり、言ったりしたことがある方は多いと思われます。では試合で起こりうる現象を「予測」するためには、どうすればいいのでしょうか。試合の流れを読むためにはサッカー構造を理解することが必要になります。
自分たちがボールを持っているとき、相手チームがボールを持っているとき、そしてルーズボールになったり、攻守が入れ替わるときにそれぞれ気を付けるべきことが整理されてなければなりません。
ドイツサッカー連盟では「勘ではなく、予測に基づいたプレー」という言い方でアプローチしています。つまり「なんとなくそんな気がする」というあいまいなものだけを根拠にするのではなく、なぜそうした状況になりえるのかという論理的な根拠を持てるように導こうとしているのです。
(写真は少年サッカーのイメージです)
例えば、「味方選手がシュートを打ったらこぼれてくるかもしれないから必ずつめろ」と言いますよね。確かにプロサッカーの試合でもこうしたシーンは多く見られます。では「どこにこぼれてくるだろう?」というのは、勘任せにしかできないものでしょうか。
完全にGKと1対1だったら、シュートを打つ選手はGKとの駆け引きに最大限気を配るべきです。でも、相手DFと競り合いながらとか、角度のないところからシュートという状況だったら、もちろん決めるつもりでシュートを狙いながらも、「GKがはじいたり、そのまま味方へのパスになるような低く強いシュートをファーポストへ狙う」という原則がわかっていれば、味方選手は必然的にそこを狙って動き出すことができます。
■試合でよく起きるプレーをトレーニングに取り入れる
このように様々な状況に応じた戦術的・戦略的「マスターパターン」を少しずつ身につけていくことで、やるべきプレーにスムーズに移ることができるようになります。そしてマスタープランは再現性の高いプレーに関することが大切です。1試合で起こりやすい現象をトレーニングで取り組むことで、経験を積み重ねやすい環境を作る。
一つ気をつけなければならないのは、マスタープランとは「こういう時はこう」というパターン通りにするだけでなく、前述のキミッヒのように、相手の動きに応じて直前でほかの選択肢に修正できるようになるのも非常に大切だということです。いくつかの選択肢を持ちながらできるプレー、選択肢を作り出せるプレー、選択肢が限られたプレーをしっかり分けて考えたいものです。
小さいうちは戦術は必要ない? そんなことはありません。むしろ始めたばかりだからこそ、サッカー構造へのヒントが大切なのではないでしょうか。
どんなゲームでもまずは取扱説明書を読んで、それを知るところから始まるはず。子どもたちを団子サッカーにならないために広がらせるのではなく、広がることでプレーしやすくなる可能性が生まれることを伝えるのが大事なのです。
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文:中野吉之伴