考える力
ストレスに弱いのは指導者のせい!? 青森山田高校・黒田剛流「戦える選手」の育てかた
公開:2018年6月 7日
■頑張り屋さんと努力家の違い
――頑張り屋さんと努力家の違いはなんでしょうか?
前回のお話でも説明しましたが、自分の得意なことや、好きなことに対しては、時間を惜しまず一生懸命に取り組むのが「頑張り屋さん」です。逆に苦手なことにしっかりと向き合い、克服するために多くの時間を費やすのが「努力家」です。人間誰しも、得意なこと、自分の武器を伸ばす方が楽しいんですよ。もちろんそれも大切なのですが、上のレベルや世界に出ると、その武器を一瞬にしてつぶすことのできる能力を持った選手はたくさんいます。
自分の武器が通用しなくなったときに、それ以外のことができなければ、そこで終わってしまいますよね。スキルアベレージを隙なく強化していくことが最も大切だと言えます。
(青森山田高校の学び舎と2016年の2冠を称えた石碑)
――たしかに、そのとおりです。
努力というのは、自分ができないこと、弱点に目を向けて向上させること。足が遅ければ少しでも速くする。左足で蹴ることができなければ、蹴れるようになるまで取り組む。そうすることによって、得意な右足がさらに活きてきます。
そうやって選手としてのアベレージの数値を、高校サッカーレベルなのか、日本レベル、世界レベルなのかと見据えてやっていくこと。できないことに取り組むことって、凄いストレスですよね。平凡なサッカー選手は苦手な部分を得意な技術でカバーして、上手くできることだけをしておきたいもの。
でも、自分ができることが通用しない世界があり、そのようなレベルの相手と戦うことになるのです。うちでプロになった選手、高校生になってから、Jクラブのユースから転校して来た選手は、そこと向き合って克服したいという気持ちを持っていますし、自分にないもの、足りないものを求めて青森山田に来ます。みんな大きな成長を遂げて巣立っていきますね。(笑)
育成現場の最前線で戦い、結果を出し続けている黒田監督。高校年代のタイトル獲得とプロ輩出を毎年のように実現している指揮官の言葉には、強い説得力があります。
わが子を伸ばし、社会で生きていく力をつけるためにも、子ども自身が挑戦し、壁にぶつかって乗り越える経験を積むことが大事で、親は見守り信じ続けることが何よりの教育なのではないでしょうか。子どもを伸ばす保護者の接し方、サッカー以外の能力を伸ばすことが、サッカーの上達につながること。
みなさんも黒田監督の考えをぜひ参考になさってください。
<<前編:「今のままじゃW杯に出るのは無理」柴崎岳が変わるきっかけとなった黒田監督の言葉
黒田剛(くろだ・ごう)/青森山田高校サッカー部監督
北海道札幌市生まれ。
大学卒業後、ホテルマン、公立高校教諭の経験を経て、94年に青森山田高校サッカー部コーチ、翌年、監督に就任。
青森県内公式戦(高校総体、選手権、新人戦)329連勝中。全国高校総合体育大会サッカー競技、18年連続出場中(2017年現在)
勝つための独自の育成哲学を持ち、数多くの名選手を輩出している。
サカイクキャンプ2018夏