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子どもの試合はワールドカップではない!勝ち負けを意識し過ぎる大人に送る5つのメッセージ

公開:2018年6月25日 更新:2018年7月19日

キーワード:ドイツルール応援観戦

ジュニア年代の試合会場で時折耳にするのが、親から子どもへのオーバーコーチングです。「もっとよく見て!」や「パス!パス!」など技術、判断に関するものから「なにやってんの!」「しっかりやれ!」といった、ネガティブな声掛けを聞くこともあります。

ついつい親が熱くなってしまうのは仕方がないことかもしれませんが、言われた側からすると「なんだよ、うるさいなぁ」という気持ちになってしまうのも事実です。ミスを指摘されることで、気持ちが後ろ向きになり、プレーも消極的になり、さらにミスをするという"負のスパイラル"に陥ることもあります。

サッカー経験のある人なら理解しやすいと思いますが、プレー中にピッチの外からああだこうだと言われると、そちらに気になってしまい、自分のプレーに集中するのは難しいですよね。このように、子どものプレーに熱くなりすぎてしまう親は、知らずしらず子どもに悪い影響を及ぼしているかもしれません。。。

では具体的にどのように改善すればよいのでしょうか。そのヒントになるドイツでの取り組みをご紹介します。(取材・文 鈴木智之 写真 坂本健二)

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■親の過剰な声掛けを抑制したドイツの取り組み

今回お話を伺った坂本健二さんは1998年から16年間、ドイツ・ブンデスリーガのブレーメンや、バイエルン州のクラブを中心にU7~U19までの監督やコーチ、アカデミーダイレクター(地域クラブの育成統括責任者)を務めました。

坂本さんが指導をしていたバイエルン州では、ある取り組みを通じて、親のオーバーコーチングを減らしたそうです。それが「順位表の廃止」です。坂本さんは次のように説明します。

「ドイツも日本と同じように少子化が進み、ひとりの子どもに対して、親がすごく注目し熱意を注ぐようになっています。サッカーにおいても、自分の子どもの試合中、『もっとちゃんとパスを出しなさい!』とフィールド脇から大声で指示を出したり、あるときは、自分の子どもにでなく同じチーム内のよその子どもに対しても罵声に近い言葉を浴びせてしまっていることもありました」

情熱がほとばしった結果、迷惑と紙一重の行動をとる親の態度を改善するために、2007/2008シーズンからバイエルン州サッカー協会では、U7とU9の年代において、リーグ戦の順位表を掲載するのを止めたそうです。これは、試合の勝敗に対してヒートアップする親を抑制する意味がありました。

「最初のころは、自前で順位表を作り『うちのチームが1位じゃないの?』と言っている親もいましたが、順位表がなくなったことで、結果に対して過剰に目が行くことはなくなったのではないかと思います。それでもまだ、試合中、子どもに対してきつい言葉をかける親もいましたが、私以外にもアカデミーダイレクターが『そういうのは止めようって言わなかったっけ?』と話し掛けてくれて、はっと気づいて『ごめんなさい。そうだったわね』と省みて、言わなくなってくれたこともありました」

 

■ドイツのグラウンド脇に貼られたメッセージ

勝ち負けに意識が行き過ぎると、ミスを許容できなくなります。失点につながるミスであれば、なおさらです。しかし、6歳から8歳のときに必要なのは、目先の試合の勝ち負けではなく、サッカーを楽しみ、学ぶことで上達していくこと。勝負にこだわることと結果を最優先に考えることは、似ているようで異なります。サッカーを始めたばかりの頃は、ミスを繰り返すことで正しい動きや判断を身につけていき、上達していきます。とくにジュニア年代において、グラウンドで見るべきは試合に勝った、負けたではなく、何を学んだか。そして一番大切なのは、サッカーを楽しんだかです。

坂本さんは、ドイツのあるグラウンドの脇に貼られていた標語を見せてくれました。そこには、次の言葉が書かれていました。

  1. これは子どもたちの試合です。
  2. これは単なるゲームです。
  3. コーチたちは皆、ボランティアです。
  4. 審判も同じ人間です。
  5. この試合はワールドカップの試合ではありません。

「この標語は、バイエルン州サッカー協会やドイツサッカー協会がホームページを通じて行ったキャンペーンと同じ主旨のものです。『叫ぶな』『怒鳴るな』『子どもを怯えさせるな』と上から目線で言うと、『いいじゃないか、自分の子どもなんだから』と言い返したくなりますが、『なぜだめなのか』という理由を説明すると、納得しますよね。親が見たいのは子どもの笑顔であり、活躍する姿です。それは指導者も同じで、本来、親とコーチの目的は一緒のはずですよね

サッカーを始めたばかりの頃は、目先の試合の結果以外にも、大切なことがあるはずです。そこに目を向ける人が増えることが、結果として「子どもたちがうまくなる環境づくり」につながり、ひいては子どもたちの成長につながるのではないでしょうか。

※この記事は2016年2月に掲載した記事を再編集したものです。

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取材・文/鈴木智之 写真/坂本健二

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