考える力
「一人ひとりに合った閃きのヒントを」森岡亮太を輩出した公立高校サッカー部監督が行う自主性の引き出し方
公開:2018年8月21日
■成長とは頑固な部分を持ちながらも変わって行くこと
選手それぞれのキャラクターに応じて、叱り方を変えるのも松本監督ならではでしょう。萎縮する選手に対しては強く言いませんが、言っても動じない選手に対して、「もっと積極的にプレーしなさい。なぜパスをするんだ」と強く言うこともあります。カッとしやすい選手に対しては、「笑顔! 笑顔!」と柔らかさを前面に出して伝えることで、リラックスした状態を引き出します。
久御山高校サッカー部(C)森田将義
ポジションによっても声のかけ方は違い、得点が求められるFWは、ミスを恐れて消極的なプレーをしていてはいけません。「10回勝負して、1点に絡むことが出来れば十分。皆がお前に勝負をしろとボールを託してくれているのに、なぜパスを選ぶんだと怒ることはあります」。自由なイメージが強い久御山ですが、人に迷惑をかけることに対しては、きつく叱るなど要所をきっちり締めるからこそ長きに渡って、魅力的な選手が出てくるのかもしれません。
こうした松本監督の哲学は、試行錯誤をしながら、培った物です。ベースとなる子どもたちへの愛情は人一倍強く、「子どもを一番見ているのは自分だという自負がある。指導者も試合で負けたりすると自信を無くす時があるけど、彼らを一番見ているのは俺だから責任があるし、俺がこの子たちを信じないんでどうするんだと奮い立たせる。逆のことも言えて、子どもたちに信じてもらえるようにグラウンドに出ていく」という言葉からは、指導者として先生としての矜持が感じられます。
久御山には、「キミは君らしく」というキャッチフレーズがあります。片仮名のキミから漢字の君へと変化するのは、君らしさを大事にしながら様々な物事を学びながら変化していく、成長していくんだという意味が込められています。
「変化しないと成長できないけど、自分らしく頑固な部分も持っておかないといけない。久御山にとって頑固な部分は上手さだし、負ける時はかっこよく負けたい」
そう話す松本監督は来年3月に60歳となり定年を迎えるため、今年が久御山高校の監督として過ごすラストイヤーですが、松本監督自身も指導者として、先生としての成長を今なお求め続けています。
サカイクキャンプでもコーチたちは、それぞれの子どもをよく見てキャラクターに合わせた声かけをすることで子どもたちの主体性を引き出しています。サッカーの指導だけではなく、集団活動のマナーや振る舞い、相手への気遣いなど、大人に言われなくても自分で気付けるきっかけを与えてくれるプログラムとなっています。
非日常環境で、親と離れて過ごす数日間がお子さんを変えます。大好きなサッカーをもっと楽しんで、準備を自分でやったり自立の一歩を踏み出す機会ですので、お子さんの成長を願うならぜひ参加してみませんか。また、子どもが自分で考えようとしているのに、親御さんが回答を待てずに誘導しては子どもが考えることを辞めてしまいます。松本監督の言葉にもありますが「我慢も大事」なのです。もどかしい、と思うこともあるかもしれませんが少しだけグッとこらえてお子さんの言葉を待ってみましょう。
<<前編:「教科書には載ってない」情報こそが大事 恩師が語る森岡亮太の成長の原動力
松本悟(まつもと・さとる)/久御山高校サッカー部監督
京都市出身。大学卒業後、公立の久御山中学に配属され12年間勤務。同校を全国中学校サッカー大会3位に。1996年に久御山高校に異動となり今年で22年目。
高校サッカー選手権5度出場、第89回大会では準優勝、2015年の全国高校総体でベスト16という結果を残した。同校は、ボールを扱うテクニックや狭いスペースでのパス回し、ポゼッション重視のスタイルから「京都のバルサ」とも呼ばれている。