考える力
サッカーを始めるときに一緒にはじめたいサッカーノート、書くことが上達につながる理由とは?
公開:2021年3月 4日 更新:2021年4月27日
これからサッカーを始めようと思っている子には、シューズやウエアなどの道具の用意とともにサッカーノートも用意していただくことを勧めます。
少しサッカーが上達してからでもいいのでは? 低学年では早すぎない? と思っている方もいるかもしれませんが、サッカーノートは考える力をつけてくれるのでプレーの上達にもつながるのです。
サッカーノートはサッカーの上達をサポートするもので、元日本代表の中村俊輔選手や本田圭佑選手なども子どものころから書いていました。
サッカーノートをつけると、子どもにどんな変化があるのかを、サカイクサッカーノートの開発に携わったしつもんメンタルコーチの藤代圭一さんに話を聞いてみました。
(取材・文:前田陽子)
■サカイクサッカーノートは質問に答えるだけで、自然とサッカーがうまくなる
サッカーは自分でその場その場で考え、最善のプレイを選んでそれを実行するスポーツ。監督やコーチから「考えてプレイしろ」と言われることもたくさんあります。ですが、サッカーを始めたばかりで考える経験をしていない子どもにとって、ピッチで瞬時に考えてそれを表現するのは難しいものですよね。その練習のためにサッカーノートが役立ちます。
「真新しいノートを一冊用意して、さあ書いてみよう!と思っても、何を書いていいかわからないですよね。サカイクサッカーノートには、質問という形式で書く項目が配置されているので、それに答えるだけ。サッカーを始めたばかりで初めてのノートという子どもにおすすめです」と藤代さんは言います。
ノートは「どうしてサッカーをはじめましたか?」という質問から始まります。今の自分を書き出すページが用意されているのです。
「サッカーを続けていくと好きで始めたのに、いろいろと評価をされることが増え、誰かから良く思われたい、うまくならなければだめだという感情が生まれ、サッカーをつまらなく感じる子が出てきます。サッカーを好きという気持ちを忘れてしまうんですね。振り返ったときにサッカーを始めた時の新鮮な気持ちを思い出してもらいたいという思いを込めて、最初にこの質問を用意しました」と藤代さんが開発の意図を教えてくれました。
サッカーを続けていくと、先発に選ばれる、セレクションに受かるなど誰かに評価される場面も多くなり、サッカーが辛いと感じることも出てきます。ずっと続けるために"好き"は最強のモチベーション。その思いを忘れない工夫がされているのです。
■振り返りと目標設定はセットで。練習の質が向上し、技術面でも上達する
サッカーでは練習や試合ではたくさんの失敗と成功をします。練習や試合のたびにサッカーノートを使ってなぜ失敗したのか、どうして成功したのかを振り返ることを習慣化すると良いそうです。
振り返りをしないと今日は運がなかった、たまたまうまくいっただけで終わってしまい、悪かったプレイを繰り返し、良かったプレイも再現できません。結果、うまくいくこともあれば、うまくいかないこともあるというムラのある選手になってしまうのだと藤代さんは教えてくれました。
振り返りをすると、うまくいったことも含めて次に生かすことができます。また人は悪いことを指摘されると何もやりたくなくなりますが、うまくいったことを見つけられるとできなかったことにも目を向けることができるもの。
「適切な振り返りをすると気持ちに余裕が生まれ、視野が広がります。サカイクサッカーノートは最初にうまくいったことを探すことを質問として用意しているので、自然とその後に改善点にも気づけるはずです」と藤代さん。
練習や試合が終わったらサッカーノートを書いて、次の練習や試合の前にそのノートを見返す習慣が大事です。前回どんなチャレンジをしたのか、どこがうまくいって、何がダメだったのかを整理せずに練習や試合をしても、目的がないままになってしまいます。
練習や試合の課題を決めると集中力も高まり、やる気も出て、練習の質も高まり、いいプレイが出来るというサイクルが出来ます。そのためにどんな時にどんなことを感じたのかをノートを見て確認し、課題や目標を考えましょう。
サッカーノートを書くことで、思考の整理ができると同時に、自分のことがわかります。人は周りの人のことは知ろうとしますが、自分を知ろうとはなかなかしません。特に低学年の子どもでは、普段からご家庭でそのような習慣があればできるかもしれませんが、ほとんどの子はそういった意識はしていないでしょう。自分のことを客観的に振り返ることで頭の中が整理され、新たなチャレンジに向かうことができるようになるのです。
■完璧に記入しなくても大丈夫。三日坊主でも継続できればOK
練習や試合の後、毎回ノートに記入する習慣ができるのが理想です。そういう習慣になってほしいと願う親御さんも多いでしょう。
サッカーノートを使うことで自分がなりたい姿と現在のギャップを感じられ、自分がなりたい姿になるためにどうすればいいか考えて、努力することができます。ですが、ノートを書くことが子どもにとってやらされている、やらなければいけない事(=義務)になると続けられません。
「連続と継続は違います。親御さんは連続365日やってほしいと思っていると思いますが、1週間に3日しか書かないけれど、翌週また3日間と三日坊主を繰り返して、1年間続けられればそれでもいいと思います。子どもには日々新しい好奇心が芽生えていきます。その中でやるべき理由がよくわからないものを続けるのは無理なこと。完璧にやろうとせず、1日10分だけなどと時間を区切って、時間内に書けた分だけをやるのでも十分です」と藤代さんが続けるコツを教えてくれました。
時間を区切るのは、そうすることで「ここまで書こう」と言うよりゲーム性が生まれるためだそうです。10分間で書けたところまでとして良いのだとか。
1日目はたいして書けなくても、続けていくと書ける分量も増えていきます。時間を区切ると集中力もUPするそう。サカイクサッカーノートには、楽しく続けれるようにいろいろな工夫がされていますが、取り組み方にゲーム性を加えるとより継続しやすくなるということです。
楽しくサッカーを続けることが何より大切ですが、「何となく」続けるのと常に自分の現在地を知り、思考しながら続けるのでは、取り組みの深さもコーチの指示の理解も変わってくるもの。
いきなり真っ白いノートを渡しても、子どもたちが自ら書き出すのは難しいので、思考を引き出すガイドがたくさん仕掛けられたサカイクサッカーノートを使って、お子さんの上手くなりたいをサポートしてみませんか。
藤代圭一(ふじしろ・けいいち)
一般社団法人スポーツリレーションシップ協会代表理事。教えるのではなく問いかけることでやる気を引き出し、考える力を育む『しつもんメンタルトレーニング』を考案。全国優勝チームや日本代表選手など様々なジャンルのメンタルコーチをつとめる。2016年より全国各地に協会認定インストラクターを養成。その数は350名を超える。選手に「やらせる」のではなく「やりたくなる」動機付けを得意とする。新刊に「教えない指導」(東洋館出版)がある。
「教えない」指導とは? 子どもの主体的な学びを引き出すメソッドがつまった一冊
藤代圭一さんの著書「教えない指導―子どもの主体的な学びを引き出すしつもんメンタルトレーニング」発売中