身体の大きな外国人選手と競り合っても、びくともしない強い身体を手に入れるにはどんなトレーニングが効果的でしょう? 本田圭佑選手(ACミラン)のように、ディフェンスに身体をぶつけられても軸をぶらさず顔を上げて正確なパスを出すには? 長友佑都選手(インテル)のようにドリブルコースをふさがれてもスピードを緩めず、力強くオーバーラップするためには? こうした“身体の強さ”は、腕や足といった部分的な筋肉ではなく「体幹」つまり身体の幹になる中心部の使い方、鍛え方で身につくことが広く知られるようになってきました。
■スラックラインを知っていますか?
体幹、身体の核(コア)となる部分を鍛えるにはどんなトレーニングがあるのか? 体幹トレーニング、コアトレーニングは沢山ありますが、子どもたちが遊びながら、楽しく体幹を使う感覚を実感できるスポーツがあります。
「スラックライン」というスポーツをご存じでしょうか? 2000年代後半に競技として成立したばかりのニュースポーツなので、ご存じない方も多いかもしれませんが、まずはこの動画をご覧ください。
動画提供/GIBBON
動画は昨年のW杯の様子です。だいたいどんな競技なのかはわかっていただけたでしょう。
スラックラインは2007年にドイツで誕生した生まれたてのスポーツです。とはいえ、動画を見てもわかるように、原型は「綱渡り」。サッカーと同じように、古代文明にも見られる文化の中に昔からある遊びから生まれたスポーツです。この綱渡りにスラックラインの開発者である、ロバート・ケイディングさんが「ラインの幅は5センチ」「ラインを簡単に張るための器具、ラチェットをつける」などの決まりを設け、誰もが気軽に街中で遊べるようにしたのです。
スラックライン誕生の細かい背景は置いておくとして、近年、このスラックラインが多くのアスリートやスポーツジム、リハビリなどで注目を集めています。
■ソチ五輪でも注目! ジャンプの葛西紀明選手がトレーニングに導入
まもなく始まる冬の祭典、ソチ五輪に40歳代で出場するスキージャンプの葛西紀明選手がトレーニングに取り入れていることでも話題になりました。ラインの上で絶えずバランスをとるスラックラインは、空中姿勢を維持するのに体幹や微妙な筋肉の調整機能を強化しなければいけないジャンプ競技に最適なのだそうです。
このほかにも、同じソチ五輪に出場するアルペンスキーのフランスチームが導入していたり、他競技のトレーニング方法としても大きな注目を集めています。
「これは子どもたちのサッカーのトレーニングにも使える!」
というわけで、今回は日本のスラックラインの草分け的ライダー、日本オープンの初代王者でもある我妻吉信さんに、スラックラインの基本、サッカーに役立ちそうなトレーニング方法について、たっぷりお聞きしてきました。
前編の今回はスラックラインの基本姿勢、ラインへの乗り方についてお届けします。
取材・文/大塚一樹 写真提供/GIBBONR