体幹トレーニングにも最適なスラックラインを紹介しています。後編の今日は、応用編として、ラインの上に立つ、歩く、をマスターした人たち向けに軽い技をご紹介します。さらにサッカー経験もあるというプロライダー、我妻吉信さんが教えてくれる、子どもたちのサッカーに役立つエクササイズも特別にご紹介! 楽しみながら体幹を鍛えられるスラックラインの楽しみ方をさらに広げていきましょう。
■姿勢キープでもキツいのに……体幹が強くなるスラックラインの技
前回はバランスのとり方の基本を教えてもらいました。地味に見えますが、基本姿勢をキープしたり、ラインの上で歩くだけでも実は相当いろいろなところが鍛えられます。普段は使わない筋肉やその筋肉を調整する神経、バランス感覚などを総動員するため、あまり動いていないのに筋肉痛になる人もいるくらいです。また、常にまっすぐに立っていなければ身体を安定させられないため、力を出しやすい「正しい姿勢」が身につくことも大きなメリットでしょう。
さぁ、さらに体幹を鍛えるためにラインの上でちょっとした技をやってみましょう。
Drop knee ドロップニー
まずはラインの上でしゃがんでみましょう。これはスラックライン競技の中でも基本に分類されるダウン系の技です。しゃがみ込むだけですが、しっかり立っていた姿勢と同じ形でそのまま身体を下げてくるイメージでやらないと、すぐにラインから落ちてしまいます。目線や頭の位置を変えずに背筋を伸ばしたまましゃがむようにしましょう。
Foot plant フットプラント
そこからさらに足を伸ばしてみます。後ろの足(写真の場合は右足)は足の甲でラインに引っかけるようにしてバランスをとります。前の足がまっすぐに伸びきれば「フットプラント」という技になります。
前の足も後ろ足と同じようにラインに引っかけて「ダブルドロップニー」、そこからターンしてまた立ち上がるところまでくれば、技を組み合わせたトリックらしくなっていきます。
■サカイクオリジナル! サッカーに効くスラックライン活用術
こうなるとスラックラインはどんどん楽しくなってくるのですが、今回は、あくまでもサッカーのトレーニングとしてのご紹介ですので、サッカー経験もあるという我妻さんに考案してもらったスラックラインでできるサッカーエクササイズをご紹介しましょう。
Wobbly heading ウォブリー・ヘディング
Wobblyはグラグラするという意味。究極に不安定な足場でヘディングをしてみましょう。ニードロップからバランスを保ったままヘディング! 前からボールを投げてもらっていいですし、難易度は上がりますが、二人一組で向き合ってパス交換をしてもいいかもしれません。
「これ、実際にやってみるとすごく体幹を意識しないとできませんね」
いろいろな動きを試しながら考案してくれた我妻さんも「このヘディングはキツい」と言います。地面からの反力がない状態で軸がしっかりしていて、体幹をうまく使えていないとボールは前に飛びません。クリスチアーノ・ロナウドの背筋の伸びたヘディングのように「強いヘディングは首を振るのではなく背中全体を使う」という考え方もあります。トレーニングとして活用する場合はこうしてサッカーの動きに落とし込んでいくことも重要です。
■キック力強化! 股関節にも効くインサイドキック
One foot kick ワン・フット・キック
片足でラインの上に立ってインサイドキックでボールを蹴るイメージ。動作は“エア”でも身体の使い方はしっかりボールを蹴る動作に。
ビーチサッカーが足腰の鍛錬や正しいフォームの習得に役立つというのは、ビーチサッカー大国ブラジルではよく言われていることです。砂に足を取られるのはもちろんですが、不安定な足場でボールを蹴るには、砂の上にいる自分自身の身体からパワーを生み出せるフォームでボールを蹴らなければなりません。
スラックライン上でのキックも同じことが言えます。ぐらつかず、スムーズに足を前に出すことで、身体が自然に正しいフォームを探してくれます。また、バランスをとるために正しい姿勢をキープしようと筋肉が動くので、強いボールを蹴る筋肉が自然に鍛えられる効果もあります。
正面からボールを投げてもらって蹴り返してみればわかりますが、フォロースルーまできちんとした動きをしないとボールは前に返りません。安定した地面の上ではボールに力を加えれば前に転がっていきますが、ライン上では股関節をしっかり開いてボールを押し出す動きをしなればいけません。
こうした動きを身につければ、グラウンドに戻ったときにも意識する点が変わってくるはずです。
■体験はイベントやスポーツジムで!
五輪選手やアスリートたちのトレーニングにも活用されているスラックラインいかがだったでしょうか? 道具を揃えたり、安全に配慮したりする必要はありますが「綱渡り」という単純で奥深い“遊び”から生まれたスラックラインは子どもたちが楽しみながら取り組める面白いスポーツではないでしょうか。
まだまだ体験できる場は限られていますが、以前裸足のトレーニングを紹介してくれた(裸足が効く? 足裏を鍛えてスピードとキック力をアップ)日本スポーツ&ボディ・マイスター協会でもスラックラインの体験会などを実施しているそうなので、興味がある人はチェックしてみてください。
もちろんスラックラックやラチェットを購入して練習に、お父さんやお母さんのダイエット健康作りに取り入れることもできます。詳細はスラックラインメーカーのGIBBONでもイベントなどの予定をチェックできます。
■教えてくれた人
我妻吉信 ライダーネーム:Az-can
ギボンスラックライン・プロライダー
第1回日本オープンスラックラインチャンピオンシップ優勝など、スラックライン草創期から活躍するライダー。2010ワールドチャンピオンシップ6位、ギボンワールドカップ ツアー 総合7位。
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取材・文/大塚一樹 写真提供/GIBBONR