おうちで簡単に栄養管理、体調管理ができる『ごはんポイント』はもう覚えていただけましたか? そんなの知らないという方はぜひ第1回目をご覧ください。
さて、2回目の今日は、引き続きごはんポイントの生みの親であるWACアカデミーチームサポート事業部ヘッドコーチで栄養管理士の村越智行さんのお話を伺いながら、もう少し踏み込んで、普段の生活や試合への準備について学んでいきましょう。
■ごはんポイント+早寝早起きで普段の生活も練習に!
「ごはんポイントが炭水化物を意識することで食事のバランス、栄養のバランスを整えていくものだと言うことは前回お話した通りです。これと同じように、ごはんポイントを意識して生活をしていると体重や規則正しい食事を心がけるようになり、生活のリズムが整ってくるのです」
たしかに朝、昼、晩と決まった時間に規則正しく食事をとる生活をしていれば、それだけで生活のリズムは一定になりますよね。村越さんたちが行っているごはんポイントを使ったチームサポートの食事指導では、これに運動前、運動後の補食を推奨していますから、サッカーを一生懸命プレーしている子どもたちは、食事から普段の生活のペースが作れるようになります。
「ごはんポイントが足りないからもう少し炭水化物を! と子どもたちやお母さんが意識することで食卓に並ぶメニューも変わってきますよね。それと同じように、朝ご飯をしっかり食べようと思えば早く起きる。早く起きるためには早く寝る。早く寝るためにはあまり遅くない時間に夕ご飯をとる……こんな風にしていい生活のサイクルができあがっていくんです」
「早寝・早起き・朝ご飯」とよく言いますが、こうした生活はサッカーがうまくなりたければ当たり前のことなのです。
■お腹がすいてからでは手遅れ! エネルギー補給の極意
次の表は今回特別に考案してもらったごはんポイントを中心にしたサッカーをプレーする子どもの理想の一日です。こうして食事のタイミングを見ていくと、かなり積極的にごはんポイントを補充していかないといけないことがわかります。
「スポーツをしている子どもたちには『お腹がすいてからでは遅いよ』とよく言っています。水分補給に似ていますよね」
充実した生活を送り、練習でも力を発揮するためには動くためのエネルギーを常に意識しなければいけません。放課後に補食をとってから練習、そして練習後にもリカバリーの栄養補給をするのも「動くためにはごはんポイント! 動いたあとにはごはんポイント!」という意識があれば続けられるのではないでしょうか。
■白米VSパン? 麺類は? ごはんポイントを効果的に取ろう
「どんなものを食べたらいいの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。
基本的にはごはんポイントの一覧表を見ていただいて、効果的にごはんポイントをゲットできるメニューを考えてほしいのですが、補食に関しては手に入りやすいもの、用意しやすいもの、手軽に食べられるものを用意するといいでしょう。
昼は給食に任せるとして、朝と夜はお母さんがごはんポイントの他にバランスを考えた食事を用意してあげてください。
「朝はパンでも構いませんが、白米なら茶碗一杯でごはんポイントは1ポイント。どんぶりなら一杯で2ポイント確保できますが、食パンだと2枚食べてようやく1ポイントです。好きな方を選んで良いのですが、できるだけ効率よく、食べやすい方を選んでください」
アスリートに人気のパスタやうどんなどの麺類も食欲がないときでも食べやすくごはんポイントを取りやすいのだそうですが、汁物のある麺類の場合は水分でお腹が一杯になる可能性があるそうです。
子どもたちが大好きなカレーは、気がつくとごはんのおかわりをしていたということも多いので、おすすめのメニュー。ただしカレールーの中に含まれている油には少し注意してあげてください。
「基本的には好きなもの、たくさん食べられそうなもののごはんポイントをお母さんがチェックしてくれるだけでかなりいい食事になると思います。あと、これはとても大切なことですが、良く噛んで食べることですね。せっかくの栄養も身体にきちんと吸収されなければ意味がありません。カロリーや栄養バランスを細かく計算するより、良く噛んで食べることの方が大切かもしれません」
※画像をクリックするとコンディショニング発見シートと記入例のPDFがダウンロードできます。
■ごはんポイントでコンディショニング
上の表は「コンディショニング発見シート」というごはんポイントをベースにしたコンディショニングのためのツールです。多くのスポーツ強豪校で採用され、実績を残しているのですが、チーム、個人の目標や、ごはんポイントの目標などを細かく記入することで、自分の考えを明確にできます。下の段には体重の変化¬を折れ線グラフで一覧できる体重記入エリアがあり、ごはんポイントをどれくらい取れば体重の増減に影響があるのかを把握できるようになっています。
「成長期のお子さんは体重の増減よりもごはんポイントを意識してもらいたいのですが、お父さんやお母さんにもこの表を使って体調管理、体重管理をおすすめします」
村越さんはお父さん、お母さんの健康管理にも効果があるといいます。お子さんと一緒に、このシートに記入して食生活を振り返ってみるのも良いかもしれません。
■食生活から食習慣、アスリートは食行動を大切に!
「コンディショニング発見シート」には、いつ? なにを? 食べるのかをスケジュールに書き込む欄もありますが、ごはんポイントを効果的に取るためには、あらかじめ準備をしておくことが大切です。
特に試合の日は事前準備ですべてが決まると言っていいでしょう。
「試合で最高の力を発揮するためには食事がとても大切です。メインの食事についてはみなさん工夫されていると思いますが、補食や補給食は準備しておかないと困ることになります。食べ物は空から降ってくるわけではありませんから」
前日に準備するか会場に向かう途中で調達するかは別として、補食は事前に準備しておかなければいけません。
「試合に際しては起きる時間や朝ご飯の時間などを考えるためのスケジュールと食べ物も含めた持ち物リストを作って事前の準備を万端にしておきたいですね」
試合当日はすべてキックオフ時間からの「逆算」で動いた方がいいと村越さんは言います。これだけ意識していれば、少なくとも事前の準備はしっかり整うはずです。あとは子どもたちが練習通りの実力を発揮するだけです。
「食生活は食習慣になり、生活のリズムを作っていきます。アスリートを目指す選手たちには練習やスケジュールも組み込んだ『食行動』なんだよと教えています。子どもたちやお父さん、お母さんにも食べるということもサッカーの練習なんだという気持ちを持ってくれるとうれしいですね」
村越さんはスポーツをするときの食事の重要性をもっと多くの人に知ってもらいたいといいます。そのためにまずは「ごはんポイント」を意識すること。難しいことはとりあえず考えずに、ごはんポイントを意識するようになれば、きっと今日紹介したような準備ができるようになっているはずです。
村越 智行(むらこし ともゆき)
栄養管理士。2000年 関東学院大学経済学部経済学科卒業後、佐伯栄養学校栄養学科、フィットネスクラブ、スイミングインストラクター、スタジオレッスン業務などを経て、07年、森永製菓ウイダー事業本部で栄養指導業務に携わる。13年より現職でごはんポイントを中心とした栄養指導、チームサポートを行う。ラグビートップリーグ、高校ラグビー部の花園出場、高校サッカー、総体・選手権出場、高校野球部甲子園出場、高校陸上、総体出場、高校ハンドボール総体出場などをサポートしている。
高校、大学の部活動ならびにプロチームへのメンタル指導、栄養指導、モチベーション指導を行っている。
サッカー:全国高校サッカー選手権出場チーム
野球:甲子園出場チーム
ハンドボール:インターハイ出場チーム
ラグビー:プロトップチーム、花園出場チーム
バスケットボール:関東大学リーグ1部チーム
陸上競技:インターハイ出場選手
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取材・文/大塚一樹 取材協力/WACアカデミー