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運動能力

自分の筋肉を感じながらバランスいい体作り――元横浜Fマリノスの遠藤彰弘さんが教えるトレーニング

公開:2013年2月21日 更新:2023年6月30日

キーワード:ストレッチ筋トレ

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今回は前編の続きとして、3つのメニューを紹介します。繰り返しになりますが、筋トレは回数が多ければいいわけではありません。重いものをがんばって持ち上げて鍛えれば、それだけサッカーがうまくなるというのも間違いです。
 
正しいフォームで、自分の筋肉を感じながら、バランスの取れた体を作るように意識して取り組みましょう!
 
 
<<筋トレの注意点、体作りのメニュー
 
 

■回数をこなすのではなく、フォームを間違えないことが何よりも大切

まずは前回の続きとなる2つめのメニューです。
 

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  1. 手を壁などにつき、逆側を後ろに回して、片足でかかとを出来る限りぎりぎりまで高く上げる
  2. かかとを下げる。しかし、地面には着けない
  3. これを繰り返す。筋肉がパンパンになったら、その状態でつま先側を中心にして思いっきり上へ跳ぶ
  4. ストレッチを行う
 
【注意点】
足のつま先を真っすぐ前へ向ける。つま先が外側に開いたり、内側に閉じたりしないようにする
同じスピード&リズムで上下動を行う
両足同時にはやらない。片足ずつ
 
「回数をこなすよりも、フォームを間違えないことが何よりも大切です。ゲームで使う筋肉をつけるためにやっているので、“使えない筋肉を一生懸命がんばって身につけてます”では意味がないんです」
 
遠藤さんのトレーニングは、筋肉がパンパンになったらすぐに止めてストレッチ。きつい状況で何度も繰り返し筋トレをしません。その理由はどこにあるのでしょうか…?
 
「僕が重視しているのは左右のバランスです。無理して重いものを上げようとすると、どちらかに踏ん張ったり、それが癖になったりする。バランスが偏ると、どうしても利き足の力ばかりでボールを蹴ってケガをしたり、それをカバーしようとして、また他のところを痛める。そういうことがきっかけでちょっとずつ体のバランスが崩れて、痛いながらも走ったりする。そうすると変なところに力が入り、ケガをして、リハビリもろくにせずにゲームに出て、またもう一度ケガをする。そうするともう癖になり、テーピングがないと試合ができない体になってしまいます」
 
根性や精神論だけで筋トレを行えば、体の歪みやバランスの崩れはひどくなる一方です。
 
「バランスがおかしくなったら、その時点でやめてストレッチをしてください。自分ではバランスが崩れていることが分からないこともあるので、本当は外から見てもらうといいと思います。例えば親御さんとか。いいフォームでやらなければ左右のバランスが崩れていく。右足は30回できるけど、左足は10回だけとか、そういう歪みが生じないように注意します。最初は偏りがあるかもしれませんが、徐々に解消すればいいと思います」
 
 

■重心を低くした状態で長い時間プレーするために

次は3つめのメニューです。
 

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  1. 足を前後に開いて重心を沈め、上下に5センチくらいずつ揺する
  2. 筋肉がパンパンになったら、低い姿勢を保ったまま歩いていく
  3. ストレッチを行う
 
【注意点】
足のつま先を真っすぐ前へ向ける。つま先が外側に開いたり、内側に閉じたりしないようにする
 
「重心を低くした状態でどれだけ長い時間プレーできるのか、それが目標です。体を低くすると一歩目で大きく跳び出すことができ、届く範囲が長くなります。相手のディフェンスが低い姿勢で構えていると、対峙した選手は嫌がります。ただ、“重心を低く”と伝えると、上半身を丸めて前かがみのようになってしまう子どもが多いので、上半身は自然のまま腰を落とすようにします」
 
このように重心を低くして筋トレするのは大事ですが、トレーニングがなかなか実戦に生かされない子どもも少なくないようです。
 
「先日、中学生と一緒にトレーニングしましたが、体に悪い癖が一度は染み付いているので、トレーニングでは正しいフォームで行っても、試合になったときにできず、重心が高く戻ってしまいます。トレーニングは継続的に行い、頭の中を変えなければいけません。本人が練習と試合が別物だと思ってやっているから、試合中に低い姿勢になれないのも関係していると思います。筋トレをしながら、目の前にボールを置いていたり、そこにあるようにイメージしたり、あるいはテレビでサッカーを見ながらでもいい。ボールに寄せていくアプローチの姿勢とか、それは絶対に低いはずなので、そういうイメージを持ちながら筋トレをすると、練習と試合がリンクされてトレーニングが立体的になると思います」
 
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■重心が低くて速い動きをするために、足の内側の筋肉を鍛える

最後に4つめのメニューです。
 

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  1. 重心を低くして構えをキープ。左右に体を揺する
  2. 足の内側を鍛えるように意識する
  3. ストレッチを行う
 
【注意点】
足のつま先を真っすぐ前へ向ける。つま先が外側に開いたり、内側に閉じたりしないようにする
 
「足の外側の筋肉ではなく、内側を鍛えるのが大事です。内側の筋肉がパンパンにならなければ、やり方やフォームが間違っているということになります。香川真司選手なども、いい選手はみんな内側の筋肉を使っていて、重心が低くて速い。ターンするときなども内側の筋肉を使います。そこから親指と母子球のところを使ってグン!と飛び出します。このような力が外側に逃げると小指などを折ってしまう要因になります」
 
今回紹介したメニューはすべて家などグラウンド以外でできるものばかりです。
 
「どこかに行かないとできないというメニューは今の日本の環境では難しいと思うので、反復トレーニングの回数を増やすためには、いつも歯を磨くように当たり前のこととして毎日行えるように植えつけたいなと思います。チームのトレーニングでやるんじゃなくて、普段からやっておいてほしい。チーム練習ではもっとボールコントロールなどやることがたくさんあるので、自主トレーニングのような形で各自がやれるといいと思います」
 
重要なのは目先のトレーニングの成果ではなく、その子どもが必要としていることを行うこと。見せかけのパワーがついても、バランスが崩れてはむしろマイナス要因になるかもしれません。
 
「筋トレの変化は個人差があります。あいつがあんなふうにやったから、お前もやらなきゃ、という指導はやめてほしいんですね。その子の成長に合わせてやってほしいと思います」
 
 
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遠藤彰弘//
えんどう・あきひろ
1994年にJリーグの横浜マリノス(後の横浜F・マリノス)に入団。2004年には中村俊輔の移籍で空いた10番も付けたが、2005年には故障に加え、補強選手や若手の台頭もあって出場機会が激減。7月にヴィッセル神戸に完全移籍した。2008年に契約満了で退団後、5月13日に引退を発表。「マイアミの奇跡」で知られる1996年アトランタオリンピックのU-23日本代表では、背番号10を背負った。実弟はガンバ大阪に所属している遠藤保仁。現在は財団法人日本サッカー協会公認B級コーチライセンスを取得し、一般社団法人Jリーグ選手OB会の理事を務めながら、株式会社11asideに所属し、指導者として国内外で活躍中。
 
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取材・文/清水英斗 写真/株式会社11aside イラスト/曲山賢治

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