運動能力
サッカーの動きを追求してうまれた『タニラダー』が"4マス"である理由
公開:2018年11月19日 更新:2023年6月30日
ヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを務める谷真一郎コーチが、20年間のフィジカルコーチとしての経験をもとに考案したラダートレーニング『タニラダー』。それは従来の一般的なラダーとは違って短い"4マス"で作られています。サッカーの試合中の動きから逆算して作られたという『タニラダー』は、なぜ4マスになったのでしょうか?谷コーチにお話を伺いました。
(取材・文/鈴木智之 写真/サカイク編集部)
タニラダーのトレーニングを実演する谷真一郎コーチ
■一定のスピードを保った走りは、サッカーの動きではない
よく指導者の方に「何メートルを何本ぐらい走れば良いのですか?」と聞かれることがあります。読者の方の中にも、同じ疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。その答えは、試合の中にあります。サッカーの試合がどういう要素で成り立っているかを紐解けば、どのようにトレーニングすればいいのかが分かってきます。
サッカーの試合の中で、選手はどのように走っているでしょうか。一定のスピードで長い距離を、止まることなく走っていますか?それともストップとダッシュを繰り返し、素早く方向を変えながら走っていますか?それはもちろん後者です。
このことから、100m走を何本も繰り返したり、長距離走などの『一定のスピードを保ったまま走る』トレーニングは、サッカーというスポーツの運動特性から外れています。身体はトレーニングに最適化するので、『一定のスピードを保ったまま走る』トレーニングを繰り返していると、急に止まって、方向を変えるために必要な身体のキレなど、サッカーに必要な身体の動きが損なわれ、パフォーマンスを落としてしまう可能性もあるのです。
トレーニングをするときは「サッカーとはどういうスポーツなのか」と考えることから始めるといいと思います。サッカーの本質を考えることで、すべきトレーニングが見えてくるはずです。
(一般的なラダーよりも短い4マスの「タニラダー」。最適な足幅になるように、身長によってスタンスが変えられている)
■4マスだからスピードを落とさずにトレーニングできる
私は様々な動作をスピードアップさせるために、ラダーを使ってトレーニングをしています。その中でもっとも大切なのは「実際のプレーにつながるスピードアップ」を意識することです。いくらトレーニングをしても、その効果が実際のプレーで発揮できなければ意味がありません。
私が開発した「タニラダー」は4マスです。2mほどなので短く見えるかもしれません。しかし、トレーニングを追求するなかで「スピードアップには4マスが最適である」という結論に達しました。その理由は、実際の試合中のテンポに近づけるためです。マスが多く、長いラダーの場合、走っていく中でスピードが落ちますし、乳酸も出てきます。実際の試合では何メートルも同じ動きをしません。数メートルの短い距離を動いたり止まったり、方向を変えたり、スピードを変えたりと動きに変化が生じます。それを、4マスのラダーを使うことで再現しています。
(タニラダーに付属した解説DVDには、「ひねる」「飛ぶ」など実際のプレーから逆算して作られたトレーニングが収録されいている)
4マスのラダーでトレーニングをすると、スピードを落とさずに、速く動くことができます。一番速いテンポで、疲労を残さずにできます。そして、その一番速いスピードを身体に適応させるのです。ラダーはあくまでスピードのトレーニングなので、疲れるまで行うことは好ましいことではありません。ラダートレーニングのポイントは、次の3点です。
- 神経系の発達
- バランスの強化
- 効果的な動き
これらをトレーニングすることで、各動作のスピードが上がります。また、走ること、ターン、蹴る動き、動き出しや方向転換などを鍛えることができます。ラダーを使って行う「ステップ」の種類によって、効果が期待できる動作が変わります。それが、ラダーがサッカーだけでなく、あらゆる競技に対応できる理由なのです。
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谷真一郎コーチ(ヴァンフォーレ甲府・フィジカルコーチ)//
愛知県立西春高校から筑波大学に進学し、蹴球部に在籍。在学中に日本代表へ招集される。同大学卒業後は柏レイソル(日立製作所本社サッカー部)へ入団し、1995年までプレー。 引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら、筑波大学大学院にてコーチ学を専攻する。その後、フィジカルコーチとして、柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FCに所属し、2010年よりヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを務める。 『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』
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