先日、NHK「おはよう日本」で興味深い特集がオンエアされました。女性アスリートの9割が生理に伴ってコンディションが変化することを自覚し、生理にまつわる悩みをまわりに相談できずに抱え込む人も多いという内容は大きな反響を呼び、その日の深夜にアンコールで再放送されました。
女性と切っても切れない関係にある生理。特に体が資本のアスリートにとって、生理のコントロールはパフォーマンス向上に欠かせない大切な要素です。しかし、デリケートでプライベートな生理の話題は男性指導者には踏み込みづらく、当事者たちも大事ととらえていないことが多いのが現状です。
今回は、チームとして生理と向き合うスフィーダ世田谷FC(なでしこリーグ2部所属)にご協力いただき、女子アスリートと生理について考えます。前編では川邊健一監督に、男性指導者と生理の関わり方についてうかがいます。
初潮(初めての生理)を迎えるジュニア世代の女子指導者や保護者にとっても、子どもたちの将来を考える上で大切な問題。
取材・文・写真/青木美帆
■ほとんどの選手は自分の体調の変化に気づいていない
スフィーダ世田谷では今年から、マネージャーが各選手の生理開始日と終了日、体調を調査し、監督と情報を共有する仕組みを作りました。そのきっかけについて、川邊監督は説明します。
「3月の頭ごろ、チームドクターを務める婦人科の先生が選手向けのセミナーを開いてくださり、私も参加しました。主に生理に関連するコンディション管理の方法だったのですが、『9割の女性選手は、生理がパフォーマンスに影響する』という言葉に衝撃を受けました」
1部リーグを目指すスフィーダ世田谷にとって、勝利は至上命題。勝つためのコンディション作りの参考になればと、川邊監督はセミナ―終了直後、チーム唯一の女性スタッフである千葉恵美マネージャーに、選手への生理前後と生理中の体調の変化に関する聞き取り調査を依頼しました。しかし返ってきた内容は「特に変化がない」がほとんどでした。
「『9割の選手に影響がある』というデータが出ているわけですから、何もないわけはありません。ほとんどの選手は、自分の体調の変化について考えたことすらなかったんです。その現状を踏まえて、選手たちが自分で生理に関連する不調をコントロールできるようになることを目標に、生理開始日と終了日のデータ収集を行うようになりました」
選手たちは生理の開始日と終了日を千葉マネージャーに申告し、千葉マネージャーがそれをデータにまとめます。川邊監督は選手選考やその日のコンディションの参考にするため、生理日の有無を適宜、千葉マネージャーに尋ねます。取り組みを開始して4カ月ほどが経過し、選手たちもようやく自分の体調を自覚できるようになってきたと川邊監督は話します。
この取り組みによって選手の自覚以外にも変化が生まれました。まずは、選手が安心してプレーできるようになったということです。
「たとえば、試合日と体調が悪い日が重なった場合、以前なら『悪いプレーをしたら、次はメンバーから外される』とプレーが堅くなることがあったかもしれません。でも今は、私が体調の悪さを知った上で起用しているということが分かっているので、余計なプレッシャーは感じなくなっていると思います」
取材・文・写真/青木美帆