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夏バテでどうしても食べられないときはゼリーだけでもOK? スポーツ管理栄養士が教える夏バテ対策

公開:2021年8月11日

キーワード:吉村俊亮夏バテ夏バテ対策夏バテ防止管理栄養士食欲低下香川真司

今年も猛暑が続いています。暑い中、練習をがんばっているサッカー少年少女の中にはすでに夏バテになっている子も少なくないことでしょう。

子どもが夏バテで「どうしても食べられない」ことに悩む保護者は多いもの。「運動量が多いのに栄養が足りないのでは? しっかり食べさせるべき?」「そうめんやゼリーだけでも食べれば良しとしていいの?」と言う声も少なくありません。

香川真司選手の管理栄養士であり、プロアスリートやサッカーチームを栄養面で長年サポートしてきた吉村俊亮さんに、夏バテでどうしても食べられないときはどうしたらいいか伺いました。
(取材・文:小林博子)

 

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<<前編:サッカー少年の親を悩ます、子どもの夏バテ対策に効果的な栄養素と朝ごはん

 

■夏バテで食べられないときは、ゼリーなどのど越しのいい食材だけでも良しとする

夏バテで心配になるのは食事量が減ったり、ゼリーやそうめんなどつるんとした冷たいものしか食べなくなったりすること。

活動量が多いサッカーをする子どもには栄養が足りているのか心配ですし、成長期でもあるだけに、食べない日が続くのは悩ましいものです。

「お子さんが夏バテで食べられないなら、まずは何かをとりあえず身体の中に入れるだけでも大丈夫です。栄養補給ゼリーやそうめんなど、喉越しの良い食材だけでもかまいません

そう話してくれたのは、プロサッカー選手の食事サポートも行っている管理栄養士の吉村俊亮さん。専門家からそう言ってもらえるのは、子どもの夏バテによる食欲減退に悩む親御さんたちもひと安心ではないでしょうか。

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どうしても食べられないときは、栄養補給ゼリーなど、口にできるものだけでも構いません(画像はイメージ)

 



 

■栄養素よりも、まずはカロリー!

前回の記事でも解説した通り、夏バテは食欲の低下によりエネルギー不足が続くことが一つの原因です。

夏バテで食べられなくなった場合は、栄養価よりも「エネルギー摂取」に重点を置くことが先決と吉村さんは言います。

ですので、ゼリーでもそうめんでも、口に入れることができるもので、1日に必要なカロリー数を満たすことを意識してみてください。サッカーをする子どもたちは、1日3000kcalを目標にしましょう。

 

■夏バテにはそうめんより蕎麦

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カロリー摂取すればいいからと言って、アイスやお菓子で良いわけではありません(画像はイメージ)

 

ただし、カロリー摂取さえすればいいからといって、アイスとスナック菓子などでも良いわけではないことにはご注意ください。

ゼリーは栄養補給ゼリーにしたり、子どもが嫌がらなければプロテインを摂り入れてみるのも手だそうです。また、そうめんを食べる際は、クエン酸が摂れるオレンジジュースを添えるなど、少しの工夫が夏バテからの回復をサポートしてくれるのだそう。

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消化されやすい蕎麦やお茶漬けがおすすめ(写真はイメージ)

 

また、冷たい麺類を食べるなら、小腸で消化を受けづらいそうめんやうどんよりも蕎麦が良いのだそうです。小麦粉には小腸で消化をされづらいフルクタンという発酵性糖質が多く含まれているため、夏バテで消化機能が弱まっている際には消化をされにくいものを食べ過ぎないほうが良いからです。

そんな理由からおすすめなのが「お茶漬け」。小麦粉からできた麺よりも米のほうが消化されやすく、さらっと流し込めるので夏バテ中でも比較的食べやすいはずだと吉村さんが教えてくれました。

 

■少しでも食べられるようになったら......

夏バテが回復傾向になり、少しずつ食欲が戻ってきた際には、その回復スピードを上げる栄養のある食事を摂れるといいですね。

吉村さんに伺うと、意識したい栄養素は水溶性のビタミン類、特にビタミンB群だと言います。

ビタミンBと言えば、ほうれん草と豚肉と......、と細かく考えてしまいますが、そこまでストイックにならなくてOKです。

吉村さんいわく、結論としては「いつも通りのバランスの良いメニュー」がビタミンB群摂取としても有効なのだとか。1つの食材に固執せず、肉や魚、野菜や海藻など、バリエーション豊富に食べることも大切です。

「バランスよく」とは、和食だったら一汁三菜でしっかりバランスの良いご飯に近づきます。さらに夏バテ対策としては柑橘類を添えるとベストだそうです。柑橘類はフルーツではなく、100%オレンジジュースなどでも良いとのことなので、気軽に実践できるのではないでしょうか。


なぜ柑橘類がいいのか? その理由はこちら>>

 

■規則正しく食べる生活にシフトを

前回の記事で、夏バテになる子とならない子の違いは「食べられるかどうか」だと吉村さんが仰っていましたが、もともとの体質だけでなく、生活習慣でも「食べる力」は変わってくると言います。

やり方は簡単で、朝昼晩、食事時間をできる限り規則正しく設けること。次の食事の時間が分かっていることで、無駄な間食が減り、食事のときに「お腹が空いていない」ということが起こりにくくなります。夏休みはその習慣が崩れがちです。食べる内容とともに食べる時間も可能な範囲内で意識してみましょう。

 

■夏バテも熱中症も予防する水分補給のコツ

夏バテとともに、暑い時季に心配な熱中症。適切な水分補給で熱中症対策も万全に行いたいところですね。そんな水分補給ですが、夏バテ予防のためには「冷たすぎない方がいい」という説も昔からよく言われていることです。

ところが、吉村さんからのアンサーは「冷たいほうがいい」とのこと。水分補給の目的は深部体温(身体の内側の体温)が上がりすぎるのを防ぐことであり、これは夏バテ対策にもつながります。

温度としては5~15℃。飲んだ時に冷たいと感じるくらいの温度です。また、夏は汗を大量に書くことによりミネラルがどんどん失われますので、スポーツドリンクを選ぶようにしましょう。

 

■水分はどれくらい摂ったらいい?

夏バテと熱中症対策のために甘いスポーツドリンクをたっぷり飲むことで、お腹が膨らんで食事量が減り、それも夏バテの一因になるのでは? と次から次へと心配事が浮かびますが「適切な水分摂取」につながる、正しい摂取量を把握したいところですね。

その答えは個人差があり一概に「1日何リットル」とは言えないそう。確実に把握するためには、練習前後の体重計測が有効です。

体重の減少率が練習前と比べて1%以内であれば、汗で失われた水分をある程度補えていることになります。合わせて、練習後の尿の色もチェックをした方が良いと吉村さんは言います。尿の色は"薄い黄色"がベストだそうです。これを繰り返すことで、自分にとっての適正量を感覚でつかめるようになります。

チームで行うことがベストだとのことですが、体重計測が難しい場合は、せめて尿の色だけでもチェックするように伝えてみてはいかがでしょうか。

 

■スポーツドリンクの注意点

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夏バテと熱中症の予防には水分補給も大事(写真はイメージ)

 

スポーツドリンクは「甘すぎるから薄めてほしい」と子どもから言われて水を足したり、氷を大量に入れたりしがちですが、「摂取する水分と糖分、ミネラルのバランスが大切なので、できる限り薄めずに飲ませましょう」と吉村さんは言います。

そうすることで、ドリンクに含まれる成分が最大の効果をもたらしてくれるからだそうです。

また、スポーツドリンクは水分補給だけでなく、エネルギー補給を目的としているものも多数あり、糖分が多めです。ですので、飲んだ後に少量の水で口の中の糖分を流すことを意識したほうが良いのだそうです。練習中の口腔内の不快感が軽減されるのと、虫歯予防にもつながるためなのだとか。

 

■プロサッカー選手はどうしている?

暑いのは子どももプロ選手も同じ。食事による夏バテ対策を彼らはどうしているのか吉村さんに伺うと、「夏バテ予防ではなく、パフォーマンス維持のために食事を意識し、必要なエネルギー量を満たすバランスの良い食事をする」とシンプルなお答えでした。

サッカーをする小学生の1日の必要カロリーは1日3000kcalと前述しましたが、プロサッカー選手は体格やポジションなどで差はありますが、1日3,000~4,500kcalを目標にしているそう。「食べることもトレーニング」というわけです。

 

夏バテは真夏だけの症状と思いがちですが、「秋バテ」といって秋にも夏バテと同じ症状に悩むケースも多々あるのだそう。

サッカーや勉強でパフォーマンスを維持するためにも、夏バテを秋まで持ち越さないようにしたいですね。そのため対策には食事や水分の選び方やタイミングが大きな手助けになります。

ぜひ、親子で意識して過ごしてみてください。

 

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吉村俊亮(よしむら・しゅんすけ)
株式会社AND-U代表取締役。管理栄養士、NSCA-CPT、フードスペシャリスト、サプリメントアドバイザー、AHA-BLS-HCP。2012年より栄養指導を開始、サッカーの香川真司など世界で活躍する多くのトップアスリートをサポートしている。

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取材・文:小林博子

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