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インタビュー

「考えることで、プレーも人間としても変わることができた」西部洋平(川崎フロンターレ)

公開:2012年3月29日 更新:2023年6月30日

キーワード:Jリーグゴールキーパー川崎フロンターレGK

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高校からサッカーをはじめ僅か3年間でプロに。他の選手よりも圧倒的に経験が劣る中で、どのように工夫し、壁を克服していったのか。西部洋平(川崎フロンターレ)選手のインタビュー後編をお届けします。
 
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■がむしゃらに突き進んだ3年間

――当時、プロ選手になることは想像できましたか?
 
「入学した当初もそうでしたし、1年経ってもまったくプロは視野に入っていませんでしたね。考えられませんでした。なれるとは思っていなかったし、正直、当時はなろうとも思っていませんでした。厳しい練習をして、死ぬほど頑張ったことが結果的にプロにつながったのかもしれませんが、2年生の終わりに声がかかるまではまったく考えもしませんでしたね」
 
――では他に何か夢はあったんですか?
 
「中学生の頃は、大工になろうかなと思っていた時期もありましたし、子どもが好きなので保父さんになりたいなとも思っていましたね」
 
――高校からサッカーを始めたということで、他の選手以上に壁や悩みも大きかったのではないかと思いますが。
 
「もちろん、何度も辞めたいと思いましたし、寮から出ていきたいと思ったことも数しれません。壁まみれの3年間でした。入部した時80人いた同級生が、最後は15、16人になるくらい、毎日走らされるし、練習も厳しかったですからね。それくらい苦しかったけれど、それ以上に負けず嫌いの性格が勝ったのかもしれません。それに、3年間は正直あまり考える余裕がなかったですね。そのうちにどんどん時間がすぎていって気づいたらもう3年生という感じでした」
 
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■突っ走るだけではダメだということに気づいた

――高校卒業後は次のステップとしてJリーグでのプレーを選択したわけですが、当時の西部選手にとっては未知の世界だったと思います。
 
「実際にプロサッカー選手になるということが決まった時には素直に嬉しかったですし、両親もすごく喜んでくれましたね。ただ、同時に不安もありました」
 
――高校時代まではある意味、無我夢中に毎日がむしゃらに練習する日々が続いていたと思いますが、プロはそれだけではいけない。自分で考える力もより重要になると思います。
 
「浦和に加入して2年間はほとんど“考える”ということをしなかったと思います。1年目は必死でしたし、2年目はJ2でのプレーになったんですが、急きょ最後の大事な7試合に出場することになって、翌年もその勢いのまま突っ走って試合に出ていましたから。でも、加入して2年半くらい経った3年目のある時、突然メンバーから外されたんです。そこでようやく『このままではいけない』、『このままただ突っ走るだけでは何も得るものはない』と気づいて。それをきっかけに、いろいろと考えるようになりましたし、プレーも、そして人間としても変わることができたんじゃないかと思います」
 
――どなたか影響を受けた方はいますか?
 
「今、浦和でGKコーチをされている土田(尚史)さんですね。選手時代に一緒にプレーさせてもらっていたんですが、本当に生意気だった僕と真っ向勝負で向き合ってくれて。めちゃめちゃ怖かったけれど(笑)、僕にとって土田さんの存在はとても大きなものでした」
 
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■自分自身で決断することが「考える力」につながる

――ご自身の経験を踏まえて、“考える力”を幼い頃から身につけるにはどうしたらいいと思いますか?
 
「考える力を養うことはとても大切なことですが、難しいことでもあると思います。僕自身に関して言えば、親が幼い頃から『自分の道は自分で決めなさい』と言ってくれたことが、結果的に自分で考えるということにつながったと思っています。もちろん、大事な時に助言はしてくれましたが、自分自身で決断したことに関しては責任も持つし、それをどう実現させるか考えるじゃないですか。成功しても、もし失敗しても責任転嫁をすることもないし」
 
――具体的にはどういうことをしたらいいでしょう?
 
「やっぱり『目標を持つ』ということが大事なのではないでしょうか。こういう選手になりたい、こういう人間になりたい……もっと簡単なことでもいい。目標を持てば、それを実現させるために自分で創意工夫をしたり、考えるようになりますから。そんな子どもを、親御さんは温かく見守ってほしいかなと思います。もちろん、子どもが間違った道に進もうとしていたら正しい道に戻してあげなければならないけど、必要以上のことは言わず、『頑張ってみればいいんじゃない?』と、そっと後押ししてあげる姿勢が大事なんじゃないかなと思いますね」
 
――では、ジュニア世代の選手たちにメッセージをお願いします。
 
「僕も学生時代の頃を振り返ると、あの時もっとこうやっておけばよかった、もっと練習しておけばよかったと思うことはたくさんあるのですが、あとで後悔することのないよう、今できる限りの努力を思い切りやってほしいですね。また、GKは特殊なポジションであり、敬遠されるポジションでもあると思うのですが、無失点で試合を終えられた時は、フィールドの選手には味わえないような喜びを感じられるポジションでもあるので、ぜひ一度体験してほしいですね。決して怖いポジションではないですから」
 
――最後になりますが、2012年の西部選手の目標を聞かせてください。
 
「今シーズンでプロ14年目になるのですが、毎年全試合出場とリーグ最少失点というものを目標にしてチャレンジを続けています。これまで全試合出場は何度か実現させているのですが、残念ながらリーグ最少失点という記録は一度も成し遂げていないので、今年こそはぜひ達成したいですね。それが実現できれば、おのずとチームもタイトルに近づけると思いますから。ぜひ優勝といういい報告ができるよう頑張ります!」
 
 
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西部 洋平//
にしべ・ようへい
GK。1980年12月1日生。兵庫県神戸市出身。川崎フロンターレ所属。サッカーを本格的に始めたのは高校生からという異色の経歴を持つ。高い瞬発力と身体能力が評価され、帝京第三高校(山梨県)卒業後にプロ契約。2007年には日本代表候補合宿にも選出された。
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取材・文/石井宏美 写真/新井賢一

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