インタビュー
自主練をもっと効果的なトレーニングにしたい!人気のテクニック専用サッカーボール「テクダマ」が誕生した理由
公開:2021年4月 9日 更新:2023年6月30日
2019年4月の発売開始から大きな反響を呼び、入荷と共に即完売が続出するのが、サカイクが開発・販売するテクニック上達専用ボール「テクダマ」です。特別な練習メニューはいらず、自主練に最適と評判を呼び、楽天市場のサッカーボール部門で何度も1位を獲得し続ける魔法のボールは、どんな経緯で生まれたのか、その開発秘話をお届けします。(取材・文/森田将義)
■自主練の定番「リフティング」をもっと効果的なトレーニングに
テグタマの開発がスタートしたのは、サカイク編集部が様々な取材で感じていた「身体を上手く動かせないとサッカーは上手くならないのでは?」という気づきがきっかけでした。
自主練の代表格として、多くの子供たちがリフティングに取り組んでいますが、一定の動きを繰り返すだけで、何百回、何千回とできるようになっても、なかなかサッカーの動きには繋がってきません。
「せっかく子供たちが一生懸命に取り組んでいるリフティングを、もっと効果的なトレーニングに発展できないだろうか?」
そこで、様々な動きを組み合わせた独自のリフティングメニューで "サッカーで活きる"身体の動きづくりを行っているプロサッカーコーチの三木利章さんと一緒に、これまでになかった全く新しいボールを開発することになりました。
■三木コーチの動き創りトレーニングから生まれたアイディア
三木さん流のリフティングとは、技術を伸ばすのではなく、選手の身体をスムーズに動かせるようになるのが狙い。リフティングを頑張れば頑張るほど思い通りに身体が動かせるようになり、試合でも活躍できるようになります。
選手たちを指導する三木利章コーチ
三木さんが指導を行う「グローリアガールズU15」では、選手の脳に刺激を与えるため個人練習は3号球、対人メニューを含んだチーム練習を5号球で行っています。監修の話を受けた三木さんは、「小さくするだけのボールは今でもある。それなら、これまでにないボールを作ろうと考えました。理想はサッカーを知らないお父さんが子どもにプレゼントすれば、勝手に上手くなれるボールでした」と振り返ります。同時に日々、選手を教える中で感じる三木さんの考え方も反映されています。「今の選手は人工芝で練習をしたり、恵まれた環境でプレーしていますが、日本代表が海外でプレーすると荒れた天然芝だと思い通りにプレーできない選手が少なくありません。でも、海外の選手は難易度が高いコンクリートや砂埃舞う場所でプレーしているから、どんな環境でも上手にプレーできる気がするのです。プレー環境が良く、蹴りやすいボールやスパイクが身近な今だからこそ、不便にした方が選手の成長に繋がるのではいかと思ったんです」。
テクダマでトレーニングするグローリアルガールズU15の選手たち
イメージしたのは、三木さんが行う「せざるを得ないトレーニング」がスムーズに行えるボールです。例えば、三木さん流のリフティングを行うと、自然と股関節の外旋と内旋を使わざるを得なくなり、練習を行ううちに身体がしなやかに動かせるようになります。そうしたトレーニングの考え方と同様、蹴っているだけで、身体を動かせざるを得ないボールを作ろうと考えたのです。「ボールにインパクトした時に思い通りに飛ばないボールなら、普通のリフティングよりも難しくなるのかなって思ったんです。以前、少年サッカーを指導していた時にプレーの難易度を上げるためにラグビーボールやテニスボールを使ってゲームをしたのがヒントになりました。」
三木さんのアイデアをもとに、サカイク編集部では読者にもアンケートを実施。そして、国際大会の公式試合球も提供する「sfida」に製造を依頼し複数の試作品を作成しました。
■"最適な難しさ"を実現するテクダマのバランス
これまでにもあるリフティングボールの多くは、3号球サイズのゴムボールです。難易度を上げるため、サイズは2号球にしましたが、サッカーに活きる技術を追究するためにボールを蹴った感触や、反発、重さは特殊な製法により、ジュニア年代の選手に馴染みがある4号球のサッカーボールと同じにしました。
不規則な回転と動きを生むために大事なボールの重心を変え、動きのパターンが違う複数のボールを作成しました。普通のボールと同じように規則的な動きをすれば難易度は低くなりますが、常に不規則な軌道を描くようでは練習になりません。同じようにボールを蹴っていても、バウントの仕方によってはまともに返ってくることもあれば、次のタイミングでは思いもしない場所に飛んでいくボールが理想です。
最適な難易度を見つけるべく、グローリアガールズの選手に複数の試作品をテストをしてもらって辿り着いたのが、テグタマです。「普通のリフティングなら集中が途切れたり、技術ミスをしない限り続けられるけど、テグタマならボール自体が勝手に難しくしてくれる。ボールに合わせて、咄嗟に身体を動かさないといけないので、自然と思い通りに身体が動かせるようになります」と三木さんは解説します。
また、照明が暗いグラウンドで練習している少年団チームでも使ってもらえるよう、夜間でも目立つ蛍光カラーや、ボールの回転を意識しやすいようにデザインを工夫したのも特徴です。そうした細部までの拘りが、ユーザーからの高い評価に繋がっているのかもしれません。
■戦術トレーニングの前に、まず「無意識に動かせる身体」を手に入れる
テグタマが活きるのはリフティングだけではありません。対面パスでも軌道が不規則であるため、正しいポジションをとり、正しい箇所に当てないとパス交換が続きません。同じ練習をする際も、通常のサッカーボールからテグタマに変えるだけで難易度がグッと上がり、神経系を刺激することができます。
「年々サッカーが戦術的になり、『サッカーは考えないといけないスポーツだ』と頭を使う練習が増えてきていますが、実際の試合では無意識的に身体が動くことが求められます。それに必要な反射神経や調整力は、戦術的なトレーニングだけでは高めることが難しいのです。テクダマは、そうした指導者が解決できない悩みを解決できるボールでもあると思います」。三木さんが話す通り、自主練に励む子供たちだけでなく、指導者にとっても有効的なボールです。新学期が始まるのを機に、皆さんも活用してはどうでしょうか。