サッカーに一番大切なことって何でしょう? プレーの上達? チームの勝利? もちろん、どちらも大切なことですが、紳士のスポーツとして生まれたサッカーが、どんなに時が経っても変わらず、ずっと大切にしているのが“フェアプレーの精神”です。日本サッカー協会(JFA)が公開している『めざせ!ベストサポーター』という保護者向けのハンドブックは、"日本サッカーの父”として知られるデトマール・クラマーさんのこんな言葉からはじまります。
「サッカーは子どもを大人にし、大人を紳士にする」
今回はいろいろ考えさせられることも多い「フェアプレー」について日本サッカー協会のホームページのフェアプレーの項に沿って、紹介していきたいと思います。
■フェアプレーとは?
フェアプレーってどういうプレーでしょう? 辞書でフェア(fair)を調べてみると
- 道義的に正しいさま。公明正大なさま。
- 規則にかなったさま。またスポーツで、規定の場所の内にあるさま。
とあります。サッカーでいう「フェア」はこのどちらにも当てはまります。
1.ルールを正確に把握し、守る
サッカーにはルールがあります。サッカーが世界中で人気を集めている理由のひとつに、よく「ルールがシンプル」なことが挙げられますが、シンプルな中にも“フェアプレーの精神”が宿ったルールがいくつも存在します。それらをしっかり勉強して、しっかり守ろうとすることがフェアプレーへの第一歩になります。
2.ルールの精神・安全・公平・喜び
サッカーを始めたばかりの選手、見始めたばかりのファンが最初に「難しい!」と声をあげるルールが、オフサイドです。競技規則11条、オフサイドの項を見てみると
競技者は、次の場合オフサイドポジションにいることになる。
競技者がボールおよび後方から2人目の相手競技者より相手競技者のゴールラインに近い。
オフサイドポジションについて、このような説明がされているだけです。ここでのポイントは「オフサイドがなぜ反則なのか?」ということです。もしオフサイドがなかったら、サッカーはどうなっているでしょう? 子どもたちのサッカーで考えてみると、ゴール前にFWが待ち構えていて、DFラインからロングボールが行き交うだけの退屈な試合。ドリブルもパスワークも必要としない、ただの「蹴りあいっこ」になってしまうかもしれません。細かいルールは競技の成長とともに変わっていますが、オフサイドは「待ち伏せ禁止」のルールです。同じようにファウルは「卑怯」とか「ずるい」という以前に、相手にケガをさせてしまうかもしれない危険なプレーに対して、より厳しく適応されます。
サッカーのルールは“フェアプレーの精神”にのっとって、選手の安全を守り、どちらのチームにも公平になることを基本に作られているのです。
3.レフェリーに敬意を払う
そこで何が起きているか? 一番間近でプレーを見ているのはレフェリーです。ルールがしっかりと適用されるために選手以外でピッチに入ることを許されているレフェリーの判断を尊重することも、フェアプレーのひとつです。足がかかっていないのに転んだり、大げさに倒れたり、異議を唱えて猛抗議をしたり・・・・・・。観ている親御さんたちも、ついつい熱くなり「いまのファウルだろー」「オフサイドー!」と声を荒げてしまいがち。試合に集中して一生懸命になるのは当たり前ですが、ここはピッチの中の選手も、観ている観客も「ハートは熱く、頭はクールに」。レフェリーを尊重することはルールを尊重することと同じです。
4.相手に敬意を払う
対戦相手はサッカーをともにプレーする「仲間」です。サッカーの兄弟分、ラグビーには「ノーサイド」という言葉があります。試合が終わったら「ノーサイド」(どちらの側でもなく、みんな同じ仲間です)。たとえ試合中でも、相手選手をケガをさせるようなプレーはしてはいけません。ボールが動いている、プレーが続いているときに相手選手がケガをしたらどうしますか?現在のルールでは基本的にレフェリーがプレーを止めることになっていますが、選手がこれより先に気づいた場合はボールをピッチの外に出してあげるのがサッカー流です。スローインの際、ボールを出してもらったチームが相手チームにボールを返して観客から拍手が起るシーンは、よく見る「フェアプレーのシーン」のひとつです。
すべての選手は相手選手やレフェリーを尊重し、レフェリーは選手を尊重する。そしてサッカーに関わるすべてのひとたちはサッカーという競技を尊重する。“フェアプレーの精神”はすべてのゲームで最も大切にされることなのです。
今回はフェアプレーの大切さについて取り上げました。ルールに則ってフェアにプレーすることが、諦めずに全力でプレーすることや、自分の最高のプレーを試合で発揮することにつながります。フェアプレーについての第2回は実際のピッチの中でのフェアプレーに絞ってお届けします。
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文/大塚一樹 写真/小林健志(2012全日本少年サッカー大会より)