マンチェスター・ユナイテッドのもうひとつの伝統と言えばキャプテンシー。古くは伝説のキャプテンとして語り継がれるブライアン・ロブソン、闘将、ロイ・キーンなど、ユナイテッドにはチームを鼓舞するキャプテンが欠かせません。スクール最終日、ピッチの端でなにやら見慣れない光景が。スタッフが回すビデオカメラに向かって選手たちが何かを話しています。
■世界中のスクール生の中から真のキャプテンを選ぶコンテスト
ケヴィンコーチによると、全スクール生の中から「われこそは」という選手が、スクールで学んだことをもとに“キャプテンシー”についてスピーチをして、それをFacebookにアップ、一番のリーダーを決めるのだそうです。
マンチェスター・ユナイテッドならではの仕掛けが満載のスクール。もうひとつ特徴的なのが参加した子どもたちのご両親も自由にピッチに下りてきて近い距離で話ができることです。イングランドというと親御さんの参加と言うよりは指導者に任せるイメージが強かったのですが、このスクールでは「ユナイテッドの哲学を親御さんにも知って欲しい」とケヴィンコーチやその他のコーチたちも、座学の時に保護者を手招きで呼び込み、トレーニング中もスタンドではなく、すぐそばまで下りてきて子どもたちを見守るなど、とにかく距離が近い。
茨城から参加したといある保護者の方は「コーチたちのホスピタリティというか、暖かさを感じました。普段は街クラブに所属しているので、レベルが高くてついていけるかな? と心配してのですが、日に日に子どもの声がウキウキしていくのがわかりました」と、ユナイテッドの哲学を学びつつ、サッカーを楽しむ姿勢に感心した様子でした。
■ホスピタリティが最も発揮されたスクールのフィナーレを飾る「閉校式」
保護者も全員参加で、マンチェスター・ユナイテッドの本拠地オールドトラッフォードのトンネルをイメージした人垣を作り、選手を迎えます。通訳を介さなくてもコミュニケーションがとれるほど親しくなったコーチたちから発表されたのは各カテゴリのMVP選手。みんなそれぞれに成長が見られた3日間だったようです。
最後に発表されたのは、ワールド・スキル・ファイナルに挑戦する代表選手。東京スクールでは、スキルチャレンジで最も高い得点を出した関総一朗くん(8歳)が選ばれました。
「失敗することを恐れずに、トライすることが大切です。今回のセッションを通じて得た自信を胸に、ナニのようなシザーズ、ルーニーみたいなスコアリング、香川のようなインテリジェンスを持った選手に成長できるようにがんばって練習してください」
閉校式でも、ケヴィンコーチはマンチェスター・ユナイテッドで活躍する選手たちを例に出して子どもたちに呼びかけます。
人気・実力だけなく、歴史と確固たる哲学をもったマンチェスター・ユナイテッドのスクールは、参加者すべてが最終日に最高の笑顔を見せる、温かさにあふれた3日間でした。参加した子どもたちはきっと明日から、マンチェスター・ユナイテッドファミリーとして、明日の香川選手を目指して練習に励むことでしょう。また、この夏も横浜・大阪をはじめ、日本全国各地でキャンプ開催を予定されています。
大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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取材・文・写真/大塚一樹 取材協力/GEC 株式会社