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サッカー豆知識

指導者の質向上のために。JFAが仕掛ける新しい動画サービスの形

公開:2019年4月 1日

キーワード:オンライン指導トレーニング動画全国大会女子サッカー技術委員会水戸ホーリーホック須原専務

サッカーの経験はゼロ、もともとは息子さんのサッカーを見に行くだけのサッカーパパだった須原専務理事。お子さんのサッカーをきっかけに審判資格を取得しJFAに関わるようになり、それが縁で2016年に理事に就任し、2018年には、田嶋幸三会長に声をかけてもらい、常勤の専務理事に着任しました。

これまでキンコーズ・ジャパン株式会社やドミノ・ピザ・ジャパンなどで経営者として腕を振るってきたプロ経営者の知見を活かして、日本のサッカー環境を改善しようと尽力しています。

前編では、真夏にプレーをしないでチーム強化をするアイデアをお伺いしましたが、後編ではなでしこジャパンを支える育成年代の女子サッカーの課題や、この春JFAがスタートする「動画提供」についてお伺いしました。
(取材・文:鈴木智之)

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女子のプレー環境も整えたいという

<<前編:サッカーしないことがチーム強化に!? サッカー経験なしのJFA専務が提案する、猛暑を上手く使ってチーム力を上げるコツ

――女子のプレー環境について質問です。U-12年代は男子と一緒にプレーする、中学生になるとプレーできる場が限られるといった現状があります。強化と普及の両面で試行錯誤が続いていると思いますが、現状をどう捉えていますか?

U-12の女子に関して言うと、小学3年生ぐらいまでは、男女混合で楽しくボールを蹴る形で良いと思うのですが、4年生くらいになると男女間で運動能力の差が出始めるので、普及の面からは、女の子同士でボールを蹴る環境があるといいと思います。ただ、JFAが何年か前に、U-12の女子は男子と一緒に試合をしましょうと、登録の仕組みを変えましたよね。レベルの高い少女であれば、男子と一緒にプレーすることで上達しますし、楽しくプレーできると思います。でも、うちの娘のように、それほど上手ではない子は難しいのも事実です。女子に関しては、同じようなレベルの子たちと、小学校高学年、中学校になってもボールを蹴ることのできる環境を作らなければならないと思っています。

――そのためには、どのようなビジョンをお考えでしょうか?
我々側の意思決定で一旦なくしたものですが、女子のU-12の全国大会を復活させたいと思っています。これは個人のビジョンを超えておらず、協会のアジェンダには昇華しきれていないのですが、会長の田嶋(幸三)も同じことを言っています。そうすることで、全国大会を目指す土壌ができ、女子のクラブが活発化していくのではないかと考えています。

――現状の女子は淘汰選抜というか、上手な子でないと上のカテゴリーでサッカーを続けられない現状があります。
ある程度高いレベルじゃないと、中学、高校までサッカーを続けられないんですよね。それはサッカーを文化にする側面から見ても、良くないことです。ありとあらゆる年齢、レベルの人がサッカーを楽しむことのできる環境を作る。強化と普及のバランスがとれていることが、サッカーを文化にするためにいちばん重要なことです。うちの娘達も小学6年生までは地元の少年団でお世話になったのですが、中学校には女子サッカー部がなく、かといってクラブチームに入ってプレーできるほどのレベルでもなかったので、二人共サッカーをやめ、一人は陸上部、もう一人は水泳部に入りました。でも、上の子は大学にフットサルの女子クラブがあったので、そこに入って下手だけど楽しめるからと、いまは楽しくボールを蹴っています。

―― ただ、U-12の女子の全国大会を創設すると、勝利至上主義に拍車がかかってしまうのではないでしょうか?
勝利至上主義に走り始めるレイヤーというのがありますよね。勝利至上主義のクラブもあれば、そうではないエンジョイ志向のクラブもある。これは男子の例ですが、私は全日本U-12サッカー選手権大会や東京都の予選を視察しました。今年の東京都の決勝は東京ヴェルディとJACPAの試合で、両チームともすごく良い指導のもとに、良いサッカーをしていたんです。指導者と子どもたちが良いコミュニケーションをとれていて、子どもたち自身で考えることを促進し、自分の思い描くプレーをやらせてあげるような指導をしているのが、指導者の声掛けや子どもたちのプレーから伝わってきました。地域差はあるかもしれませんが、一昔前のコテコテの勝利至上主義のクラブは減ってきているのではないかと思っています。

■指導の質向上のため、オンライン動画サポートを開始

――テーマを変えて、ボランティアコーチのレベルアップについて聞かせてください。ジュニア年代では、サッカーの専門的な知識がない人が、子どもたちを教えることが多い現状があるように思います。そのような人たちに対して、効果的なサポートができれば、教える側も子どもたちも、よりよい環境でサッカーを楽しむことができると思います。JFAがサポートをするといったビジョンはありますか?

それに関しては、アクションを起こし始めたところです。我々がやろうとしているプログラムのターゲットは、ボランティアコーチと学校の先生です。サッカー経験がない人達が、指導の引き出しを増やすためのプロジェクトを準備しています。それが、オンラインでの指導サポートです。JFAのWebサイトに、年代別、テーマや課題別のトレーニング動画を掲載し、それを参考にトレーニングをしてもらいます。まずは茨城県サッカー協会がテストトライアルでサポートしてくれて、水戸ホーリーホックも賛同してくれています。そこに、JFA の技術委員会が持っている指導体系をベースに、約100ほどのコンテンツをすでに作っています。

――そのサイトは、誰でも見ることができるようになるのでしょうか?

その予定です。動画を見てトレーニングをする、指導をするだけでなく、指導の様子をモニターしながら、指導ライセンスを持っている人がリアルタイムでアドバイスを送る、いわゆる遠隔サポートも考えています。遠隔サポートしてくれるコーチが、数ヶ月に一回、グラウンドに行って指導をするという形をとれば、コストもそこまでかからずにできます。まずサッカーでそれを作り、プラットフォームを他の競技にも開放します。そうすることでスポーツが良くなり、ひいては日本全体が良くなると思っています。テクノロジーを使うことはポジティブに考えていて、2019年の5月にJFAテクニカルニュースオンライン化します。ただ、テキストデータをそのままデジタル化しても面白くないので、ダイナミックに動画を使う。それが今のビジョンです。

――JFAのテクニカルニュースについては、複数の指導者ライセンスを持つ人に2冊送られてくるといったことが、以前から指導者間で話題になっていました。ようやくオンライン化されるのですね。

はい。次にやっていきたいのが、トレーニング動画をアップロードできる、マーケットプレイスを作ることです。コンテンツの出し手が JFA だけですと、出し続けるのが難しくなるので、出したいと思う人、興味のある人にコンテンツをアップロードして頂きます。そこにユーザーがアクセスし、面白そうなものがあれば自分たちのトレーニングに使ってもらいます。そしてコンテンツをアップロードした人には、インセンティブが働くような仕組みを作りたいと思っています。

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5月からオンライントレーニング動画のサポートを開始すると教えてくれた須原専務

 

――サカイクの姉妹サイトに『COACH UNITED』があり、トレーニング動画を配信しています。内容が近いので、興味深いです。

競合する必要はまったくないと思っています。我々としてはできるだけ無料に近い形でやっていきたいと思っているので、コンテンツ制作に対してインセンティブを働かせられるよう、それに対して企業にスポンサードして頂くことも考えています。ビジョンを共有し、サポートして頂ける形を作っていきたいと思います。

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取材・文:鈴木智之

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