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コロナ自粛で「サッカーを大切にするようになった」子どもたち。札幌中央FCの現状

公開:2020年7月 8日

キーワード:すすきのサッカーを大事にするポジティブ少年サッカー新型コロナウイルス新宿歌舞伎町札幌中央FC活動再開繁華街

新型コロナウイルスの感染減少にともない、社会活動が徐々に再開し始めました。しかし都道府県によって現状は異なり、同じ県でもクラブの状況によっては、サッカーの活動範囲が限定的なところもあります。

早期に感染拡大が起きた、北海道札幌市にある『札幌中央FC』の明真希(あきらまき)監督は、活動停止期間を経て子どもたちにポジティブな変化が現れたといいます。その変化とはどんなものか伺いました。(取材・文:鈴木智之 写真提供:札幌中央FC)

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札幌市の繁華街が近いこともあり、活動再開も慎重にならざるを得なかった

 

■あえてオンラインツールを活用しなかった理由

北海道での新型コロナウイルスの感染拡大は早く、2月下旬には感染者数が東京よりも多くいました。独自に緊急事態宣言を出すことで活動自粛を進め、感染者数を抑え込んできましたが、その後「第2波」が押し寄せるなど、厳しい状況が続いていました。

第2波襲来以降、活動が段階的に解除できたのが5月30日。札幌市では学校の分散登校が6月1日から始まり、少しずつ日常を取り戻し始めました。学校再開にともない、道内のサッカー少年団の活動も復活したところがあります。

札幌中央FCが活動する札幌市中央区は「すすきの」という繁華街が近くにある、札幌の中心です。東京の新宿歌舞伎町のようなものといえば、イメージしやすいかもしれません。地域性や場所の問題が重なり、学校側もチームの活動再開に対し、慎重にならざるを得ませんでした。

学校再開後もグラウンドは使えないままで、体育館も『密』を避けるため一部の学年の教室となり、使うことができません。結果的に、子どもたちの活動場所は失われてしまいました。

イレギュラーな事態に直面した、札幌中央FC。緊急事態宣言が出され、活動ができない中、色々なチームの取り組みを目にする機会がありましたが、明監督は「ある疑問を感じました」と言います。それが、オンラインの活用の仕方です。

自粛期間中にZOOMなどオンラインツールを活用し、コーチと子どもたちとの間でコミュニケーションをとるチームも多くありましたが、札幌中央FCはあえてしませんでした。その理由を、明監督は次のように話します。

「中高生であれば、個人の携帯やパソコンを使って、オンラインでコミュニケーションをとることも可能かもしれません。でも小学生は、保護者のスマホを借りて行うケースが大半です。そうなると昼間に働きに出ている保護者が多いので、日中はできず、夜になります。保護者が求めているのは休校時間の有効活用だと思ったので、あえてオンラインツールを活用するには至りませんでした」

一方で毎週、保護者にメールを送り、活動中止の連絡を入れるとともに、子どもたちには「監督もみんなとサッカーがしたいけど、ここは我慢しよう」「学校がある時と同じ時間に起きて、課題をやろう」などのメッセージを送っていたそうです。

さらには指導者、選手、卒業生を含めて、リレー形式でボールをつなぐ動画を作成することで、保護者と子どもがボールを使ってコミュニケーションをとる時間を作るとともに、クラブとつながっている気持ちにさせることなど、様々な取り組みで平日を過ごし、週末の練習に全力で臨むことのできる環境を作りました。

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札幌中央FCの選手たちに現れた変化とは......

  

■限られた時間しかサッカーができないことで子どもたちに現れた変化

チームによって、グラウンド使用状況は様々です。札幌中央FCは、通常時は平日に学校のグラウンド、週末は天然芝のグラウンドで練習をしていました。ですが、6月に入っても学校のグラウンドは使えないので、練習は週末(土日)の2日間、各2時間だけの練習になっていました。

限られた時間しかサッカーができない中で、子どもたちにどのような変化が起きたのでしょうか? 明監督は目を細めて語ります。

「活動が再開したばかりの1、2週目はスイッチが入っていないように見えたのですが、6月中旬からはこちらが驚くぐらい、子どもたちに変化が見られ、楽しそうにプレーしていたんですよね。子どもたちが、サッカーができる喜びから、サッカーを大切にするようになってきたんです

そう言って、次のように続けます。

「うちは平日の練習がなくなり、土日だけの活動になりました。練習や紅白戦を見ていて驚いたのが、子どもたちの口から、ポジティブな声がたくさん出始めたことです。たとえば、試合で相手にプレッシャーをかけにいく場面で、寄せが遅かったり、甘かったりすると、『もっと行けよ』『なんで行かないの』などの声が、選手間で出ることもあったのですが、活動再開後はサッカーをやれるという喜びが勝ったのか、ポジティブな声掛けが出るようになりました。そんな変化が起きるんだ!と驚きましたね」

さらには、相手チームの良いプレーに対しても、自然と褒める言葉が出るようになり、失点後に子どもたちが自主的に集まって、話し合いをするようになったそうです。

「失点後にゴール前に自然とみんなが集まって、どうすればよかったかを話し合っていました。コロナで活動を休止する前は、見られなかった光景です。プレー面でも変化があって、以前は球際でそれほどバチバチやる感じではなかったのですが、激しさが出るようになりました。これも、サッカーができる喜びから来ていると思います。とても良い変化だと思いました」

子どもたちは限られた時間でサッカーを目一杯楽しみ、「また来週ね!」と笑って帰って行くそうです。

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子どもたちがサッカーを大事にするようになった

 

「サッカーをする時間が限られたことで、その時間を大切にするようになったのは、コロナ前に比べて、大きな変化だと思います。いまの子どもたちは勉強や塾、習い事でスケジュールが詰まっています。忙しさに加えて、コロナの影響で精神的にいっぱいいっぱいの子もいると思うので、サッカーは適度に力を抜いてやったほうが、結果としてよくなるのではないか。活動再開後は、そんな風に思っています」

 

■改めて気づいた「大人の仕事」とは

コロナ自粛明けに、札幌中央FCへの入部を希望する子どもたちが、13人もいたそうです。明監督は「この状況で札幌中央FCを選んでくれたのは、素直にうれしい」と笑顔を見せます。

新型コロナウイルスの感染拡大が、今後どうなるかはわからない以上、予防は徹底しています。移動中は明監督が手作りしたオリジナルのマスクを着用し、手洗い、検温をまめにするなど、細心の注意を払っています。

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明監督が手作りしたマスク

「コロナのことがあってから、あらためて、大人の仕事は子どもたちに遊ぶことができる場所、ボールを蹴る場所を提供してあげることなんだと気がつきました。今後はグラウンドの確保も含めて、場の提供に目を向けていきたいです」

コロナで起きた変化を、少しでも良い方向へとつなげられるように、多くのクラブ、指導者、そして子どもたちは歩みを進めています。総勢75人に増えた札幌中央FCの挑戦は、これからも続いて行きます。

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取材・文:鈴木智之 写真提供:札幌中央FC

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