■コーチングとは「教える」ではなく「引き出す」こと
子どもたちの潜在的な意欲、能力を最大限に生かし、自立する力を養う「教育コーチング」という考え方。この普及に取り組んでいるのが、日本青少年育成協会です。このコーナーでは、子どもたちの「やる気」や「能力」を引き出すために必要なことについて、PM級認定トレーナーの本田恵三さんにお話を聞いていきます。
「私が所属する(社)日本青少年育成協会では、"教育コーチング"という考えをベースにした、"親力向上のためのパパママ・コーチングセミナー"を開催しています。子どもは将来、社会という競技場で活躍する選手です。親が子どものコーチになり、意欲や能力を引き出し、成長を支援する。これが"パパ・ママコーチング"です。
私は教育コーチングのトレーナーを務めるかたわら、サッカークラブの総監督をしています。少年サッカーの現場を支えているのが、多くのパパさんコーチや、ボランティアママさんです。そんな親御さんたちのヒントになる話ができればと思っています。
さて、今回のテーマは"子どもの自立"です。自立をうながすキーワードは3つあります。
1つ目が"質問"、2つ目が"傾聴"、3つ目が"承認"です。
なかでも"質問"はとても大切です。子どもの成長を支援する時に、非常に役に立つスキルです。それではここで質問です。コーチの語源は何でしょうか? コーチは英語でCOACHと書き、"馬車"という意味です。馬車は人や物を希望の場所へ運びます。つまり、コーチの役割は、選手が希望する場所や目標地点へたどりつくためのサポートなのです。選手がどこへ行きたいのか。それは質問することで明らかになります。
コーチングの原点は、スキーのインストラクターがテニスを指導する過程で誕生したメソッドでした。あるとき、スキーの専門家がテニスを指導することになりました。しかし、スキーとテニスは競技特性が違います。そこで悩んだインストラクターは、選手に質問をしました。"この練習はどこを鍛えるの?""この練習は試合のどんなところで役に立つの?"。そのような質問を投げかけ続けたところ、選手の試合や練習に対する理解が深まり、みるみる成長していきました。
つまり、コーチが何を教えていいかわからず質問をしたことが、結果として選手の才能を引き出すことになったのです。このことからも、コーチングとは"教える"ことではなく"引き出す"ことだという意味がお分かりいただけると思います。選手の能力を引き出すために、キーポイントとなるのが質問によって引き出された相手の話を"傾く"ことです。では、どうすれば相手の話をしっかりと聴くことができるのでしょうか?
第二回では、私が出会った最高の聴き上手の女性について、話をしたいと思います」
本田恵三//