■『身代わりアスリート』は、子どもを不幸にする
このコーナー第三回目は、講師のメンタルトレーニングコンサルタント、大儀見浩介さんに、「知らずのうちにかけてしまっている子どもへのプレッシャー」についてお話をお聞きしていきます。
「自分が過去にサッカーをやっていた、あるいはサッカーが好きな両親がついしてしまう行動のひとつに"身代わりアスリート"があります。これは読んで字のごとく"子どもを親の身代わりにすること"を言います。
親が子どもに、自分が果たせなかった夢を押し付ける言動をしてしまうのです。親子で同じ夢を見るのはすばらしいことです。しかし、子どもの意思を無視して、親の価値観や考え方を押し付けてしまうと、子どもがつぶれてしまうことになりかねません。実際に、私はそういう子どもをたくさん見てきました。
また、親が子どもに過度な期待をすることでプレッシャーに押しつぶされ、サッカーを嫌いになってしまうケースもあります。酷いケースでは、子どもに"もっと練習しろ"や"絶対にレギュラーになれ"と言ってプレッシャーをかけたり、チームメイトや兄弟と比較して"なんであなたはできないの"と、子どもを追い込む言動をする人も見受けられます。子どもには一人ひとり、個性があります。できること、できないことは子どもによって違うのです。
親としては、子どもの個性を認めた上で、"自分と子どもは違うんだ"と認識してあげてほしいと思います。その上で、我が子が不甲斐ないプレーをしたときは頭ごなしに怒るのではなく、"私はこう思うんだけど、あなたはどう思う?"と問いかける接し方をしてあげてください。
"ああしなさい"""こうしなさい"と親の意見を押し付けると、子どもは"親の言うとおりにすればいいんだ"と、考えることをやめてしまいます。それを避けるためにも、親子でポジティブなコミュニケーションをとることを心がけてみましょう。コミュニケーションの基本は、相手の話を"聞く"ことです。大きく相づちを打ったり、子どもの方に体を向けるなどして、"あなたの話を聞いているよ"と態度で示してあげてください。
話を聞くときは、食器の片付けをしながらや、テレビを見ながらなどの"ながら聞き"は控えましょう。子どもの話を聞くことに集中し、プラスのコミュニケーションをとってみてください」
大儀見浩介//
メンタルトレーニング・コンサルタント。東海大学体育学部にて応用スポーツ心理学を学び、サッカーだけでなく、新体操女子U18日本代表や教育、受験対策など、様々な分野でメンタルトレーニングを指導している。著書に「クリスチアーノ・ロナウドはなぜ5歩下がるのか~サッカー 世界一わかりやすいメンタルトレーニング」(朝日新聞出版)、「心理戦術が日本サッカーを進化させる」(白夜書房)がある。公式HP『Mentalista』 http://www.mentalista.jp(PC)