■自分の感情を主語にして伝える
子どもたちの潜在的な意欲、能力を最大限に生かし、自立する力を養う「教育コーチング」という考え方。この普及に取り組んでいるのが、日本青少年育成協会です。第五回目のこのコーナーでは、PM級認定トレーナーの本田恵三さんに「気持ちの伝え方」についてお話を聞いていきます。
あなたは子どもに気持ちを伝えるときに、どんな表現をしていますか?
メッセージの伝え方には2つの種類があります。それは"Iメッセージ"と"YOUメッセージ"です。Iメッセージは"私"を主語にした言い方、YOUメッセージは"あなた"を主語にした言い方です。"私は腹が立った"これはIメッセージ、そして、"なんでお前はそんなことをするんだ"これはYOUメッセージです。
IとYOU、どちらが子どもに伝わりやすいと思いますか? それはIメッセージです。たとえば、試合で子供たちのプレーから覇気が感じられないとき。本田コーチが、"僕はすごく腹が立った"という言い方をすると、子どもたちはドキッとします。そして、"なんでだろう?" "どうしたんだろう?"と、コーチの気持ちを考えようとするのです。
Iメッセージは、自分から湧き上がる感情を相手に伝えます。感情の伝達は信頼関係がなければ成り立たないもの。Iメッセージで感情を伝えることで、言われた側は信頼を感じると共に、"承認されているんだ"と感じます。ですから、子どもに話をするときには、Iメッセージを使うことを意識してみてください。
我が子のプレーにふがいなさを感じたときに、"今日のあなたは諦めの中でプレーしているように見えた。お母さん、それが悲しかったな"とIメッセージで伝えると、子どもは"お母さんはもっとがんばれると思って、そう言ってくれているんだな"と、受け取ります。
YOUメッセージで"あなた、もっとがんばりなさいよ"と言うことと、お母さんの伝えたいことは同じですが、子どもの受け取り方、心への響き方が変わるのです。また、ポジティブな感情をIメッセージで伝えると、相手はとても喜びます。"今日のあなたのプレーを見て、私はすごく誇らしかった"と言われたら、どうでしょう。"今日のプレーとっても良かったよ"と言われるよりもはるかに子どもたちはうれしいはずです。自分のプレーが見る人の感情を揺さぶったわけですから。
相手と話をするときにはIメッセージとYOUメッセージの違いを意識してみてください。そうすることで、気持ちの伝わり方が変わります。
本田恵三//
社団法人日本青少年育成協会本部所属。少年サッカー指導歴15年のベテランコーチ。子どもたちのやる気を引き出す理論と手法に定評がある。