■「具体的な行動」が起きやすくなる質問
子どもたちの潜在的な意欲、能力を最大限に生かし、自立する力を養う「教育コーチング」という考え方。この普及に取り組んでいるのが、日本青少年育成協会です。第八回目のこのコーナーでは、PM級認定トレーナーの本田恵三さんに「チャンクをほどく」についてお話を聞いていきます。
コーチがオープンクエスチョンをすることによって、相手の具体的な行動が起きやすくなることがあります。これを"チャンクをほどく"と言います。チャンクとは大きな"かたまり"のことです。
たとえば、サッカーの現場で監督が選手に"がんばっている?"と聞くことがあります。そうすると、選手は大体"がんばっています"と答えます。そこで"次の試合、どうしたい?"と聞くと、"がんばりたいです"と返事をします。"がんばる"ことは人によって、なにをするかが違いますよね。人によっては絶えず走りまわることであったり、あるいはシュートを打つことかもしれません。
このように"がんばる"という言葉は抽象的で、ぼんやりとした大きなかたまりのようなものだと言えます。こうしたかたまりは、正体は分からないけれど負担感があり、そのまま抱えていても具体的な行動は起きにくいものです。
そこで、コーチはこんな質問を投げかけます。"キミにとって、がんばるとは何をすること?"。すると、その選手は"リフティングをすること"と答えるかもしれません。そこで"そうか。リフティングはいつするの?" "朝やります" "何回ぐらい?" "100回です"。
このように、第7回で出てきたオープンクエスチョンによってチャンクがをほどけると、負担感が減り、具体的な行動が起きやすくなります。質問が上手な人は、自然とこのような質問をしていますね。
サッカーをがんばりたいと思っているのに、行動が起きない子どもたちは、チャンクがほどけていないだけなのかもしれません。コーチの質問でチャンクがほどけると、やり方を教えなくても、"なにをすればいいのか"、"どれが優先事項か"、といった方法や答えは子どもたちの中にあるんですね。
チャンクをほどく質問のポイントになるのが"なに" "いつ" "どこで" "だれ""どのぐらい" "どうやって"といった、4W1H(What,When,Where,Who,How)です。チャンクをほどく質問の仕方は、様々な場面で応用することができます。ぜひとも使ってみてください。
本田恵三//
社団法人日本青少年育成協会本部所属。少年サッカー指導歴15年のベテランコーチ。子どもたちのやる気を引き出す理論と手法に定評がある。