■「大きな夢を持とう」「挫折に負けず夢の高みを見よう」
ザッケローニ日本代表監督と岡田前監督が子どもたちにメッセージ
8月16日(火)、ホテルメトロポリタン仙台にて、サッカー日本代表オフィシャルサプライヤーであるアディダス ジャパン株式会社による「adidas all dream スペシャルクロストーク」が開催され、サッカー日本代表現監督アルベルト・ザッケローニ氏と、サッカー日本代表前監督岡田武史氏の特別対談が行われました。
■ザッケローニ監督が語る世界の育成システム
――育成で印象的な国について教えてください。
ザッケローニ監督 「私が思うに、約20年前のフランスの育成システムは素晴らしかったです。アカデミーからジダン選手、トレゼゲ選手、アンリ選手といった素晴らしい選手が輩出されて、その結果、ワールドカップとヨーロッパ選手権で優勝しました。イタリアのリーグにフランスの選手が来ても、すぐに馴染めるのは、ベースがしっかりしているからできるのだと思います
現時点ではオランダ、スペイン、イタリアが育成に力を入れていると思います。特にスペインのやり方は、かなり気に入っていて、技術のところをベースに植え付けていって、結果よりも内容を、重視しながらサッカーを教えています。
また、オランダにしても、育成システムは完成形に近いと思いますが、オランダの選手は良い選手が出てきても、他のリーグでなかなか馴染めない傾向があるように思えます。イタリアに関しては、チームとしての戦術に長けていますが、個としての戦い方が足りないように思えます。育成年代の頃から、チームとしての結果を追い求めすぎているのが、一番の理由だと思います。また、旧ユーゴの育成システムは、規律という面では少し欠けるところがありますが、技術面では素晴らしい育成システムだと思います」
■日本は世界の育成の何を学ぶべきか
――日本の育成はいかがでしょうか。
岡田氏 「日本は、フランスのジダンなどが育った、ナショナルトレーニングセンター的なシステム(国レベルでの強化)を、協会が主導でやっていくシステムを取っていますが、スペイン等は単独チーム、例えば、バルセロナはバルセロナの育成システムを持っていて、そこで育てていきます。今後は、基本的なところは日本全体として変わらなくても、スペインのように、いろいろなチームの色を出していくことで、多様性が出てより強みが出るのではないかと思います
子どものサッカーは、確かに勝負にこだわってやるべきではありませんが、どこの国の子どもも、試合が始まったら必死になって、勝つためにベストを尽くします。内容にこだわって、勝つためにベストを尽くした上で、負けても構わないのであって、勝っても負けても良いと、最初から思ってやるのはちょっと違うと思います。選手個々の勝負への執着心は、僕は必要だと思います」
ザッケローニ監督 「イギリスのフェアプレー精神も尊敬しています。若い時から、試合が終わるまで一秒たりとも気を抜かない、全力でやり続ける、結果次第で戦い方を変えないで、常に、全力を出し続けるという文化を植え付けています。技術だけにとらわれずに、サッカーを通じた人間としての育成も大事だと思います」
■大きな夢と高い志を持つこと、成長を続けることが大切
――日本が世界一になるために、今のU-12世代に必要なことを、聞かせてください。
ザッケローニ監督 「この年代の選手たちには大きな夢を持って、高い志を持って、高いモチベーションでサッカーに取り組んで欲しいと思います。当然、サッカーを続けていくうちにハードルがあると思いますが、そこから逃げないで向き合って、一つ一つ越えていくことで大きく育つと思います。また、10歳の時点で素晴らしいからといって、成長を止めるわけではなくて、少しずつでも日々成長を続けている選手が、結局トップレベルにたどり着くと思います
現時点での日本サッカーの方向性は、非常に良いところにあると思いますし、このままJリーグのレベルが上がって、さらに海外に出て行く選手たちが増えることで、海外に出て行った選手が代表チームに戻ってきて、得てきた情報を還元して日本代表が強くなっていくという良い循環ができていますから、この先日本は世界的にもすごいレベルに行けると思います」
岡田氏 「世界一になるためには、やはり、世界一になれると信じられることが大事です。そういう意味では、今回、なでしこジャパンが世界一になったのは、ものすごく大きなことです。俺たちだって世界一に、と思うU-12の選手がこれから出てくることが大切です。それと共にU-12の子ども達がより高いレベルでプレーすることが大事です。自分が80%程度でもいけるレベルでは、なかなか進歩はできません。常に高いレベルでプレーすることが必要です
僕が、子ども達に『上手くなるためにはどうしたら良いですか?と聞かれたら3つのことをいいます。
1つは、まずはサッカーを好きになること。あまり好きじゃないけどお母さんにいわれたからやっている、というなら他のスポーツや音楽をやった方が良いかもしれません。
2つ目はコーチにいわれたからこうやる、というのではなくて自分で考えて自分で工夫しなさいということです。
3つ目は日本代表になりたい、ワールドカップに出たい、内田(篤人/シャルケ・ドイツ)みたいになりたいといった、夢や目標を持つことです
その道にまっすぐに登っていくことは非常に難しくて、いろんな挫折があります。僕が選手に常にいうのは、『未だかつて、右肩上がりで上がっていった選手は誰もいない。必ずみんな波を打ちながら、上がっていく。(誰かが上ったことのある山のような)低い所を見ていたらダメで、次の、山の高みを見なければダメなんだ』ということです。選手やチームというのは必ず波があります。その時にどう考えるかで、次が決まってきます。U-12の子ども達も、夢に向かってチャレンジしても、うまくいかないことがきっとあります。その時ドリームキラーはいっぱいいて、無理だよという人がいます。それに負けないで常に夢の高みを見続けて欲しいと思います」
――将来サッカー日本代表を目指す子ども達へのメッセージをお願いします。
ザッケローニ監督 「大きな夢と高い志を持って、将来すごい選手になってやるんだという気持ちで、サッカーを楽しみながらやって下さい。特にメッシ選手やエトー選手のようなヨーロッパの素晴らしい選手を見て、そのマネをすることによって、どんどん上手くなると思います。ただ、日本人なので、チーム精神や礼儀正しさといった良いところを忘れずに、サッカーに取り組んでほしいと思います」
岡田氏 「大体、敵は自分の中にいて、ダメかもしれない、無理かな、と思うからダメになっていきます。夢というのは、実現するまで追い求められるものですから、不可能はないと思います。ぜひ夢にチャレンジしてほしいと思います」
■ザッケローニ監督・岡田両氏も自身の夢を語る
――では、最後に、お二人の夢を教えてください。
ザッケローニ監督 「当然、監督としても、子どもたちと同じように大きな夢を抱えながら、やっていかなければいけないと思います。今度は、ワールドカップという大きな舞台で、夢を見るのも悪くないと思っています。当然、自分ができることを全て出して、世界の強豪と対戦したいです」
岡田氏 「今、僕は一般社団法人を立ち上げて、日本の若者・子どもたちにスポーツや野外体験学習を通して、力をつけてもらう活動に精力をつぎ込んでいます。もちろん、日本サッカーの応援は、絶対欠かさないつもりです。ザックさん、旗を持って応援に行くので頑張って下さい!」
▽あとがき**********
対談では、世界を知るザッケローニ監督、岡田前監督両名から、海外の育成の状況を踏まえた上で日本の育成に何が必要か語られました。子ども達が世界一になりたいという大きな夢を持ち、挫折があっても負けずに夢の高みをみるため常に成長を続けることが、サッカー日本代表が世界一になるために非常に大切、ということは両名共通のご意見でしょう。サッカーをする子ども達に夢を持つことの大切さを伝える、素晴らしい対談になりました。
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取材・文/小林健志