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こころ

上手いから勝つのではない――JFAプレミアカップから学ぶ気持ちの重要性

公開:2013年5月21日 更新:2013年5月23日

キーワード:コーチング育成

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U-15世代の頂点を争う「JFAプレミアカップ2013 supported by NIKE」が5月5日、J-GREEN堺で行われ、大宮アルディージャジュニアユースが京都サンガFC U-15を2-1で下し、初優勝を飾りました。大宮ジュニアユースは日本代表としてイングランドで行われる「マンチェスター・ユナイテッド・プレミアカップ・ワールド・ファイナルズ2013」に参加します。
 
 

■個性を発揮するために必要な“強い気持ち”

優勝した大宮アルディージャジュニアユース、前回大会と全日本ユース(U-15)サッカー選手権大会で準優勝した昨年のチームに比べて、伊藤彰監督は「試合を作るクオリティは昨年の方がありました。昨年よりも力は落ちますね」と断言していました。彼らが優勝するチームにまで成長出来た要因の一つが、チームとして目指すベースを持ちながら、価値観を押し付けるのではなく、選手たちが持つ個性を活かしてあげるということ。「一人でグッと前に行ける選手や守備に強い選手はいるので、彼らが連動しながらビルドアップを目指しました。昨年と同じようにボールを動かすことにこだわると、彼らの良さが無くなってしまいます。昨年は昨年のチーム、今年は今年のチームにしたかったんです」と伊藤監督は説明します。
 
ただ、目指す方向は見えても力を発揮できるかはまた別の話です。今年のチームは全国大会の舞台を知る選手は少なく、大舞台の雰囲気に飲まれたグループリーグでは予選突破こそ果たしましたが、持ち味は出し切れずにいました。転機となったのはグループリーグ終了後に行われたミーティング。伊藤監督は「サッカーに向き合えておらず、浮き足立って、変な意味で楽しんでしまっている雰囲気がありました。サッカーの楽しみはやっぱり勝って頂点を目指すこと。もう一度見つめなおして、チームが少しバラバラになっていたのをまとめたかったですね」と振り返ります。
 
チームの中心選手、MF山田陸選手も「自分勝手なプレーが多かったり、自分たちが勝つ気持ちが無かった所を監督がしっかりと言ってくれました。ミーティングがあったから、チームで纏まらないといけないと思えたし、勝ちたいという気持ちを出そうと思えたから、決勝トーナメントで自分たちのやりたいサッカーが出来るようになりました」とミーティングの効果を口にします。
 
彼の言葉通り、グループリーグと決勝トーナメントの戦いぶりは別のチームでした。準決勝のサンフレッチェ広島FCジュニアユース戦、決勝の京都サンガFC U-15戦で見せた逆転劇は勝ちたいという強い気持ちがあったから。そして、伊藤監督が「決勝トーナメントに入って、良くなったというよりもやっと本来の自分たちを出すことができた。僕らはいつも通りをやっているだけで、特別、凄いわけではありませんでした」と振り返ったように、“勝ちたい”という強い気持ちを常日ごろから持っているからこそ、自分たちの力が発揮されたのだと思います。
 
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■コーチングで引き出す“強い気持ち”

今大会で多く見られた“強い気持ちのチーム”の一つが広島ジュニアユースでした。沢田謙太郎監督が「ガンバとアビスパは当たりたくないなと思っていたら、抽選会でひいてしまいました」と苦笑いしたように、有力チームが揃うグループリーグに参加しましたが、2勝1分で突破。準決勝で大宮ジュニアユースに負けてはしまいましたが、2対3と後一歩の所まで追い詰め、大宮の伊藤監督も「いいチームでした。怖かったです」と認めるほどでした。
 
広島ジュニアユースの特徴は沢田監督の“声”にあります。「しょっちゅう怒ります。今の3年生も昨年は半分泣きながら練習をしていた連中です」と監督本人が認めるように、飛び出す広島弁交じりのコーチングは迫力十分です。
 
時に選手に睨まれることもあると言いますが、それでも怒る理由について沢田監督は「うちにはめちゃくちゃ上手い選手はいない。速いとか中学生でも高校で当たり前に通用する選手はいないけど、頑張ってでも伸ばしていけば、高校とかユースでも活躍出来る選手になるんじゃないかと思う。そのためには持っているものを出し切らせることが必要。まずは中学一年でコーチと自由にサッカーを学んで、二年でちょっと怒られて、三年にまた怒られながら激しい試合を経験して。怒られて、なにくそ!という気持ちで挑んでくれればと思いますね」と説明します。
 
エリートと呼ばれるJのアカデミーでも広島のアカデミーには独特の青臭さがあります。「うちのユースも青臭さが大事にしているし、上がって活躍出来ないと可愛そうだと思う。そこで活躍するためのベースが大切だし、もともと持ってなくても、刺激してあげると負けん気みたいなものが出ている」。沢田監督の言葉からは試合中の厳しさとはまた違う優しさが溢れていました。
 
「全国大会で良いチームと真剣勝負が出来るのは僕らにとって幸せなこと」。
 
沢田監督が大会を総括したように、真剣勝負が出来たのも彼らの強い気持ちがあったからこそ。
強い気持ちで試合や練習に挑むからこそ敗れてもプラスの経験となり、選手たちの更なる成長に繋がっていきます。ジュニア年代でも身につけた技術や戦術を出しきるためには“強い気持ち”が重要な要素ではないでしょうか?
 
 
日常生活も含めた人としての成長がサッカーに繋がる――JFAプレミアカップから学ぶ気持ちの重要性>>
 
 
森田将義(もりた・まさよし)//
関西を拠点に全国津々浦々、大学、U-18、U-15など育成年代を追いかけるフリーのサッカーライター。主にELGOLAZO、ゲキサカ、スポーツナビなどへ寄稿。ライター業のスタートはテレビの放送作家という異色の経歴も持つ。
●E-mail:jnfpr1234@yahoo.co.jp
 
 
 
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取材・文・写真/森田将義

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