2011年になでしこジャパンがFIFA女子ワールドカップで優勝したのを機に広がりを見せる女子サッカー人気。いまでは多くの女子小学生がサッカーに取り組み、次世代の代表入りを目指しています。一方で、女子のみのチームはまだまだ少なく、男子チームに混ざってプレーする選手も多くいます。指導法も男子と同じというケースも多く見られますが、ジュニア年代の女子選手だからこそ気をつけなければならない指導ポイントもあるのではないでしょうか?
そこで、今回はなでしこチャレンジリーグに所属するアンジュヴィオレ広島のU-12でコーチを務める柴村和樹さんにこの年代の女子選手を教える際のポイントをお聞きしました。
取材・文/森田将義 写真/サカイク編集部
■女子ならではの特徴をチームの武器に変えるコツ
以前、柴村さんがサカイクの兄弟サイト、COACH UNITEDで執筆した記事にあるように、女性は、頭で考えてから行動する傾向にあります。また、もう一つの特徴としてグループを作ることを好みます。
「男女ともに、集団になるとグループができます。それを指導者が強引に引き離すと、本来持っている力が発揮できないだけでなく、後々よくない方向に行く可能性もあります。他競技でも、女子スポーツでは同じことが発生すると耳にしますが『女の子だから仕方がない』と、片づけてしまう人が多い。でも、私は変化させるべき問題だと思うので、目を配るようにしていますね。すぐに変わることではありませんが、変化すればチームの一体感がより増していくと思います」と柴村さんは話します。
サッカーはチームスポーツ。女性ならではの「グループを作る」という特徴は、うまく利用すればプラスの力を生みます。修正する指導ではなく、特徴を伸ばす指導が必要ですが、そのためには指導者目線での基準ではなく、プレーする女子選手目線の基準を探しながら、指導や対話を行う事が重要です。
「男子の場合は指導者が押し付けても力を発揮しますが、女子は本能的に体を無理させないようになっているように思えます。女子に無理矢理に押し付けても、選手のストレスになってしまいます。だからこそ、『頭で考えてから行動する』女子たちに指導者が理解させることが重要です。こうした考えは男子を指導していた際は気づけませんでした。女子を本格的に指導するようになって気づけたことです」
「女子は、一度、信頼関係ができるとやりやすい」と柴村さんが話すように、女性はこの人には付いていけるという信頼してもらえれば、そのあとは指導がスムーズになるという特徴があります。このような特徴を最大限サッカーに活かすためには、女子ならではの指導法や接し方を指導者や保護者が意識する必要があるのではないでしょうか?
■サッカー少女の保護者が気を付けるべきポイントとは?
指導者と同じく、保護者の接し方も女子ならではの接し方があると柴村さんは話します。サカイクにも「サッカーをする娘と、どう接したらいいのか分からない」という悩みが届けられています。
柴村さんもサッカーを知らない保護者から、接し方を尋ねられる事が多いそうですが、そうした保護者の方が接し方に試行錯誤してくれていることが、指導者側としてはありがたいと言います。
「育成年代は三角関係だと思っています。選手、保護者、指導者の三者全てが繋がってなければなりません。保護者も指導者も子どもを伸ばそうと考えている者同士、同じ目線で子どもを観る必要があると私は思います。理想とするのは子どものベストサポートをする家庭。子どもが行動を起こす前に、こうしなさい、ああしなさいと言ってしまう事が多いように思いますが、本当は子どもがしたことに対して、それを認めて必要ならば手を差し伸べ、よい事であれば褒めてあげるのが良いのです」。
もう一点、柴村さんが気をつけるべきと挙げるのが、大人が思う失敗の基準で怒らないことです。「失敗の基準は人によって違うモノ。失敗の基準は子どもが自身の体験から作るべきで、大人の基準で決めていると、子どもたちは試行錯誤をしなくなります。特に女子の場合は、大人の前では違う顔を見せることもあるので、気をつけた方が良いと思います」と続けます。
わが娘がかわいいがゆえに、あれこれ口を出したりしていませんか? 関わる大人が子どもの成長をみないで、大人の感情で子どもに関わっていませんか?そうした行動は男子選手の場合よりも、女子選手の場合はサッカーから遠ざけてしまう要因になるかもしれません。
そして柴村さんが女子と接する際には、どのタイミングでなにを言うかということを意識しています。子どもが落ち込んでいる場合、ひたすら怒っても頭に入らず成果が得られない子もいれば、それで力を発揮する子もいます。反対に褒めてあげることで自信を得てプレーがよくなる子もいます。選手それぞれに合った接し方が必要で、そのためには表面ではなく内面を見てあげないといけません。
「女子の場合は思ったことを口に出さないことも多く、あえて逆のことを言ってしまう時期もあります。だから、『本当はこう思っているのだと思う』と言葉の奥に潜む本当の気持ちを理解してあげる必要があるのです。子どもが大人に対して、この人に話をしても無駄だなと思うと、子どもたちはなにも言わなくなり悪循環に陥るので気をつけていきたいです」。
このように、ジュニア年代のサッカー選手であっても、男子と女子とでは考え方や行動が違い、指導者や保護者が気をつけなければならないことがたくさんあります。目の前の子どもが違えば指導方法も違います。幼児とプロ選手に同じ指導は行わないし、同じ声かけもしませんよね。それと同じで男女でも違うということです。今回の記事を参考にサッカー少女との付き合い方について考えてみてはいかがでしょうか?
今夏、サカイクでは初となる女子キャンプを開催します!
現在行っている女子サッカーに関するアンケート。指導者の方、保護者の方から多くのお悩みが編集部に届いています。
・きちんと蹴れず内股で軸足が蹴る方向に向かない
・女子特有の価値観や身体のことをわかっていない
・男子とやる中で徐々に失われていく自信
・男子が試合中にパスを回さない
・試合の機会が少ない
・女子に対する配慮が足りず困ってしまうことがたくさんある
不安に思っていること、悩んでいること、サカイク女子キャンプで一緒に解決しませんか?キャンプには女子サッカーに精通したコーチ、もちろん女性スタッフも帯同いたしますのでご安心ください。皆様からのお申し込みお待ちしております!
【開催概要/お申込み方法】
●日程
2014年8月6日(水)~8日(金)
6日集合時間⇒13:00 8日開催時間⇒12:00予定
●開催・宿泊会場
サンセットブリーズ保田
千葉県安房郡鋸南町大穴1032
最寄:JR内房線保田駅バス20分
館山自動車道鋸南南IC5分
※東京駅から貸切バスの運行を予定しています。ご利用の場合には別途費用(往復4,000円)が掛かります。
※往路のバスご利用の場合にはお弁当が付きます。
●対象
小学校4~6年生、中学1年生~3年生
※サッカー経験は問いません。レベルに応じたトレーニングを行います。
●定員
70名
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