ブラインドサッカーをご存知でしょうか? このスポーツは、視覚を閉じた状態でプレーするサッカーのことです。通常、人間は情報の8割を視覚から得ていると言われ、目で見る情報はとても重要なことです。だから、ブラインドサッカーをプレーするのに大切なのは『音』と『声』のコミュニケーションです。今回は、このことを2回の連載のなかでご紹介します。(取材・文 木之下潤)
■目が不自由な人と触れ合うことで学べる6つのこと
生徒 「ブラインドサッカーをしていて『怖い』と感じることはありますか?」
秋葉選手 「最初はアイマスクをしてプレーするし、まったく見えない状態になるから怖かった。自分がどこにいるのかもわからなかったしね。でも、チームメイトやガイド(味方にゴールの位置を伝える選手)が大きな声を出してくれるし、自分も声を出しながら仲間を信じてプレーしたら不安はなくなった。みんなで協力することが大切かな」
昨年の9月に青梅市立第五小学校で開かれた『スポ育』という体験教室での生徒と弱視クラスのブラインドサッカー日本代表・秋葉選手との会話です。スポ育とはチームワークやコミュニケーション、障がい者に対する理解などたくさんの学びを、ブラインドサッカーを通じて得る体験学習のこと。
この日は、4年生の3クラスが講師として訪れた秋葉茂選手とともに楽しくボールを蹴っていました。『スポ育』は人権教育の一環として導入しているそうですが、生徒にとっては教科書から学ぶよりも大きな経験を得られたようです。今年赴任した徳長邦彦校長は、以前の学校でもスポ育を取り入れており、生徒たちの変化をこう感じていました。
「子どもたちにとっては、目の不自由な人がボールを止めたり、シュートしたりするイメージがなかったようです。選手のプレーを目の前で見て、また自分が体験してみて『こういうことだったのか』と実感しています。この経験を通じ、初めて目の不自由な人たちも『ぼくらと同じ普通の人なんだ』と発見するようです。それまでは『目が見えないから何もできなんだ』と思っていたのが、『目が見えるぼくらと同じことができるんだ』とわかる。このことが子どもたちにとっては大切なんですよね」
健常者である生徒たちにとって、目の見えない生活は未知の世界。まったくイメージができないのは当たり前です。体験学習後の質問コーナーでは、秋葉選手と子どもたちの間でこんなやりとりがありました。
生徒A 「料理は作るんですか?」
秋葉選手 「簡単な料理なら何でも作れるよ。僕は少し見えるから。卵焼きとかね」
生徒A 「えー、すごい」
生徒B 「私も作れるよ」
生徒C 「オレ、料理できない」…
これから多くのことを経験して学ぶ子どもたちは、『今は単に知らないことが多いだけ』なのです。それは昨今うたわれるコミュニケーション下手などについても同じことが言えるでしょう。そもそもブラインドサッカー協会は、スポ育事業の目的を6つ掲げています。
1.障がい者に対する理解の促進
2.コミュニケーションの重要性の認識
3.個性の尊重
4.チームワークの向上
5.ボランティア精神を育む
6.チャレンジ精神の醸成
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取材・文 木之下潤